背伸びをしていた恋
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部活が終わったあと俺は一人サッカー棟を出て階段を降りる。普段だったら霧野と帰るが、練習の間に少しでも気を抜けば霧野が他の男と絡んでいると気が気じゃなかった。本人は気にせずシュートを決めた剣城と肩を組んだり、生意気な口を聞いた狩屋にコブラツイストをしたり、プリンをくれた三国さんに抱きついたり……ダメだ、考えたらキリがない。
本格的に距離を取るべきか考えていたら、寂しく思って自然と顔をうつむけてしまう。
「――神童! ちょっと待てって!」
「!」
うしろから聞こえた声に顔を上げれば、サッカー棟から飛び出した霧野が階段を一段飛びしながら追いかけてきた。
「危ないだろ! ゆっくり降りて来い!」
「平気平気……――うおっ!?」
「っ!」
言ったそばから階段から足を滑らせた霧野が前に倒れそうになるのを、俺は伸ばした霧野の手を引いて自分の体に身を委ねさせると同時に受け身を取る態勢に入った。幸い霧野が足を滑らせた場所が床まであと数段だったことで、俺は尻餅を着く程度で済んだ。
「だから言っただろ!」
「ごめんごめん。神童があたしを置いて帰ろうとしていたから慌ててて……」
「まったく……怪我はないか?」
先に立ち上がった俺が霧野の手を引いて立ち上がらせると、霧野は俺の顔をジーッと見つめてきた。こんなに至近距離なのは久々のせいか自然と俺の顔に熱が溜まる。
「ど、どうした?」
「いや、こうしてみると神童もずいぶんデッカくなったんだなぁって。昔はあたしと同じぐらいだったのに」
そう言われてみれば俺の目線はやや下になっている。中学に入る前は俺と霧野は同じ身長だったが、ここ最近俺のほうが伸びたのだろう。男女の差と言えば当然だが、少し嬉しいと思ってしまうのは何故なのか。
「お前は昔から危なっかしいからな。――瑞貴」
「えっ?」
俺が名前で呼べば霧野……――いや、瑞貴は目をパチクリする。
「ねぇ。神童、今あたしのこと名前で呼んだよね? なんで?」
「ああ。もう気にしないことにした。お前も昔のように俺のことを名前で呼んでいいぞ」
「ホントにどうした!?」
スゴく俺のことを不思議に見ている瑞貴。ガラじゃないとわかっているが、俺はもう我慢しないことに決めた。
そう思ったら瑞貴の口から俺の名を呼んで欲しくて、俺は先ほどからずっと繋いだままの手を握り少し身を低くして瑞貴と目線を合わせて見つめる。
「いいから、呼んでくれ」
「っ……! た…た……拓人」
久しぶりのせいか、少し顔が近かったせいか、瑞貴は顔が赤くなった。正直に言ってとても可愛い。
お前の手を引いてやれるのは、いつだって俺だと自他共に思ってもらえるように。名前呼びと共にここから再スタートしよう。
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