「逃げるなんてブサイクなことしねぇ。一旦退(ﾋ)くだけさ。――ただーし！　ＭＡＸで退(ﾋ)くけどな――っ!!」

「わみゃ――っ!!」


姫抱っこの体制だしこの状況だから尚更私は技を使いにくい。頼むサニー！　逃げるも退(ﾋ)くも表現はどうでもいいから、とにかくこの場を全力で退散して！


「あれは！　瑞貴！　小松！　サニー！」

「お兄ちゃん!?　瑞貴!?」

「あっ、トリコにリン！」

「ティナさんにクルッポーもいる！」

「トリコさん!?　トリコさ――ん!!」


地上からこちらに向かって駆けて来るトリコたちの姿に私たちは少し安心したけど、この状況からまだ脱出できていない。


「生きてたかお前ら！　てか、この状況どうにかできねー!?」

「どうにかって!?　トリコ、この位置だとウチらも！」

「離れてろ！　ナイフ!!」


ジャンプしたトリコは地面に大きく四角形を作るようにナイフで切り込みを入れた。


「フォーク!!　サニー！　この中に…飛び込めぇ――っ!!」


さらに左手に切れ目が入った地面の中に突き刺した。そのまま上に持ち上げると大きな四角錐となって深い穴ができた。


「よし！　いくぞ、瑞貴！　松！」

「ＯＫ！」

「はい～～！」


触覚で勢いつけて穴に向かって飛ぶと、トリコたちもその穴に入った。だけど私たちは距離があるからまだまだ到達できていない。


「ヒィ～～ッ!!」

「お兄ちゃん！」

「うおおぉぉおおお!!」


私たちが穴に入ったのと同時にリーガルマンモスも地面に落ちた。その衝撃は凄まじいのにリーガルマンモスはダメージもないのか目を開けるとすぐに起き上がった。


〈バオオォォオオオ!!〉


ドスンドスンと歩くリーガルマンモス。落ちた場所は巨大なくぼみができて、私たちはサニーの髪(ﾍｱ)ネットのおかげでギリギリ助かった。


「間一髪、髪(ﾍｱ)ネット……ここまで押し込まれちまったが、なんとか耐えたぞ」

「危なかったし……」

「トリコさ～ん……」

「小松！　瑞貴！　よく無事だったな」

「サニーさんのおかげです！」

「さすがにこればかりは生きた心地しなかったけど……」


ここに来るまではそう思わなかったのに、さっきはもうダメかと思ったよ……。


「てかお前(ﾏ)、ヘロヘロじゃね？　どーしたトリコ」

「うおっ！　クリーム松茸じゃねぇか！　食っていいか!?　小松！」

「へっ？　ああ、はい！」

「聞いてないよサニー……」

「だな……」


目敏く小松さんのグルメケースの中にあるクリーム松茸を発見したトリコ。回復の意味では重要だけど、本当に食い意地がハンパない。