愛する者たちのために
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「ハァ……ハァ……!」
どれくらい走り回ったかわからねぇ。ここに到着したのが昼頃だったはずなのに、今じゃ月が真上にある時間になっちまった。
「見つからねぇ……! このままじゃ瑞貴が……!」
俺は歯がゆい思いをしながら、今朝までの出来事を思い返した。
☆☆☆☆☆
俺は瑞貴と結婚してから、瑞貴がもともと住んでいたヒールフォレストの家に住むことになった。食べられる家じゃねぇのは残念だが、俺もこの森が気に入っているから別に構わなねぇしな。
それから結婚して一年くらいで瑞貴が妊娠した。わかったときはスゲェ嬉しかったし、瑞貴と一緒に喜んだんだが……。
ガチャ……バタンッ。
『あまり食べてくれませんでしたね……』
『ああ。小松の料理ならいけると思ったんだが……』
瑞貴は今、妊娠初期特有の悪阻という状況に陥っている。しかもどうやら子供が俺たち同様にグルメ細胞を持っているせいか、常人より質(タチ)が悪い状況になっていた。
俺だって全然料理ができないわけじゃねぇから、いろいろ調べて妊婦にいい食事を考えては作ってみている。瑞貴も少しでも栄養を取ろうと食事を取ろうとはしているが、すぐに気持ち悪くなってしまう。そのせいか、あまり食事してくれなくなった。
小松の料理ならどうだと思ったが、結果は俺と同じだった。椀一杯くらいも食べられず、眠気も相まってすぐに横になった。
『あの、トリコさん。瑞貴さんの状態を聞いて、ある伝説が書かれた書物を見つけたんです』
――……昔々ある所に夫婦がいた。とても幸せな新婚生活を送る中、妻が妊娠した。夫もとても喜んだ。だが、あんなに元気な妻の体調が日に日に悪くなってしまう。それを見かねた夫は妻のために食材を採りに向かった。
しかし、どんな食材も妻が元気になるのは一時的だ。どんなに探しても見つからないため、最後に『天国の果樹園』と呼ばれる場所に行ったが、そこにある食材はどれも一度は妻に持って行ったものだった。
夫は『自分は愛する者たちに何もできないのか』と絶望していると、目の前が急に光り出した。七つの光に導かれ、向かった先には先ほどまで見かけなかった果実が実っていた。導かれるように夫はその果実を手に取って感謝し、すぐに妻の元へと向かった。
果実を食べた妻は妊娠前と変わらない活力を取り戻す。それから元気な子供が産まれ、家族は幸せに暮らしましたとさ……。
小松の言う伝説の『妻』の状況は、まるで瑞貴と似ている。夫が手に入れた果実はきっと妊婦の体にいいものだったに違いない。
『よし! さっそくその果実を採りに行くか!』
『ええっ!? 今からですか!? それに、伝説にあった「天国の果樹園」ってどこかわからないんですよ!?』
『それが一つだけ心当たりがある。――ベジタブルスカイを覚えているか?』
『えっ? ええ、もちろん』
『実はな、同じように空には果物畑がある。それが「フルーツスカイ」ってわけだ』
『ということは、オゾン草のように「果実の王様」があるってことですね!』
『ああ。きっとそれが伝説にあった果実だ。俺もよく知らねぇし、ましてや「七つの光」ってのがなんなのか……』
この伝説も本当かどうか半信半疑だが、正直行って藁にもつかむ思いだ。あそこなら他に実っている果物も、地上のよりいいやつばかりに違いない。
『じゃあ僕もすぐに支度しますね!』
『いや、今回は俺一人で行く』
『ええっ!?』
『小松、お前には瑞貴のことを頼みたい。少しでも瑞貴が食事が取れるようにしてほしいんだ。同性ということでリンやティナにも空いた時間に来られるか連絡してみる』
『トリコさん……。わかりました! 僕、瑞貴さんのためにがんばります!』
『頼んだぜ、小松!』
俺はリンとティナに連絡し、瑞貴の状況を話すと二つ返事で了承してくれた。そしてマンサム会長にも頼んでIGOのジェット機も借りて、天空にある果樹園・フルーツスカイへと向かうのだった。
どれくらい走り回ったかわからねぇ。ここに到着したのが昼頃だったはずなのに、今じゃ月が真上にある時間になっちまった。
「見つからねぇ……! このままじゃ瑞貴が……!」
俺は歯がゆい思いをしながら、今朝までの出来事を思い返した。
☆☆☆☆☆
俺は瑞貴と結婚してから、瑞貴がもともと住んでいたヒールフォレストの家に住むことになった。食べられる家じゃねぇのは残念だが、俺もこの森が気に入っているから別に構わなねぇしな。
それから結婚して一年くらいで瑞貴が妊娠した。わかったときはスゲェ嬉しかったし、瑞貴と一緒に喜んだんだが……。
ガチャ……バタンッ。
『あまり食べてくれませんでしたね……』
『ああ。小松の料理ならいけると思ったんだが……』
瑞貴は今、妊娠初期特有の悪阻という状況に陥っている。しかもどうやら子供が俺たち同様にグルメ細胞を持っているせいか、常人より質(タチ)が悪い状況になっていた。
俺だって全然料理ができないわけじゃねぇから、いろいろ調べて妊婦にいい食事を考えては作ってみている。瑞貴も少しでも栄養を取ろうと食事を取ろうとはしているが、すぐに気持ち悪くなってしまう。そのせいか、あまり食事してくれなくなった。
小松の料理ならどうだと思ったが、結果は俺と同じだった。椀一杯くらいも食べられず、眠気も相まってすぐに横になった。
『あの、トリコさん。瑞貴さんの状態を聞いて、ある伝説が書かれた書物を見つけたんです』
――……昔々ある所に夫婦がいた。とても幸せな新婚生活を送る中、妻が妊娠した。夫もとても喜んだ。だが、あんなに元気な妻の体調が日に日に悪くなってしまう。それを見かねた夫は妻のために食材を採りに向かった。
しかし、どんな食材も妻が元気になるのは一時的だ。どんなに探しても見つからないため、最後に『天国の果樹園』と呼ばれる場所に行ったが、そこにある食材はどれも一度は妻に持って行ったものだった。
夫は『自分は愛する者たちに何もできないのか』と絶望していると、目の前が急に光り出した。七つの光に導かれ、向かった先には先ほどまで見かけなかった果実が実っていた。導かれるように夫はその果実を手に取って感謝し、すぐに妻の元へと向かった。
果実を食べた妻は妊娠前と変わらない活力を取り戻す。それから元気な子供が産まれ、家族は幸せに暮らしましたとさ……。
小松の言う伝説の『妻』の状況は、まるで瑞貴と似ている。夫が手に入れた果実はきっと妊婦の体にいいものだったに違いない。
『よし! さっそくその果実を採りに行くか!』
『ええっ!? 今からですか!? それに、伝説にあった「天国の果樹園」ってどこかわからないんですよ!?』
『それが一つだけ心当たりがある。――ベジタブルスカイを覚えているか?』
『えっ? ええ、もちろん』
『実はな、同じように空には果物畑がある。それが「フルーツスカイ」ってわけだ』
『ということは、オゾン草のように「果実の王様」があるってことですね!』
『ああ。きっとそれが伝説にあった果実だ。俺もよく知らねぇし、ましてや「七つの光」ってのがなんなのか……』
この伝説も本当かどうか半信半疑だが、正直行って藁にもつかむ思いだ。あそこなら他に実っている果物も、地上のよりいいやつばかりに違いない。
『じゃあ僕もすぐに支度しますね!』
『いや、今回は俺一人で行く』
『ええっ!?』
『小松、お前には瑞貴のことを頼みたい。少しでも瑞貴が食事が取れるようにしてほしいんだ。同性ということでリンやティナにも空いた時間に来られるか連絡してみる』
『トリコさん……。わかりました! 僕、瑞貴さんのためにがんばります!』
『頼んだぜ、小松!』
俺はリンとティナに連絡し、瑞貴の状況を話すと二つ返事で了承してくれた。そしてマンサム会長にも頼んでIGOのジェット機も借りて、天空にある果樹園・フルーツスカイへと向かうのだった。