「ここグルメカジノの食材で私が食べられないモノは、一つもないの！　どんな特殊な食材であろうとも、またどんな強力な猛獣であろうとも、捕獲方法や調理法は私の頭の中に全部入ってる。わかる？　あなたたちは最初っから負け戦だったのよ！」

「やられた……！　外道め……！」


自分がディーラーになってできる限りのイカサマ防止をしてきたけど、ゲームを受けたことが間違いだったとマッチさんが悔しそうに歯を食いしばっている。


「それでもね、ココ。あなたの冷静な判断力や、トリコの驚愕の食欲、そしてその料理人たちの類稀なる才能……ホントに、敵ながらアッパレだったわよ～！　ジュル……安心していいわ、脳がスッカラカンになっても死ぬわけじゃない。むしろ頭が空っぽのトリコちゃんなんて想像しただけで可愛いしね！」

「フンッ」

「私がコンビになってもいいくらいよ！」


閉じた口からヨダレが溢れ出て来たライブベアラーはトリコを見てそう言った。なんて悪趣味！　そして正真正銘のコンビがいる目の前で言うか、普通。


「記憶とは人生そのもの……記憶を消去するということは、その者の人生を奪うということ！　これが本当の勝利！　これが至福！　これこそが私にとっての最高の快楽なのよ!!　ア～ハッハッハッハッ!!」

「――知ってたさ」

「えっ」


ライブベアラーの笑い声を中断させたのは、静か且つ淡々と告げたココさんの言葉だった。


「お前が、全ての食材を食べられることは最初から知ってたさ」

「あら、そう」

「平気でイカサマをする奴が、自分が食べられない食材をわざわざゲームに入れることはないだろうからな」

「知ってて、勝算があったと？」

「特殊食材の調理法……それも、他人の脳から盗んだ技術だろう。食べ方は記憶しているのに……――自分が今日食べた食材の順番は、記憶にないんだな」

「ん？　食べた、順番？　――ん!?」


さっきまで顔色一つ変えなかったライブベアラーが、ココさんの今の言葉で初めて大きな動揺を見せた。


「食べ方を知っているんだろう。なら、早く食べるがいい。最後の食材を」

「あっ……」

「ただし、人生最後のな」

「まさか……！」


人生最後の食材……ココさんはこれを狙っていたんだ！　このポイズンポテトをライブベアラーが絶対に食べれないように！