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ツッキーはかっこいいから、毎年バレンタインには女子からチョコをたくさんもらう。机に置いてあったり、直接渡しに来る子もいる。高校生になって初めてのバレンタインもたぶんそうだろう。
一方俺はツッキーのついでに義理チョコを貰うくらいで、本命らしきものは貰ったことがない。今年もたぶん、というか絶対そうだ。
案の定、朝練を終えて教室に入るとツッキーの机にはいくつかかわいいラッピングが置いてあった。
「ツッキー、今年もすごいね!」
「食べきれないけどね」
大量のチョコをどうしているのか知らないけど、ツッキーは毎年ちゃんと鞄に詰めて持って帰る。今日のチョコも鞄に詰めようとしたツッキーに、クラスの女子がまたチョコを持ってきた。それを見ていると、たくさんのチョコはいらないけど自分のためのチョコを貰えるのはいいな、と少しだけ羨ましくなる。
ツッキーから目を反らし、何も置かれていない自分の席へ着く。1限の教科書を出そうと机の中に手を入れた。
カサリ。
そこにはビニールの感触があった。机の中に教科書類以外は入れてないはずなんだけど。
ひっぱり出すと、黄色のリボンで結ばれた黄緑色のラッピングだった。鼓動が少し速くなった。開けてみると、濃い緑色をベースに白と黄緑のストライプ模様が入ったハンカチだった。なんとメッセージカードも入っている。
『本当はチョコを贈りたかったのですが、知らない人からだと食べてもらえないかもしれないのでハンカチにしました。よかったら使ってください。』
メッセージカードには名前がなかった。
こんなの貰ったの初めてだ。すごくうれしい。でも、誰なんだろう。知らない人って言っても、同じ学校の生徒だよな・・・。
その差出人不明の贈り物を、俺は大事に鞄にしまった。
◇
昨日クラスの女子をそれとなく観察したけど、差出人は全くわからなかった。ツッキーにも相談したけど、周りをよく見ているツッキーにもわからないみたいだった。
ツッキーと昼ごはんを食べ終えると、午後の授業が始まる前にトイレに行っておこうと思い、俺は教室を出た。すると、扉を抜けてすぐ女子にぶつかりそうになった。
「あっ、ごめん!」
すんでのところでよけてそう言った。
「あっ、わたしも、ごめん・・・。」
ぶつかりそうになったのは同じクラスの久原さんだった。委員会が同じなので時々話をすることがある。
お互いによけてすれ違おうとしたが、ふと久原さんの手元に目が留まった。
紺色ベースにオレンジとピンクのストライプ模様が入ったハンカチ。俺が昨日貰ったのと色違い・・・?
「そのハンカチさ・・・」
そう声をかけると久原さんの頬がほんのりピンクに染まった。まだ何も言っていないのに久原さんはすっかり照れていて、しどろもどろに話しだした。
「いや、あの、ごめん、おそろいなんて気持ち悪いよね・・・。ほんとごめん。い、いやだったら捨ててくれていいから・・・。」
久原さんがたちまち涙目になる。ふと気が付くと、教室の入り口で固まっている俺たちをクラスメイトがちらちらと見ている。
「久原さん、ちょっと、こっち。」
俺は久原さんを手招きして、人気のない屋上の入り口へと歩いて行った。
屋上の扉には鍵がかかっていて入れないのが残念だったが、仕方ないのでここで久原さんに向き合う。
久原さんの俯いた顔は真っ赤になっていた。
「・・・久原さんがバレンタインにくれたんだよね?」
「う、ん。面と向かってチョコを渡す勇気がなくて・・・。ごめん、きもくてごめん!」
「いや、俺うれしかったよ。バレンタイン貰ったの、初めてだし・・。ありがとう。」
そう言うと、久原さんは顔をばっと上げて「ほんと!?」と大きい声を出した。くりんとした大きな目が俺の瞳をとらえて、少しドキっとした。
「あ、う、うん・・・。」
「じゃあわたし、まだ山口くんのこと諦めなくていいかなぁ・・・。」
神妙な顔をしてそうつぶやく久原さん。えっ、ていうか諦めなくてって、え?
「それってどういう意味・・・?」
「えっ!あっ!やだ、忘れて!今のなし!」
再び顔を真っ赤にした久原さんに、ホワイトデーはどうやってお返ししようかな。
2019.2.7
title: 誰花
一方俺はツッキーのついでに義理チョコを貰うくらいで、本命らしきものは貰ったことがない。今年もたぶん、というか絶対そうだ。
案の定、朝練を終えて教室に入るとツッキーの机にはいくつかかわいいラッピングが置いてあった。
「ツッキー、今年もすごいね!」
「食べきれないけどね」
大量のチョコをどうしているのか知らないけど、ツッキーは毎年ちゃんと鞄に詰めて持って帰る。今日のチョコも鞄に詰めようとしたツッキーに、クラスの女子がまたチョコを持ってきた。それを見ていると、たくさんのチョコはいらないけど自分のためのチョコを貰えるのはいいな、と少しだけ羨ましくなる。
ツッキーから目を反らし、何も置かれていない自分の席へ着く。1限の教科書を出そうと机の中に手を入れた。
カサリ。
そこにはビニールの感触があった。机の中に教科書類以外は入れてないはずなんだけど。
ひっぱり出すと、黄色のリボンで結ばれた黄緑色のラッピングだった。鼓動が少し速くなった。開けてみると、濃い緑色をベースに白と黄緑のストライプ模様が入ったハンカチだった。なんとメッセージカードも入っている。
『本当はチョコを贈りたかったのですが、知らない人からだと食べてもらえないかもしれないのでハンカチにしました。よかったら使ってください。』
メッセージカードには名前がなかった。
こんなの貰ったの初めてだ。すごくうれしい。でも、誰なんだろう。知らない人って言っても、同じ学校の生徒だよな・・・。
その差出人不明の贈り物を、俺は大事に鞄にしまった。
◇
昨日クラスの女子をそれとなく観察したけど、差出人は全くわからなかった。ツッキーにも相談したけど、周りをよく見ているツッキーにもわからないみたいだった。
ツッキーと昼ごはんを食べ終えると、午後の授業が始まる前にトイレに行っておこうと思い、俺は教室を出た。すると、扉を抜けてすぐ女子にぶつかりそうになった。
「あっ、ごめん!」
すんでのところでよけてそう言った。
「あっ、わたしも、ごめん・・・。」
ぶつかりそうになったのは同じクラスの久原さんだった。委員会が同じなので時々話をすることがある。
お互いによけてすれ違おうとしたが、ふと久原さんの手元に目が留まった。
紺色ベースにオレンジとピンクのストライプ模様が入ったハンカチ。俺が昨日貰ったのと色違い・・・?
「そのハンカチさ・・・」
そう声をかけると久原さんの頬がほんのりピンクに染まった。まだ何も言っていないのに久原さんはすっかり照れていて、しどろもどろに話しだした。
「いや、あの、ごめん、おそろいなんて気持ち悪いよね・・・。ほんとごめん。い、いやだったら捨ててくれていいから・・・。」
久原さんがたちまち涙目になる。ふと気が付くと、教室の入り口で固まっている俺たちをクラスメイトがちらちらと見ている。
「久原さん、ちょっと、こっち。」
俺は久原さんを手招きして、人気のない屋上の入り口へと歩いて行った。
屋上の扉には鍵がかかっていて入れないのが残念だったが、仕方ないのでここで久原さんに向き合う。
久原さんの俯いた顔は真っ赤になっていた。
「・・・久原さんがバレンタインにくれたんだよね?」
「う、ん。面と向かってチョコを渡す勇気がなくて・・・。ごめん、きもくてごめん!」
「いや、俺うれしかったよ。バレンタイン貰ったの、初めてだし・・。ありがとう。」
そう言うと、久原さんは顔をばっと上げて「ほんと!?」と大きい声を出した。くりんとした大きな目が俺の瞳をとらえて、少しドキっとした。
「あ、う、うん・・・。」
「じゃあわたし、まだ山口くんのこと諦めなくていいかなぁ・・・。」
神妙な顔をしてそうつぶやく久原さん。えっ、ていうか諦めなくてって、え?
「それってどういう意味・・・?」
「えっ!あっ!やだ、忘れて!今のなし!」
再び顔を真っ赤にした久原さんに、ホワイトデーはどうやってお返ししようかな。
2019.2.7
title: 誰花
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