「蠅帳!!」


料理長・カリウが空中に向かって吐き出した風船ガムが、蠅帳となって一龍を囲んだ。


「蠅帳……究極のフードカバーだ。もはや脱出は不可能」

「悪いな、一龍。グルメ細胞活性化組が力を試したくてウズウズしているらしい」

「グルメ細胞活性化……アイスヘルで奪っていったセンチュリースープや、グルメ界の食材を食べて、相当の力を付けたか」


クロマドは一龍の言葉に何も答えなかったが、それは即ち無言は肯定ということだろう。


「そういうことだ！」


動けない今の内に自身のレベルアップした力を出そうと、バイルが崖から一龍に向かって飛び降りる。だが――。


「フンッ」


ギンッ！


「なんだ……!?　空中で体が……！」


なんとバイルの体が空中で止まったのだ。不可解な現象に他の美食會幹部もざわざわと戸惑っていると、それだけじゃなく一龍はテーブルクロスの中で何の抵抗もなく歩き始めた。


「何っ!?」


自分の技に自信がある故に、カイトラはこうも簡単にテーブルクロスの粘着性が負けて、さらに無効化にさせたことに驚きを隠せなかった。しかもそれだけでなく、一龍は蠅帳もいとも簡単にめくり上げて脱出したのだ。


「あっ……！」

「なっ……！」

「おいおい、マジか……！」

「テーブルクロスと蠅帳のコラボを、アッサリと破ったぜ！」


蠅帳を張ったカリウはもちろん、脱出不可能のコラボなのにナイスニィや他の幹部たちも再び驚かされていた。


「さすがかつての世界のトップ……老いて尚、細胞は勢いを失ってない。ただこれ以上この場所で自由に動かれては、我々もメンツに関わるんでな。――全力で阻止させてもらうぞ！　一龍！」


するとナイスニィの両手が天井に上げたと思いきや、その腕が蛇のように伸びたのだ。さらにドレスも背中に背負っていた剣を抜き、トミーロッドも口から昆虫獣類を出そうとする。他の美食會も何かしらの技を出そうとするので、一龍は溜息を吐いた。


「フゥ……やれやれじゃ。仕方ないのう。ちと、子守りしてやろうか」


ゴゴゴゴゴ――！


「うわああっ！」

「な、なんだ!?」

「奴に体が引っ張られていく！」


なんと周りにいる全ての人や石コロが一龍に向かって引き寄せられていこうとうするのだ。軽い石コロは簡単に一龍の元へ行くが、幹部は崖から落ちまいと踏ん張っている。