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「こんにちは」
坂ノ下商店の戸をカラカラとあけて挨拶すると、煙草を咥えたまま驚いた顔をした烏養さんと目が合った。
「・・・おう。急にどうした」
確かに急だ。
今年の春、日向たちと共に烏野高校を卒業して今や年末だ。
今日はちらちら雪が降っている。吐く息も白い。
その間烏養さんに連絡もしていなければ、会いに来てもいない。
恥ずかしかったから。
仁花ちゃんと一緒に烏野バレーボール部のマネージャーをしていたけれど、当時は連絡先を知らなかった。
毎日顔を合わせていたし、緊急の連絡は武田先生が行っていたから必要なかったのだ。
高校を卒業した日、私は勇気を出して烏養さんに連絡先を聞いた。
告白なんて、ぜったい無理。
でも、せめてつながりを持てたらな、と思ったのだ。
今思えば、用もないのに連絡先聞くなんて、好きって言ってるようなものだと思う。顔から火が出る。
あの時烏養さんはあっさり、いいよ、と言って連絡先を教えてくれた。
なんで教えてくれたんだろう。
同窓会とかいつかやるかもしれないけど、私は明らかに幹事をやるタイプじゃないし。
やっぱり、気になってしまって。
私に、興味あるのかな、なんて。
「年末なので実家に帰ってきました」
「あー、まーそうだよな。外寒かったろ。今茶ー出す」
お茶を出してくれるというのに、私は店内の椅子に目もくれず烏養さんのいるカウンター前へずんずん進んだ。
「え、何だ。座ってろよ」
「・・・連絡先、どうして教えてくれたんですか」
こっちを見て固まる烏養さん。
でもすぐに動き出して吸っていた煙草をカウンター横にある灰皿に押し付けた。
「お前こそ、なんで聞いてきたんだよ」
「・・・それは、その・・・」
「つーか何で連絡よこさねんだよ」
「いや、その、いざ送るとなると、その・・・」
すると烏養さんは少し怒った顔をして言った。
「お前から連絡してくれねーとお前の連絡先わかんねぇだろ」
それじゃお前に連絡しようがねーしよ、とつぶやきながら烏養さんはがしがしと頭をかいた。
「えっっ!連絡くれる気だったんですか!?」
「・・・そうだよ」
少し顔を赤らめる烏養さん。
何その顔・・・!期待してしまうじゃないか・・・!
「えーと、何の用事で・・・?」
すると烏養さんはにやりとしながら、
「教えてやんねぇ」
といじわるに言ってきた。
だんだん顔が熱くなる。
だめだ、今日はもう無理。
とりあえず帰って改めて連絡しよう。
そう思って、失礼します、と逃げるように戸へ向かうと、腕を掴まれ引き寄せられてしまった。
背中に烏養さんのあったかさを感じる。
すると肩を掴まれ、向かい合うように体の向きを変えられた。
背の低い私に合わせて、少しかがんで目をのぞき込んでくる。
ああ、どきどきする。
「俺は久原のこと、好きだよ」
私の目をしっかり見つめて、烏養さんは優しくささやいた。
ほっぺが熱くてたまらない。
そんな私を見て烏養さんはまたもにやりとする。
「あ、わ、私も、ずっと、好きでした」
今言える精一杯。そんな私に烏養さんは
「知ってる」
そう言ってにこにこしながらわしゃわしゃと私の頭を撫でた。
「なんで知ってるんですか・・・。」
「なんかそんな雰囲気出てた。お前、淡々としてるけど端々に感情が見えるんだよな」
「知ってたなら連絡先聞いたとき言ってくれてもよかったじゃないですか・・・!」
「あん時はお前まだ高校生だろ」
「律儀ですか」
烏養さんはぷぅ~と膨れる私のほっぺを引っ張って、
「かわいい顔しやがって」
なんてにやにやしながら言った。
「は、え・・・!」
胸がきゅんと鳴った。これはとんでもない男を好きになってしまったのでは・・・。
烏養さんは顔を赤くした私の耳に唇を寄せ、
「あずさ、俺は結婚とか、考えてるからな」
とささやいた。照れ隠しだろうか、俺ももういい歳だしな、と言いながら私の頭を抑えているので、その顔を窺うことはできない。
しかも突然名前で呼ぶなんて、烏養さんは思いのほか侮れない男だ。
「えへへ」
うれしくて、思いっきり抱き着いた。
ほのかにかおる煙草のにおい。
頭の片隅に、お店営業中じゃなかったっけ、という思考がよぎったけれど、あと少しだけこの温かさを感じていたい。
2019.1.12
2019.2.26 加筆修正
title:恋したくなるお題
坂ノ下商店の戸をカラカラとあけて挨拶すると、煙草を咥えたまま驚いた顔をした烏養さんと目が合った。
「・・・おう。急にどうした」
確かに急だ。
今年の春、日向たちと共に烏野高校を卒業して今や年末だ。
今日はちらちら雪が降っている。吐く息も白い。
その間烏養さんに連絡もしていなければ、会いに来てもいない。
恥ずかしかったから。
仁花ちゃんと一緒に烏野バレーボール部のマネージャーをしていたけれど、当時は連絡先を知らなかった。
毎日顔を合わせていたし、緊急の連絡は武田先生が行っていたから必要なかったのだ。
高校を卒業した日、私は勇気を出して烏養さんに連絡先を聞いた。
告白なんて、ぜったい無理。
でも、せめてつながりを持てたらな、と思ったのだ。
今思えば、用もないのに連絡先聞くなんて、好きって言ってるようなものだと思う。顔から火が出る。
あの時烏養さんはあっさり、いいよ、と言って連絡先を教えてくれた。
なんで教えてくれたんだろう。
同窓会とかいつかやるかもしれないけど、私は明らかに幹事をやるタイプじゃないし。
やっぱり、気になってしまって。
私に、興味あるのかな、なんて。
「年末なので実家に帰ってきました」
「あー、まーそうだよな。外寒かったろ。今茶ー出す」
お茶を出してくれるというのに、私は店内の椅子に目もくれず烏養さんのいるカウンター前へずんずん進んだ。
「え、何だ。座ってろよ」
「・・・連絡先、どうして教えてくれたんですか」
こっちを見て固まる烏養さん。
でもすぐに動き出して吸っていた煙草をカウンター横にある灰皿に押し付けた。
「お前こそ、なんで聞いてきたんだよ」
「・・・それは、その・・・」
「つーか何で連絡よこさねんだよ」
「いや、その、いざ送るとなると、その・・・」
すると烏養さんは少し怒った顔をして言った。
「お前から連絡してくれねーとお前の連絡先わかんねぇだろ」
それじゃお前に連絡しようがねーしよ、とつぶやきながら烏養さんはがしがしと頭をかいた。
「えっっ!連絡くれる気だったんですか!?」
「・・・そうだよ」
少し顔を赤らめる烏養さん。
何その顔・・・!期待してしまうじゃないか・・・!
「えーと、何の用事で・・・?」
すると烏養さんはにやりとしながら、
「教えてやんねぇ」
といじわるに言ってきた。
だんだん顔が熱くなる。
だめだ、今日はもう無理。
とりあえず帰って改めて連絡しよう。
そう思って、失礼します、と逃げるように戸へ向かうと、腕を掴まれ引き寄せられてしまった。
背中に烏養さんのあったかさを感じる。
すると肩を掴まれ、向かい合うように体の向きを変えられた。
背の低い私に合わせて、少しかがんで目をのぞき込んでくる。
ああ、どきどきする。
「俺は久原のこと、好きだよ」
私の目をしっかり見つめて、烏養さんは優しくささやいた。
ほっぺが熱くてたまらない。
そんな私を見て烏養さんはまたもにやりとする。
「あ、わ、私も、ずっと、好きでした」
今言える精一杯。そんな私に烏養さんは
「知ってる」
そう言ってにこにこしながらわしゃわしゃと私の頭を撫でた。
「なんで知ってるんですか・・・。」
「なんかそんな雰囲気出てた。お前、淡々としてるけど端々に感情が見えるんだよな」
「知ってたなら連絡先聞いたとき言ってくれてもよかったじゃないですか・・・!」
「あん時はお前まだ高校生だろ」
「律儀ですか」
烏養さんはぷぅ~と膨れる私のほっぺを引っ張って、
「かわいい顔しやがって」
なんてにやにやしながら言った。
「は、え・・・!」
胸がきゅんと鳴った。これはとんでもない男を好きになってしまったのでは・・・。
烏養さんは顔を赤くした私の耳に唇を寄せ、
「あずさ、俺は結婚とか、考えてるからな」
とささやいた。照れ隠しだろうか、俺ももういい歳だしな、と言いながら私の頭を抑えているので、その顔を窺うことはできない。
しかも突然名前で呼ぶなんて、烏養さんは思いのほか侮れない男だ。
「えへへ」
うれしくて、思いっきり抱き着いた。
ほのかにかおる煙草のにおい。
頭の片隅に、お店営業中じゃなかったっけ、という思考がよぎったけれど、あと少しだけこの温かさを感じていたい。
2019.1.12
2019.2.26 加筆修正
title:恋したくなるお題
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