「言ったはずだ。食べ合わせが悪いとな」

「何故…何故私が内臓をコーティングしていることを……!?」

「もともと、食材を脳からデータで食べる偏食家……実際の味や栄養など興味ないんだろう？　危険食材対策に胃や腸に膜を張り、食材の味や成分を遮断することは想定内」

「私がチーズ白菜をつまみに食べることも、想定内だって言いたいの……!?」

「瑞貴ちゃんと小松くんがそれをつまみに使うことは、僕も知らなかった。ただ、お前の二人に対する色目は露骨だったからな。いいつまみのヒントだと、真似をすると思っていたよ」

「グググググッ……！」


あの視線は正直鬱陶しかった……。一挙一動の全てを見てるし、寒気はするし、視線だけでここまで嫌な気分にされるとは思わなかったよ。


「さあ、話は終わりだ。食べるのか？　食べないのか？」

「ググッ……」


……ライブベアラーは初めて敗北を味わっていた。全てを牛耳る裏社会の王である自分が負けることなど、あってはならないと思いながら。


（そ、そんなバカな……この私が……！）


……さっきよりも文字通り滝のような汗を流しているライブベアラーは、もう打つ手がないのだろう。これで勝負は決した。


「パ…パスよ……」

「パスだと!?」

「ライブベアラー様!?」


初めてライブベアラーからパスが出たことで、地下料理界の料理人たちも絶望に似た声を上げた。


《ラ、ライブベアラー様、ギブアップにより手番が移ります！》

「僕もパスだ」

《コ、ココ・トリコ・小松・瑞貴チームもパス……。さらに手番が移ります……。まさか、こんなことが……！　二回連続でパスすれば、リ…リタイアとなってしまう――っ!!》

「一度ギブアップしたお前は、もう食べる以外道はない」

（こんな奴らに…こんな奴らに――っ!!）


ドオンッ!!


力いっぱい両方の拳をテーブルに叩きつけると、その部分を中心にテーブルにヒビが入った。