※夢主はトリコが好きだと自覚する前の出来事です。


「瑞貴とティナは来月のバレンタイン、どうするし？」

「えっと、どうするって……？」

「ほら、好きな人に贈るとか～！　ウチは当然トリコにあげるんだしー！　きゃー！」

「うん、ブレないようで安心したよ」


休日が重なったこともあり、とあるカフェに集まった瑞貴とティナとリン。話題に上がったバレンタイン当日への気持ちを馳せるように赤くした頬を両手で当てて騒ぐリンは、まさに恋する乙女だ。


「私は職場用に買って行くわ。あと、自分用にいくつかね！」

「わかるし！　バレンタインに販売されるチョコってどれもおいしそうだし！」

「有名シェフやパティシエが作ったのが、一般販売されてるもんね～」


この世界では料理人ランキング上位の料理人が作ったチョコが、上質ながらも低価格で販売される。そのためここぞとばかりに男女問わず買いに来ることが多いのだそう。


｢｢で、瑞貴は？｣｣

「私もティナさんに似た感じかな」


瑞貴にとってバレンタインは『好意を持つ相手に気持ちを伝える』というより、『お世話になった人へ感謝を伝える』のほうがしっくりきている。


「だから日頃の感謝を込めてってことで、男女問わずみんなにあげようかなと」

「もしかして、ウチにも？」

「私にもくれるの？」

「当然」

｢｢やったー！｣｣


笑顔で頷いてくれた瑞貴に、リンとティナは喜びながらハイタッチを交わした。


「あっ、でもトリコたちはファンからとかいっぱいもらう感じかな？」

「そうね。ココとか昔からいっぱいもらってそうなイメージがあるけど」

「子供の頃はもらってないし」

｢｢えっ？｣｣

「だから、ＩＧＯにいた頃はウチ以外もらってないんだし」

「えー!?　そうだったのー!?」

「てんこ盛り意外だわー!?」