（フフフッ、そんなんじゃ一生かかってもムリね。言ったはずよ、メテオガーリックは特殊調理食材。簡単に調理は――）

「やったあ！　少し剥けました！」

（えっ!?）

「ホント!?　小松さん！」

「はい！　低温で炙りながら皮の筋を沿って切ればいいんです！」

「どれどれ……あっ！　ホントだ！」

「瑞貴さん上手です！」

（ノ、ノーヒントで剥き方を……!?　剥き方がわかったとしても、包丁を入れる力加減はかなりの技術が必要なのに……この子たち、やはり只者じゃない！）


……やり方を見つけた小松、教えてもらったとしても一発でできた瑞貴、二人の技術にはグルメテイスティングから目を付けていたとはいえ、ここまでとはライブベアラーも思わなかった。


「あ、あれ？」

「繊維の方向が変わったんでしょうか？」


外の皮を向けたのはいいものの、第二段階もまた一筋縄じゃいかない。ただ包丁の向きを変えて切ってもダメみたい。


「どうすればいいでしょう？」

「う～ん……――そうだ！　ライブベアラー、チーズ白菜ってまだ残ってる？」

「えっ？」

「あっ、なるほど！　そういうことですね、瑞貴さん！」

「そういうこと！」


私はライブベアラーに訊くとチーズ白菜のストックはまだあるみたいで、さっそくそれをもらいに向かう。小松さんにはその間にお鍋の準備をしてもらった。

次に私がチーズ白菜を一枚一枚と切って、小松さんがそれをさっと茹でて水切りをし、できたチーズ白菜の葉を私はメテオガーリックに張り付けていく。


「あなたたち、いったい何を？」

「うん？　ああ、チーズ白菜の微生物なら固い皮も分解できるのかと思ってね」

「えっ!?」


……まさかそう来るとは思っていなかったのか、ライブベアラーは目を見開いた。


（微生物が活発に動く適温でチーズ白菜をあっためたの!?）


できたチーズ白菜を全部張り付けてみたけど、少しだけなら高い温度でもいけるかもしれないね。


「フゥ……小松さん、もう少し温度が上がったのも試してみようか？」

「それもいいですね！　３度…いや、２度ってとこでしょうか？」

「…………」


……二人が模索しながら作業する姿を見て、不意にライブベアラーは小さな厨房で働く昔のことを思い出して、拳を握り締めると一度目を閉じた。

一面だけチーズ白菜で埋め尽くして試しに小松さんがチーズ白菜の上から包丁を入れてみると、さっきまで少しも入らなかったのにザクッと音が出た。


「皮はさっきより柔らかくなったね」

「でも、ここからいったいどうすればいいのか……」

｢｢う～ん……｣｣

「……――！」


……再び手詰まりになって二人が悩んでいる間、ずっと見学していたライブベアラーに異変が起きる。


（ノッキングが解けたわ……！）


……なんと今まで最低限の動きしかできなかった、ココの毒ノッキングが解かれたのだ！　ニヤリと笑ったライブベアラーは足音を立てないように少しずつ二人に近づく。


「小松さん！」

「えっ!?」


近づく気配に気づいた私は振り向くとライブベアラーが動いていた。メテオガーリックに夢中だったし、まさかココさんの毒ノッキングが今解けるなんて！

一応さっきの戦いででダメージが残っているし、武器はもうこの場にはない。何をする気なのかと警戒をＭＡＸ状態にすると、ライブベアラーはそのまま手を伸ばして――。


「うわー！」

「小松さん！」


ライブベアラーは小松さんの包丁を持つ手をうしろから右手でつかみ、左手を前に出した。もしそのまま危害を加えるのならばと、私は手をかざして技をいつでも出せるようにする。


「ライブベアラー！　いったい何を――」

「ここよ」

｢｢えっ？｣｣


なんとライブベアラーは包丁のある右手を固定し、左指である場所を指差した。というか警戒していたからすぐに気づかなかったけど、もうこいつに敵意が微塵も感じられない？