――ＩＧＯ本部に帰ってきた一龍は、上半身の服を脱ぎ捨てると食事を始めた。だがそれは大量の皿の山がテーブルだけでなく床にもできるほどの量であり未だに食べる手を止めない。

しかも皿は綺麗だが箸やフォークやナイフやスプーンなども使わず、手づかみで食べ続けている。


「そうか…… 話すら聞かんかったか。三虎のバカは」

「急に呼び出してすまんのう。セツのん」

「何を水臭いことイチちゃん」


ＩＧＯの使いの者によって呼び出された節乃は、ののと一緒にこの場にやって来て料理を作っていたのだ。


「それにしてもあやつらにとっても重要な話を……」

「まあいい」


美食會での一龍と三虎との話の結果を聞いた節乃は呆れの声を出す。一龍はちょうどいい焼き具合の肉の塊をわしづかむ。


「わしらはもう、同じ食卓にはつけぬ。未来を託せるのはいつだって、一つの食卓を囲む者たち。――あいつらのようにな」


一龍は自分が育てた美食四天王の姿を思い浮かべた。性格は違うしケンカもよくするが、全員『分け合う心』を持っており、彼らに一龍はこれからのグルメ時代への希望を託している。


「あぐっ！　モグモグ……あぐっ！」

（こんなに食べるのを見たのはいつぶりじゃろうな……限界まで食材を体にチャージする気じゃな。こりゃえらいことになるじょ……三虎の成長が予想以上だったということか）


食べ続けることで筋肉が膨れ上がる一龍はグルメ細胞をさらに成長させようとしているのだろう。美食會のアジトで会った三虎との来るべき戦いに備えようとしていると、彼の食べっぷりを見て節乃は気づいた。


「セツのん。料理の腕、落ちとらんな」

「まーのう！」

｢｢アッハッハッハッ！｣｣


一龍が料理の感想として親指を立てると、節乃もまた親指を立て返して笑い合った。



☆☆☆☆☆


長いスカイダイビングを経て無事に私たちは地上へ着地することができた。トリコがパラシュートを畳んでいる間、私は周りを見渡した。見た目はまるで森のようなんだけど、ここに着地するまで見た景色にはヤカンや蒸籠や食品サンプルのソバのような家があちこち建っていた。人が住んでいるのは間違いないみたいだね。


「瑞貴、行くぞ」

「うん！」


パラシュートを畳み終えて肩に担ぐトリコのあとを付いて行く私。いったいこの場所になんの用があるんだろう？


「何かここに用があるの？」

「第六の修業食材のヒントを探りにな。パラシュートはここに置いとくか」


足を止めたトリコはパラシュートを地面に置いた。あとで回収するのを忘れないでね、この場所に適用するかわからないけど不法投棄になるぞ。

……再び歩き始めたトリコと瑞貴。その様子を二人のうしろの木の陰でマスクを被った男が見ていたのだ。