ココさんとつき合って三ヶ月――グルメ界に行くための修業の合間にココさんは私とこうして時間を作ってくれる。一度修業の邪魔じゃないかって聞いてみたんだけど……。


『息抜きにもなるし、愛しい君といることが僕にとって一番の癒しなんだ』


挙げ句の果てに『ダメ？』って困ったように首を傾げられたら断れるわけないじゃん！　相変わらず綺麗な顔だし声もいいから、そういう台詞を平然と言われると顔が赤くなるって！　……まあ、私も同じ気持ちなんだけど。

さてと、この調子だと待ち合わせの時間前には着くね。まさかココさんはもう着いてたりして。


「うっそー！　マジで本物!?」

「もしかしてプライベートですか!?」

「こんなとこで会えるなんて感激ー！」


おや、芸能人でも来ているのかな？　私が知っているのはティナさんくらいだからなぁ。彼女もキャスターとはいえ芸能人みたいなものだし、アイドルとか他の芸能人は私疎いからなぁ……。


「あの、そこを通してくれないかな。」


めっちゃ聞き覚えのある声がする！　私は慌てて足を止めて振り向くと、案の定中心にいたのはココさんだった！


「一緒に写真撮ってください！」

「ごめんね、あまり撮られるのは好きじゃないんだ」

「握手をお願いします！」

「いや、僕には毒が……」

「私とココ様の未来を占ってください！」

「今はプライベートで……」


女の子たちは全然ココさんの話を聞いてないし、むしろ押せ押せで迫ろうとしている。――これ以上、そうはさせるか！


「すまないが、本当にどいてほしいんだ」

｢｢｢！｣｣｣


あれ？　さっきまで宥めていたときとは違い、ココさんは低めの声音で告げた。

確かな迫力もあるせいか女の子たちは一気に静かになり、金縛りにあったかのように動きを止める。思わず私も乗り込もうとした足を止めてしまうくらいだ。


「これから僕は大切な人と待ち合わせしている。これ以上、彼女との貴重な時間を割きたくないんだ」


ココさんがそう言うと歩を進める。今の雰囲気もあって女の子たちは自然と道を開いていき、輪から抜けるココさんと私の目が合った。ココさんも私に気づいて軽く右手を上げる。


「やあ、待たせたね」

「い、いえ。大丈夫です」


さっきまでの厳しい表情は幻……？　いや、ココさんのうしろに見える未だに固まっている女の子たちが現実だと告げている。中には早く復活した女の子が私の姿を見たら嫉妬の視線を向けていた。

私たちは歩いてその場から離れると、ココさんが申し訳なさそうに私に話しかける。


「さっきは見苦しい姿を見せてごめんね」

「全然。でもちょっと意外でした」

「意外？」

「はい。ココさんが女の子相手でも怒ることがあるんだなぁって」


ココさんはたまに毒舌吐くけど結構紳士だし、よっぽどのことがない限り女の子相手に邪険に扱うことはない。ファンに囲まれることはグルメフォーチュンとか今までの旅でもあったのに、今回は特に強く言ったからそのことにもびっくりしちゃったなぁ。


「……瑞貴ちゃん、僕は聖人じゃないんだよ」

「えっ？」

「たとえ相手が女性でも、あそこまで言って聞かないなら怒ることだってあるさ。――愛しい君との時間を邪魔するなら特にね」

「！」


最後は私の手を取って言ったので、私は顔を真っ赤にしてしまった。だってココさんに思いっきり優しく微笑まれた上に甘い声音で言われたら照れるって！　おまけに離れてなかなか会えなかった分、久しぶりに言われたら効果倍増！