背伸びをしていた恋
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俺の幼馴染は良く言えば『面倒見がいい』、悪く言えば『ガサツ』、そう周りから言われるくらい男勝りだ。しかし逆にそれが魅力も表しているので、あいつの周りには男女問わず常に誰かがいるくらい人気者。
『たくと、ほらこっち!』
俺の初恋は今でもそうやって変わらない笑顔を向けてくれる。昔は笑顔で手を引いてくれたが、今は……。
ガラッ!
「瑞貴先輩いますかー?」
ホームルームが終わって部活の準備をしていると、元気よく扉を開けた天馬。うしろには信助と空野と狩屋と影山と剣城がいるので、一年生が全員集合なんて珍しいな……――いや、剣城は連れて来られたのが正解か。逃がさないように信助が上着をつかんでいる。GKになってから握力と腕力も鍛えられたのか?
「どうしたどうした? そろいもそろって二年の校舎に」
「どうしたもこうしたもないですよ! 今日はミーティングを始める前に練習に付き合ってくれる約束だったじゃないですか!」
「ああっ! そうだった!」
おいおい、約束を忘れるのは先輩としてどうなんだ。そう思っていると同時にあいつは荷物をまとめて椅子から立ち上がる。
「悪い、先に言ってるな――『神童』!」
「ああ。――『霧野』」
「行きましょう! 瑞貴先輩!」
「あー! 天馬も狩屋くんもズルい! 私だって瑞貴先輩と手を繋ぎたいのに!」
「早いモン勝ちだよ、葵!」
「ほらほら、先輩は足が遅いんだから置いてっちゃいますよ」
「おいおい、強く引っ張るな! それと狩屋、お前あたしよりタイムが遅いだろ」
「ウグッ! い、今はですよ! 次の記録測定は俺が追い抜きますから!」
「狩屋くん、それ最早負け惜しみだよ……」
「いいから早くしないと、時間がなくなるぞ」
タタタタタッ――……。
「…………」
そう挨拶を交わしたあと、あいつは天馬たちと一緒に教室を出て行った。こうしていると霧野の手を迷わず引く一年組だけじゃなく、天馬と空野の呼び合いが羨ましく思ってしまう。
昔は名前で呼び合っていたものの、小学校高学年になってからは名字呼びになってしまった。理由は俺が『名字で呼んでほしい』と頼んだからだ。
俺たちが幼馴染だと知っている奴だろうが、知らない奴だろうが、中には『男と女』という理由から冷やかされることが多かったせいだ。昔は今よりも弱気だった俺は冷やかされるのが嫌で恥ずかしくて耐えられず、だけど霧野が好きなのは嘘じゃないから避けることもできず、『名字で呼び合う』ということで妥協した。
『わかった。そうしたいならそうするよ……――神童』
寂しそうな顔で俺のことを初めて名字で呼んだあいつの表情が、どうしても忘れられない。かくいう俺も、初めて名字で呼ばれたとき言い表せない不安があった。
いつか俺があいつの手を引いてやりたいと思った小さな夢は、叶わなくなるんじゃないかって。
『たくと、ほらこっち!』
俺の初恋は今でもそうやって変わらない笑顔を向けてくれる。昔は笑顔で手を引いてくれたが、今は……。
ガラッ!
「瑞貴先輩いますかー?」
ホームルームが終わって部活の準備をしていると、元気よく扉を開けた天馬。うしろには信助と空野と狩屋と影山と剣城がいるので、一年生が全員集合なんて珍しいな……――いや、剣城は連れて来られたのが正解か。逃がさないように信助が上着をつかんでいる。GKになってから握力と腕力も鍛えられたのか?
「どうしたどうした? そろいもそろって二年の校舎に」
「どうしたもこうしたもないですよ! 今日はミーティングを始める前に練習に付き合ってくれる約束だったじゃないですか!」
「ああっ! そうだった!」
おいおい、約束を忘れるのは先輩としてどうなんだ。そう思っていると同時にあいつは荷物をまとめて椅子から立ち上がる。
「悪い、先に言ってるな――『神童』!」
「ああ。――『霧野』」
「行きましょう! 瑞貴先輩!」
「あー! 天馬も狩屋くんもズルい! 私だって瑞貴先輩と手を繋ぎたいのに!」
「早いモン勝ちだよ、葵!」
「ほらほら、先輩は足が遅いんだから置いてっちゃいますよ」
「おいおい、強く引っ張るな! それと狩屋、お前あたしよりタイムが遅いだろ」
「ウグッ! い、今はですよ! 次の記録測定は俺が追い抜きますから!」
「狩屋くん、それ最早負け惜しみだよ……」
「いいから早くしないと、時間がなくなるぞ」
タタタタタッ――……。
「…………」
そう挨拶を交わしたあと、あいつは天馬たちと一緒に教室を出て行った。こうしていると霧野の手を迷わず引く一年組だけじゃなく、天馬と空野の呼び合いが羨ましく思ってしまう。
昔は名前で呼び合っていたものの、小学校高学年になってからは名字呼びになってしまった。理由は俺が『名字で呼んでほしい』と頼んだからだ。
俺たちが幼馴染だと知っている奴だろうが、知らない奴だろうが、中には『男と女』という理由から冷やかされることが多かったせいだ。昔は今よりも弱気だった俺は冷やかされるのが嫌で恥ずかしくて耐えられず、だけど霧野が好きなのは嘘じゃないから避けることもできず、『名字で呼び合う』ということで妥協した。
『わかった。そうしたいならそうするよ……――神童』
寂しそうな顔で俺のことを初めて名字で呼んだあいつの表情が、どうしても忘れられない。かくいう俺も、初めて名字で呼ばれたとき言い表せない不安があった。
いつか俺があいつの手を引いてやりたいと思った小さな夢は、叶わなくなるんじゃないかって。