太陽のサッカー少女物語
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【母との別れ】
私は稲森瑞貴。本土から離れた伊那国島で生まれ育った伊那国中学校の二年生でサッカー部のFW。この島は小さいから試合相手は小学生か大人のチームとしか戦えないけど、それでもサッカーは楽しいし、仲間たちと一緒に過ごす日々は毎日が幸せだった。……あのときまでは。
『伊那国中サッカー部は廃部と決定しました』
本土から来た冬海卓校長先生から『スポンサー制度』のことを聞いたあとにそう言われ、サッカー部のグラウンドは取り壊されていく。工事を懸命に止めようとしたけど追い出されてしまった。
のりかの手当を受けつつも、万作の言う通り工事を止めても根本的な解決にはならないし、道成キャプテンもサッカーを続けるには何か手を考えないといけないと言われた。それでもサッカーをあきらめないと私は決めた……。
『大変だ瑞貴! お前のお母さんが!』
『えっ……』
慌てて駆け付けて来た氷浦から病院に入院しているお母さんのことを聞いて、私は急いでお母さんのいる病室へ駆け込んだ。
ガラッ!
「お母さん!」
病室に入った私はお母さんのそばに駆け寄ると、さっきまでいたお医者さんと看護師さんが眉を下げて病室を去って行く気配を感じる。でも私は昨日よりも顔色が悪いのに微笑もうとしているお母さんの表情と、私の怪我した頬に手を当ててくれるお母さんの手から伝わる低い体温のことしか頭になかった。
「瑞貴。その顔はどうしたの……?」
「なんでもない……それより、お母さん苦しいの!?」
「ごめんね…瑞貴……。お母さん…お前と一緒にいてあげられそうにないわ……」
「何言ってるの! そんなことないでしょ!? 私たち、ずっと二人で楽しくやってきたでしょ!? これからもずっと――」
「ううん……。瑞貴……人には…いつか別れがくるわ……。でも本当に繋がった絆は決してなくなることはない……。瑞貴とお母さんも永遠に繋がってる……」
「そんな……!」
氷浦から聞いていたけど、それでも私はお母さんとお別れなんてしたくない。両手に握ったお母さんの手の温もりがなくなるなんて信じられなくて……! お母さんが私の両手で包んでいる手とは反対の手を私の手の上に重ねた途端、涙が溢れて来た……。
「そんな……! お母さん死なないで! サッカーだけじゃなく、お母さんまで私の前からいなくなるの!?」
「瑞貴……サッカーはいなくならない……お前が必要とする限り……サッカーはそこにある……。瑞貴…お前には…ずっと…明日がある……」
「っ! お母さん!? お母さん……お母さん……!」
そう言って私からお母さんの手が離れると同時に、お母さんの両目が閉じていた。そして私が何度も呼びかけて揺すっているのに、お母さんの目が開かない。
「お母さ――んっ!!」
サッカーとお母さんを同時に失った悲しみに耐えられず、私は病院を飛び出しててっぺん崖に向かって行った……。
私は稲森瑞貴。本土から離れた伊那国島で生まれ育った伊那国中学校の二年生でサッカー部のFW。この島は小さいから試合相手は小学生か大人のチームとしか戦えないけど、それでもサッカーは楽しいし、仲間たちと一緒に過ごす日々は毎日が幸せだった。……あのときまでは。
『伊那国中サッカー部は廃部と決定しました』
本土から来た冬海卓校長先生から『スポンサー制度』のことを聞いたあとにそう言われ、サッカー部のグラウンドは取り壊されていく。工事を懸命に止めようとしたけど追い出されてしまった。
のりかの手当を受けつつも、万作の言う通り工事を止めても根本的な解決にはならないし、道成キャプテンもサッカーを続けるには何か手を考えないといけないと言われた。それでもサッカーをあきらめないと私は決めた……。
『大変だ瑞貴! お前のお母さんが!』
『えっ……』
慌てて駆け付けて来た氷浦から病院に入院しているお母さんのことを聞いて、私は急いでお母さんのいる病室へ駆け込んだ。
ガラッ!
「お母さん!」
病室に入った私はお母さんのそばに駆け寄ると、さっきまでいたお医者さんと看護師さんが眉を下げて病室を去って行く気配を感じる。でも私は昨日よりも顔色が悪いのに微笑もうとしているお母さんの表情と、私の怪我した頬に手を当ててくれるお母さんの手から伝わる低い体温のことしか頭になかった。
「瑞貴。その顔はどうしたの……?」
「なんでもない……それより、お母さん苦しいの!?」
「ごめんね…瑞貴……。お母さん…お前と一緒にいてあげられそうにないわ……」
「何言ってるの! そんなことないでしょ!? 私たち、ずっと二人で楽しくやってきたでしょ!? これからもずっと――」
「ううん……。瑞貴……人には…いつか別れがくるわ……。でも本当に繋がった絆は決してなくなることはない……。瑞貴とお母さんも永遠に繋がってる……」
「そんな……!」
氷浦から聞いていたけど、それでも私はお母さんとお別れなんてしたくない。両手に握ったお母さんの手の温もりがなくなるなんて信じられなくて……! お母さんが私の両手で包んでいる手とは反対の手を私の手の上に重ねた途端、涙が溢れて来た……。
「そんな……! お母さん死なないで! サッカーだけじゃなく、お母さんまで私の前からいなくなるの!?」
「瑞貴……サッカーはいなくならない……お前が必要とする限り……サッカーはそこにある……。瑞貴…お前には…ずっと…明日がある……」
「っ! お母さん!? お母さん……お母さん……!」
そう言って私からお母さんの手が離れると同時に、お母さんの両目が閉じていた。そして私が何度も呼びかけて揺すっているのに、お母さんの目が開かない。
「お母さ――んっ!!」
サッカーとお母さんを同時に失った悲しみに耐えられず、私は病院を飛び出しててっぺん崖に向かって行った……。