舞獣姫として活動を終え、瑞貴はフィルに乗りながらヒールフォレストへ向かう途中だ。


「今日も喜んでくれてよかったね、フィル。美食屋や料理人を目指している人も増えたみたいだし」

〈クゥ！〉

「――さーん！」

「ん？　フィル、止まって！」


誰かに呼ばれた気がした瑞貴はフィルに指示を出して周りを見渡してみる。すると右から誰かを乗せたメチニスホースが走って来たが、その姿を確認した瑞貴は顔が綻ぶ。


「瑞貴さーん！」

「滝丸くん！」


なんとアイスヘルで共に冒険したグルメ騎士(ﾅｲﾄ)の滝丸だった。瑞貴がフィルから降りるとちょうど滝丸も到着し、メチニスホースから降りる。幸い周りに人がいないため舞獣姫の格好をしても瑞貴として話せる。


「お久しぶりです！　グルメ騎士(ﾅｲﾄ)の活動をしていたら、スカイディアがいたのでもしかしてと思って……」

「わざわざ来てくれたの？　ありがとう」

「いえ、ただ僕が瑞貴さんに会いたかっただけです！」

「えっ？」

「あっ！　いや、その！」


意外と大胆なことを言ったとあとから気づいた滝丸は顔を赤くするが、何度か首を振って改めて瑞貴を見る。


「あの、よかったら僕らの丘に来ませんか？」

「丘ってグルメ騎士(ﾅｲﾄ)のみんなが住む、粗食の丘？」

「はい。瑞貴さんが来ることは滅多にありませんし、この間エコランドからエコのりをもらったんです。食事でもどうかなって」

「愛丸さんたちと久しぶりに会えるのかぁ……。うん、じゃあ行こうかな」

「それでは案内しますね」


瑞貴はフィルに、滝丸はメチニスホースに再び乗り、二人はグルメ騎士(ﾅｲﾄ)が住む粗食の丘に向かうのだった。



☆☆☆☆☆


粗食の丘に到着しグルメ騎士(ﾅｲﾄ)が住む村にやってきた瑞貴と滝丸。フィルの存在に多くのグルメ騎士(ﾅｲﾄ)はかなり驚いたが、フィルから降りた瑞貴と同じく到着した滝丸の姿を見ると落ち着きを取り戻す。


「ただいま帰りました。それと、お客様を連れてきました」

「お久しぶりです。舞獣姫こと瑞貴です」

「よく来たね、瑞貴ちゃん」


代表として快く迎えてくれたのはトリコの旧友であり、グルメ騎士(ﾅｲﾄ)のリーダーである愛丸だ。トリコが絡むとケンカっ早くなりやすいが、普段は冷静で優しい人だ。