次世代の幸せを願うはずが……?
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施設に来てから一ヶ月後、私は一龍会長に子供たちの経過報告をしたあと、ある資料を見せながら険しい顔をする。
『この人とこの人、それとこの研究チーム、調査が必要です』
『どういうことじゃ?』
『……子供たちに強制的且つ過剰に、追加検査という名の強制実験をしています』
『なんじゃと!?』
日々子供たちの様子を見ていた私は、決まった日に限って彼らの表情がどこか思わしくないことに気づいた。
基本私は子供たちの世話係だから空いている時間は結構ある。それを利用して研究所内を自ら調査に赴いてみて、そしてマンサム所長に頼んで結果を読ませてもらうと異常なことに気づいた。
『彼らは巧妙に隠しているつもりでしょうが、一連の検査のデータと期日と子供たちの様子、そして私の独断調査を合わせた結果――自分たちの実績のため、子供たちを脅してまでも過剰なデータを取っています』
『わしはあいつらから何も聞いてないぞ?』
『もちろん私も何も聞いてません。きっとそれぞれお互いが人質になっています。そして「私」という存在も……』
サニーとリンには兄妹故に特にお互いを、トリコとココとゼブラは自分以外のみんなを人質にされている。恐らく『協力しないなら他の者に使う』と言われているだろう。……そして中には私のことも含まれている。いくら『IGO会長・一龍の知人』でも『臨時職員で世話係』という弱い立場で、一龍会長が不在では権力が特にないただの小娘だ。子供相手ならいくらでも言い含めるし、お互いが励みになっている彼らにとって脅しの対象にもなってしまう。
トリコとゼブラには過剰な戦闘を、ココには毒の連続注入、サニーには触覚の限界の数値、リンには他の四人のようなグルメ細胞のさらなる特化を。
『グルメ細胞は珍しく、そして万能です。だけど「心」まで万能にするわけじゃありません。どんなに強い力を持っていても彼らはまだ子供なんです。子供の内に植え付けられたトラウマは、大人になっても根付いています』
世界や環境の違いはあれど、瑞貴が育った施設の子供たちと、卒業してたまに訪問してくれた大人たちの様子が脳裏に浮かぶ。
『みんな根は優しい子たちです。嗅ぎたくない匂いを嗅ぎ、見たくないモノが見え、感じたくないモノを感じ、聞きたくないモノを聞き、そして……――いつか心を壊してしまう』
元の世界で私が育った施設では、稀に他の施設から引き取った子供たちがいた。中にはその場所で悲惨な目に遭ったのか、目が虚ろになり心が空虚のような子もいたのだ。そして回復には数ヶ月から数年かかった。
『私は、あの子たちにそんな思いをしてほしくないんです。過ごした期間は一龍会長たちよりも短いですが、彼らは私にとって大切な子たちです』
そして私は一龍会長と綿密に話し合い、対象者たちに気づかれないように動き、子供たちのアフターケアもしてきたのだった。
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……自分たちが知らない間に起きた真実に、トリコとココとサニーだけでなく盗み聞きしながら告げたゼブラもまた、瑞貴がどれだけ自分たちを大切に想っているのかを知った。
風呂から出て着替えてリビングに行くと、先にテーブルに着いていた一龍が自分たちを手招きし、少し離れたキッチンでは瑞貴がニコニコと笑っている。
「もう少しで焼き上がるからね~」
何事もないようにオーブンの中の様子を見る瑞貴。その様子を確認した一龍は、今度は瑞貴に聞こえないように席に着いた四人に話しかける。