籠の中の鳥
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美食會本部に戻ると、私は自室にこもってシャワーもそこそこにしたあとベッドの中で丸くなる。スッキリしなかったし、また涙が出てきた……。
コンコン。
「スターだ。入ってもいいか?」
「……どうぞ」
弱々しい声音しか出て来なかったのに聞こえたようで、スタージュンが扉を開いて入って来た。
本当なら出迎えるべきなんだけど、体に力が入らなくて、ベッドの中でスタージュンに背を向けたままでいる。スタージュンも私の様子を見て帰るかと思ったら、ベッドに腰掛けて来た上に頭を撫で始める。もともと体温が高いせいか温かいし優しい手つきだ。
「グリンから聞いた。トリコに会ったそうだな」
「…………」
スタージュンの問いに私は静かに頷いた。スタージュンはトリコに会ったことがあるし、少しだけつい本音が出てしまう。
「……私はトリコの理念が好きです。食材を奪い合うんじゃなくてみんなで分かち合うことが……。だから私は美食會にふさわしくありません…自由にしてください……」
私は美食會の一員じゃないし、心底なりたくない。ただ、『三虎のお気に入り』ということでここにいる。食の奪い合いなんてごめんだし、料理人の誘拐もしたくない。ここから抜け出すこともずっと考えている。
「悪いが……私はもちろん、ボスも、お前も自由にする気はない」
「!」
(ボスが瑞貴を手放したくない理由も、私には少しわかる……)
スタージュンが初めて瑞貴の料理を口にしたとき、今までにない感覚を味わった。食材も調理手順も一緒にやったのに、何故か自分が作ったのとは違う気がしたのだ。
それは紛れもなく……――瑞貴自身の『愛情』だろう。無意識だろうが、敬ってなくても自分をさらった張本人でも、瑞貴は三虎が空腹に飢えていることを知っている。だからこそ自分の料理で少しでも腹を――心を満たしてほしいと思っている。三虎が瑞貴の料理を真っ先に食べるのも、そばにいさせるのも、紛らわせるものではなく満たしてくれる者だと感じているからだ。
いつしかスタージュンも、瑞貴が自分に対して心からの愛情を向けてほしいと願ってしまった。
「……お前はそのままでいい。美食會の色に染まらずとも、そばにいてくれればいいんだ。私も、ボスも、それを望んでいる」
ずっと背を向けていたからスタージュンがどんな顔をしているか知らないけど、撫でる手がちょっと強くなった気がする。
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……ホテルグルメでBBコーンとバブリートロの実食、そしてグルメサミットの法案決定のお祝いパーティーが終了したあと、トリコは同じテーブルを囲むココとサニーに今日の出来事と、瑞貴のことについて話した。
「美食會にリンちゃんと同じくらいの女の子が?」
「ケッ、それがどーした。美食會なんてお下劣でキモい奴らばっかりだし。別に女がいてもおかしくねーだろ」
「そうなんだが、なんかあいつは違う感じがしたんだ……」
トリコが脳裏に浮かぶのは、ジャックエレファントの背で自分を見下ろす瑞貴の悲しそうな顔だ。GTロボ越しのベイやギドやセドルやスタージュン、今日のグリンパーチ――トリコだって今まで美食會の人間を数人しか見たことがないとはいえ、毛色が明らかに違ったのだ。
「もし、あいつともう一度会えたら話がしてみてぇ……。なんのために美食會にいるのか、どうしてあんな顔をしたんだって。もし無理矢理に美食會にいるなら、俺が助けてあげてぇ……」
「「…………」」
聞けば今日が初対面だというし、敵側とはいえ女性にこうも興味を示すトリコ。あまりにも珍しい姿にココとサニーは不思議そうに顔を見合わせた。
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