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「烏養さん!ハッピーバースデー!」
この春大学2年生になった私は高校の時からずっと続けているように、今年もまた烏養さんの誕生日を祝いに坂ノ下商店にやって来た。
高2から手作りのお菓子をあげ始めてもう4年目。烏養さんもさすがに慣れたようで、「おー、ありがとな」と言って煙草を咥えたまま素直にプレゼントを受け取ってくれた。
初めてお菓子をあげた時、烏養さんは学校の先生でもないのに私の年齢を気にして、プレゼントを断った。だけど、納得のいかなかった若き日の私は、烏養さんに「ちょっと口開けてみて」と言って烏養が怪訝そうに口を開けたところにお菓子をぽいっと放り込んで、無理やり受け取らせたのだった。
その時烏養さんは釈然としないという顔をしながらも「うまい」と言ってくれた。その時心底うれしかった気持ちは今でも覚えている。
平日の昼過ぎだからかお店に人が来る気配が全くなく、烏養さんはお仕事中だというのに私があげたお菓子を食べ始めた。
「お前こんなのも作れんだな。うまい」
昨年まではクッキーのフレーバーを変えたりしながら作っていたが、今年は少し趣向を変えてマフィンにしてみた。喜んでもらえてよかった。
「烏養さん、好き」
私は少しかがんでカウンターに座る烏養さんに目線を合わせて言った。これも毎年のことだ。返事がほしいとは思うけれど、私が「付き合って」という決定的な言葉を言わないからか、烏養さんは毎年照れて「おう」と言うだけだった。
私も好きであることを伝えるだけで満足してるところがあるから、別にいいんだけど。烏養さんが幸せなら文句はない。だから、今年も期待なんてしていなかった。
「お前、こんな煙草臭いおっさんのどこがいいんだよ」
昨年までとは違い、烏養さんは照れつつも変なものを見る目をしてこんなことを言ってきた。
「まだ20代でしょ。おっさんじゃないよ」
「お前と10歳違うんだぞ、お前らからしたらおっさんだろ」
「20代を世間はおっさんと呼んだりしませーん」
おっさんというワードに納得のいかなかった私は冗談交じりに烏養さんに反論した。しかし烏養さんの質問には答えられていないので、きちんと私の愛をぶつけてやろうと烏養さんに顔を近づけて、烏養さんのいいところを羅列してやった。
「かっこいいところ、見た目に反して優しいところ、悩みを真剣に聞いてくれるところ、大人の包容力、なんだかんだで私を心配してくれるところ、落ち着いた声、言いたくない時は何も聞かずに見守ってくれるところ、今も私を」
「わかった、もういい!」
私の溢れ出る愛を、顔を真っ赤にした烏養さんが遮った。その顔があまりに可愛かったので、「照れるのが可愛いところ」とニヤニヤしながら付け足すと、「大人をなめんじゃねぇ」と烏養さんは依然頬を染めたまま私の頬を両手で包んだ。触られたのは初めてだったので少し驚いてしまい、今度は私の頬に熱が集まった。
「付き合うか」
真面目な顔をした烏養さんが言った。私の頭を固定したまま、じっと私の目を見つめる。
私はドキドキしてしどろもどろになりながら答えた。
「は、はい」
そう言うのが精一杯。
すると、烏養さんがにっと笑った。あー、やっぱりかっこいい。
2019.4.5
この春大学2年生になった私は高校の時からずっと続けているように、今年もまた烏養さんの誕生日を祝いに坂ノ下商店にやって来た。
高2から手作りのお菓子をあげ始めてもう4年目。烏養さんもさすがに慣れたようで、「おー、ありがとな」と言って煙草を咥えたまま素直にプレゼントを受け取ってくれた。
初めてお菓子をあげた時、烏養さんは学校の先生でもないのに私の年齢を気にして、プレゼントを断った。だけど、納得のいかなかった若き日の私は、烏養さんに「ちょっと口開けてみて」と言って烏養が怪訝そうに口を開けたところにお菓子をぽいっと放り込んで、無理やり受け取らせたのだった。
その時烏養さんは釈然としないという顔をしながらも「うまい」と言ってくれた。その時心底うれしかった気持ちは今でも覚えている。
平日の昼過ぎだからかお店に人が来る気配が全くなく、烏養さんはお仕事中だというのに私があげたお菓子を食べ始めた。
「お前こんなのも作れんだな。うまい」
昨年まではクッキーのフレーバーを変えたりしながら作っていたが、今年は少し趣向を変えてマフィンにしてみた。喜んでもらえてよかった。
「烏養さん、好き」
私は少しかがんでカウンターに座る烏養さんに目線を合わせて言った。これも毎年のことだ。返事がほしいとは思うけれど、私が「付き合って」という決定的な言葉を言わないからか、烏養さんは毎年照れて「おう」と言うだけだった。
私も好きであることを伝えるだけで満足してるところがあるから、別にいいんだけど。烏養さんが幸せなら文句はない。だから、今年も期待なんてしていなかった。
「お前、こんな煙草臭いおっさんのどこがいいんだよ」
昨年までとは違い、烏養さんは照れつつも変なものを見る目をしてこんなことを言ってきた。
「まだ20代でしょ。おっさんじゃないよ」
「お前と10歳違うんだぞ、お前らからしたらおっさんだろ」
「20代を世間はおっさんと呼んだりしませーん」
おっさんというワードに納得のいかなかった私は冗談交じりに烏養さんに反論した。しかし烏養さんの質問には答えられていないので、きちんと私の愛をぶつけてやろうと烏養さんに顔を近づけて、烏養さんのいいところを羅列してやった。
「かっこいいところ、見た目に反して優しいところ、悩みを真剣に聞いてくれるところ、大人の包容力、なんだかんだで私を心配してくれるところ、落ち着いた声、言いたくない時は何も聞かずに見守ってくれるところ、今も私を」
「わかった、もういい!」
私の溢れ出る愛を、顔を真っ赤にした烏養さんが遮った。その顔があまりに可愛かったので、「照れるのが可愛いところ」とニヤニヤしながら付け足すと、「大人をなめんじゃねぇ」と烏養さんは依然頬を染めたまま私の頬を両手で包んだ。触られたのは初めてだったので少し驚いてしまい、今度は私の頬に熱が集まった。
「付き合うか」
真面目な顔をした烏養さんが言った。私の頭を固定したまま、じっと私の目を見つめる。
私はドキドキしてしどろもどろになりながら答えた。
「は、はい」
そう言うのが精一杯。
すると、烏養さんがにっと笑った。あー、やっぱりかっこいい。
2019.4.5
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