幻の食材“C(センター)” 一龍と第0ビオトープ
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……トリコも駆け付けて来てくれたことで、珍師範はスプーンドームに自分と千代を閉じ込めた。どうしても美食會に寝返った理由を千代の口から聞くために。
『寝返った理由じゃと?』
『それを聞かずにケンカはできぬわい、千代ちゃん』
『ある食材を手に入れるためさ』
『それはなんじゃ? GODか?』
『アカシアのフルコース……隠された八つ目の食材じゃえ』
『まさか! 何故それを!?』
『珍ちゃんは知っておったんじゃろ?』
『いいや……。わしら第0ビオトープの職員ですら、その食材のことを会長から聞かされてはおらんかった……――少なくとも、まだ「あのとき」は……』
『あのとき!?』
珍師範がそう言ったと丹、千代の顔が一段と険しくなった。顔の血管が浮き出るほど感情を高ぶらせている証拠だ。
『感謝感謝と……あらゆる出来事に感謝せよなどと垂れ続けたあのときか……! 息子を亡くしたばかりのあたしに向かって……!』
千代は一気に珍師範との距離を詰め、包丁を胸に刺した。その顔は狂気により歪んでいるが、珍師範には見えなくても受けた攻撃から伝わっていた……千代の悲しさも怒りも苦しさも全て。
『いったい……誰がお主にそんな情報を……! 単なる伝説かもしれぬのだぞ……!?』
『フンッ! 何を今さら……』
そう言い捨てた千代は珍師範の胸から包丁を抜き、うしろに飛んで間合いを広げる。
『GODすら今や伝説! 届かぬ過去に感謝するくらいなら、たとえ虚構でも未来に手を伸ばすわ!』
『誰だ……お主をそそのかしたのは……美食會か……!?』
『どうかな? 何者かはあたしも知らん。じゃがその者の言葉は信憑性があるものだった……』
『あっ…ああっ……』
『空虚の如き、虚しい感謝に比べたらな!!』
『うわあぁぁあああ!!』
最後にそう言って千代は珍師範にトドメを刺した。それでも珍師範が生きているのは彼の生命力が高いからか、それとも千代の微かな情けが攻撃の手を緩めたのか……真相は定かではない。
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あのスプーンドームの中でそんな戦いが……そして千代さんが辛い過去を持っていたなんて……。それでも私や小松さんたちには衝撃的だった。
「千代さんに、そんな過去が……」
「千代は……死んだ息子の年齢をずっと数えておった……。そりゃあ動揺もするわい……わしの息子でもあるからのう」
「「「「えっ!」」」」
珍師範から次に出た言葉はトリコ以外の私たちは声を上げるほど驚いた。千代さんの息子さんが珍師範の息子さんでもあるって……千代さんと珍師範は結婚していたの!?
でも珍師範だって息子さんが死んで悲しまないはずがない……。珍師範は食義を教え導く者としての立場もあるから、当時は『どんな辛いことも感謝せねば』とって感情を押し殺していたかもしれない。だから千代さんの言葉に激しく動揺してたんじゃないかな……。
「死者の蘇生……アカシアのフルコースに死者を蘇生させる食材が、本当にあるのか?」
「わからぬ……。ただアカシアが封印したとされるフルコースは『七つ』……『八つ目の食材』・『前菜』が抜けておるんじゃ。アカシアがこの食材をわざと隠したことだけは事実じゃろう」
「そういえば前にグルメ神社に行ったとき、確かにアカシアのフルコースを祭る食殿が『七つ』しかなかったと言ってたな。なあ、小松、瑞貴――」
「「…………」」
……トリコが二人に顔を向けると小松は大きく目を見開き、瑞貴は顎に手を当てて考え込んでいた。二人共トリコの声が聞こえないほどに。