「太陽酒(ｻﾏｰｳｨｽｷｰ)に関しては、こちらが一度完食していた。それをわざとぶつけることで、お前のプライドを刺激したんだ。中身の薄っぺらい人間ほど、プライドは厚いもんだ。お前は必ず飲むと思ったよ」

「うぐぅ……そのあと私が般若パンダと戦う可能性もあったわ……！」

「お前が獲得した十二の食材の中で、捕獲難度の高い猛獣は岩マジロの一種類だけだった。お前が強い猛獣との戦いをめんどくさがっていたのは明らか……般若パンダはパスすると思ったよ」


キュイイ……カチッ……カチッ……。


「全く納得いかない筋書きだわ……。私の食べ合わせより、トリコに食べさせた食材のほうがリスクが高過ぎる……！」


……話をしている間、ライブベアラーは顔を少しうつむけていた。しかしその顔に浮かび上がった神経が脳に向かっている。


（もう少し…もう少しよ……）


……まるで何かを狙っているかのように、ライブベアラーは会話で時間稼ぎを続ける。


「言ったろ、ライブベアラー。『俺にはハズレ食材など一つもない』ってな」

｢｢うん！｣｣


トリコの言葉に私と小松さんは同意するように答えた。たとえどんなハズレ食材でも、私たちがおいしく調理すればトリコもおいしく食べられるんだから！


「ニトロチェリーはこちらも賭けだった。むしろ苦労したのはトリコのほうの食べ合わせ」


ココさんはあの状況の中で、ライブベアラーだけでなくトリコにも食べ合わせをしていた。ゲームの間に私たちに指示を出していたからね。


「ニトロチェリーに挑ませる前に、般若パンダで受けたダメージを回復させることでグルメ細胞を活性化させた」

「般若パンダを生春巻きにしたのは、ビタミンＢ１などの高い栄養素を損なわずに調理するためよ。ビタミンＢ１はそのあと食べたにんにくガニに含まれるアレシンと一緒に採ることで、高い疲労回復が望めるの。もちろん味もおいしく調理してね」

「ニトロチェリーの直前に食べたダイナマイトンボの肉は、起爆食材を中和する作用がある。そして、トロルチーズの強烈な臭(ﾆｵ)い……爆発による有毒な気体から鼻を保護した」

「な～にをわざわざ…くっさいモンを食ってるのかと思ったら……！」

「肝心のニトロチェリーは爆破解除ではなく、うまみを最大限に引き出すことを優先させました！」


般若パンダとの戦いのあと、ココさんから告げられた言葉に私たちはスゴく驚いたしドキドキした。でも……。


『勝つ方法はそれしかない』

『で、できるでしょうか……私たちに』

『大丈夫。瑞貴ちゃんと小松くんなら、きっとできるさ』


ココさんがあそこまで信頼してくれたから、私たちはそれに応えるためにも調理に集中することができたんだ。