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※恋になりたて 愛になりかけの続編です。
お手洗いに行こうと教室を出ると、ちょうど朝練を終えて教室に入ろうとする赤葦くんとぶつかりそうになった。
「っと、ごめん」
「こっ、こちらこそごめん」
そう言って私は足早に彼の隣をすり抜ける。自分が感じ悪いことをしている、っていうのはわかってるんだけど、どうしてもあの日の赤葦くんを思い出してしまって普通に振舞えない。
あの日、私が赤葦くんと偶然日直をやった日に、赤葦くんは私に「かわいい」と言ったのだ。普通、そんなこと言われたら勘違いしてしまう。私のこと好きなのかな、なんて。
だからあの日以来、私は赤葦くんを避けている。どんな顔をすればいいかわからないから。
そんな相変わらずの今日、私は日直だった。今度はちゃんと当番が回ってきたのだ。でも私とペアの男子は体調不良でお休み。
「誰か手伝ってくれるやつー」
先生はいつもこうやって日直の代打を募集するけど、地味にめんどくさいから手を挙げる人は毎回ゼロ。おそらく私と仲のいいみっちゃんがやむを得ず選ばれるはず。...だったのに。
「やります」
手を挙げたのは赤葦くんだった。
「お前、部活あるだろ!いいのかよ」
周りの男子がもっともなことを言ったけど、赤葦くんはいつも通り飄々としていた。
「前に久原さんに日直手伝ってもらったから」
そういうと、赤葦くんは確認するように私を振り返り、「そうだよね」と目で念押しする。
私は黙って頷くしかなかった。
◇
当然ながら放課後、日誌を書かなきゃならないわけで。私は赤葦くんと教室で向かい合って座っていた。
「...コメント、お願いします」
赤葦くんにコメントを書いてもらおうと日誌を渡したけど、赤葦くんは私をじっと見つめたまま反応しない。
日誌を書くまで、赤葦くんは必要最小限のことしかしゃべらなかった。だから、私も黙ったままだった。もしかしたら、私の態度に怒っているのかもしれない。でも、だったら何で日直を申し出たんだろう?その謎は1日経ってもまったく解けなかった。
見つめられるのが気恥ずかしくて、私は目を逸らしてつぶやいた。
「あの、コメント...」
「久原さん」
ほぼ同時に赤葦くんが私の名前を呼んだ。反射で顔を挙げると、あの日と同様、夕日にに照らされた赤葦くんの顔が目に映った。あー、やっぱりかっこいいな、ちくしょう。心の中でそうつぶやく。
「この前、ごめん。嫌だったよね」
赤葦くんの「この前」という言葉があの日であることは明白だった。
でも私はあの日、かわいいと言われて舞い上がったのであって、不快だとは思っていない。
そう言おうとしたら、赤葦くんが私を見つめたまま続けた。
「あとから、セクハラだったかなって、思った」
赤葦くん以外の人に言われたら別にうれしくないのかも、とこの時初めて気づいた。そしてその理由にも。
私に発言権を与える間もなく赤葦くんは言った。
「素直に言えばよかったんだよね。俺、久原さんのことが好きなんだ」
音が聞こえそうなくらい、心臓が跳ねた。
「だから、この前一緒に日直できてうれしかった」
驚きに声も出ない私などお構いなしに、赤葦くんは話し続ける。
「あ...う...、」
「久原さん、大丈夫?」
まともに返事すらできない私の顔は、きっと真っ赤に違いない。そんな私を見て、赤葦くんがクスッと笑う。
「やっぱり俺、久原さんが好きだな」
2020.11.23
title:天文学
お手洗いに行こうと教室を出ると、ちょうど朝練を終えて教室に入ろうとする赤葦くんとぶつかりそうになった。
「っと、ごめん」
「こっ、こちらこそごめん」
そう言って私は足早に彼の隣をすり抜ける。自分が感じ悪いことをしている、っていうのはわかってるんだけど、どうしてもあの日の赤葦くんを思い出してしまって普通に振舞えない。
あの日、私が赤葦くんと偶然日直をやった日に、赤葦くんは私に「かわいい」と言ったのだ。普通、そんなこと言われたら勘違いしてしまう。私のこと好きなのかな、なんて。
だからあの日以来、私は赤葦くんを避けている。どんな顔をすればいいかわからないから。
そんな相変わらずの今日、私は日直だった。今度はちゃんと当番が回ってきたのだ。でも私とペアの男子は体調不良でお休み。
「誰か手伝ってくれるやつー」
先生はいつもこうやって日直の代打を募集するけど、地味にめんどくさいから手を挙げる人は毎回ゼロ。おそらく私と仲のいいみっちゃんがやむを得ず選ばれるはず。...だったのに。
「やります」
手を挙げたのは赤葦くんだった。
「お前、部活あるだろ!いいのかよ」
周りの男子がもっともなことを言ったけど、赤葦くんはいつも通り飄々としていた。
「前に久原さんに日直手伝ってもらったから」
そういうと、赤葦くんは確認するように私を振り返り、「そうだよね」と目で念押しする。
私は黙って頷くしかなかった。
◇
当然ながら放課後、日誌を書かなきゃならないわけで。私は赤葦くんと教室で向かい合って座っていた。
「...コメント、お願いします」
赤葦くんにコメントを書いてもらおうと日誌を渡したけど、赤葦くんは私をじっと見つめたまま反応しない。
日誌を書くまで、赤葦くんは必要最小限のことしかしゃべらなかった。だから、私も黙ったままだった。もしかしたら、私の態度に怒っているのかもしれない。でも、だったら何で日直を申し出たんだろう?その謎は1日経ってもまったく解けなかった。
見つめられるのが気恥ずかしくて、私は目を逸らしてつぶやいた。
「あの、コメント...」
「久原さん」
ほぼ同時に赤葦くんが私の名前を呼んだ。反射で顔を挙げると、あの日と同様、夕日にに照らされた赤葦くんの顔が目に映った。あー、やっぱりかっこいいな、ちくしょう。心の中でそうつぶやく。
「この前、ごめん。嫌だったよね」
赤葦くんの「この前」という言葉があの日であることは明白だった。
でも私はあの日、かわいいと言われて舞い上がったのであって、不快だとは思っていない。
そう言おうとしたら、赤葦くんが私を見つめたまま続けた。
「あとから、セクハラだったかなって、思った」
赤葦くん以外の人に言われたら別にうれしくないのかも、とこの時初めて気づいた。そしてその理由にも。
私に発言権を与える間もなく赤葦くんは言った。
「素直に言えばよかったんだよね。俺、久原さんのことが好きなんだ」
音が聞こえそうなくらい、心臓が跳ねた。
「だから、この前一緒に日直できてうれしかった」
驚きに声も出ない私などお構いなしに、赤葦くんは話し続ける。
「あ...う...、」
「久原さん、大丈夫?」
まともに返事すらできない私の顔は、きっと真っ赤に違いない。そんな私を見て、赤葦くんがクスッと笑う。
「やっぱり俺、久原さんが好きだな」
2020.11.23
title:天文学
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