天国か地獄か⁉︎ 突入、グルメカジノ!
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あれから駅に行って、地下を進むとある列車に私たちは乗っていた。
「ゴクゴク……プハァ! うっめー! 長い地下鉄道の旅でも、歓楽地が近づいていると思えばウキウキするぜ!」
「そうじゃなくても、結構飲んでるじゃん……」
トリコの隣に座っている私は呆れながらテーブルを見た。酒瓶が合計五本もあってツマミ付き、これをずっと飲んでも酔わないトリコはスゴいよ。ちなみに私や向かいの席に座るココさんと小松さんはソフトドリンクである。
「歓楽地ってトリコさん、とてもそんな楽しそうな場所へ行く列車には見えませんけど……」
「地下500メートルを走る列車・アングラトレイン。ジダル王国の中心地へ向かう唯一の鉄道だよ」
「ジダル王国……」
「そこが私たちの次に向かう場所か……」
地下を走る列車は今鍾乳洞のような所を通ってて、ときどきコウモリが横切るのが見える。それに列車の内部はあちこち痛んで古い感じだし、他の乗客はあんまりカタギと言える人がいないな……。
「ココはジダル王国には俺たちより先に修業で行ったことがあるんだよな」
「そういえば、グルメ馬車でもそんなこと言ってましたね」
「えっ? どんな国なんですか?」
「ジダルは、国際監視対象国――グルメ犯罪が横行する地域だ」
「列車にも小松がビビるようなカタギじゃねぇ客が多いな」
「確かに、列車に乗る前も小松さんをターゲットとして見る奴らが多かったね。まあ、トリコやココさんが睨みを利かせてくれたから無事に乗れたけど」
「ヒェー! トリコさん、ココさん、ありがとうございます!」
「別にいいってことよ」
「ジダルでも、僕らから離れないようにね。もちろん瑞貴ちゃんも」
「はい! というか、私もジダルに行ったことがないので一人はさすがに心細いですし」
……瑞貴に対しても問題は列車に乗る前もあったのだが、様子からしてわかっていないとトリコとココは気づいた。
(わかってはいたが……こいつ、全然気づかなかったんだな。駅でもかなり見惚れていた奴らがいたってのに)
(美食屋としても強い瑞貴ちゃんは一般人なら問題ないとわかってても、あんな品がない目で見るのは許せないからね)
……実は駅で列車を待っている間、数少ない女性客である瑞貴を狙う奴らもいたが、その気配や視線を感じる度にトリコとココが睨んだり威嚇をしていたのだ。そのとき瑞貴は小松と話をしていたので全く気づかなかったのである。
「ウゥ~……でもなんでそんな国に、世界一の賭博場があるんですか?」
「IGOに加盟してないからさ」
「IGOに非加盟って……?」
「グルメ時代でもっとも価値のあるモノはお金や宝石じゃない」
「食材ですよね」
「瑞貴ちゃん、正解だよ。ジダルには正規のルートでは手に入らない闇ルート食材がたくさん流通してるんだ。IGOが定めた法律・グルメ八法に縛られてないからね」
「つまり、無法地帯ですか……」
「大概は毒食材や麻薬食材のような、犯罪に使われるものばかりだけど」
「ゴクゴク……フゥ。確か、毒化したフグ鯨も普通に売ってたっけ」
「「ええっ!?」」
そんなのが普通に売ってるのか……毒食材や麻薬食材でも、中にはその成分を抜いておいしく調理すれば食べられるって聞いたことがあるけど、知識のない人が食べればオダブツってわけね。
「ただ、中には正規ルートでは手に入りにくい高級食材が、闇ルートを通じて出回ることも多いんだ」
「その一つが今回俺らのターゲット――『メテオガーリック』だ」
「メテオ…ガーリック?」
「どんな食材なの?」
「隕石が落ちた土地に稀に生えるという不思議なニンニクだ。そこの土壌の栄養を吸い尽くして育つから、滋養強壮成分がハンパじゃねぇ。食べれば一ヶ月寝ずに動き回れるほどの力が得られるらしい。グルメ八法でも食用制限があるが、何より貴重過ぎて市場では全く見る機会がねぇ食材だ」
「それが裏社会に……」
「ああ。グルメカジノに景品として出品されたらしい」
「今じゃ入手困難な食材は全て、ジダルに集まるとも言われるくらいさ」
「確かに。法律で規制されてなきゃ、カジノでも大手を振っていろんな食材を出品できますもんね。だから『世界一のグルメカジノ』って呼ばれてるのか……」
「でも一龍会長はメテオガーリックがそこに出品するってわかってて修業食材に出したんでしょ? 今までの修業に比べるとずいぶん変わっているね」
「会長(オヤジ)の奴め、ギャンブルが修業になるってのか? まっ、いずれにせよ賭けごとで食材を目指すのは初めてだな」
今回はある意味トリコにとっても未知の領域というわけか……私も賭けごとで食材をゲットすることは未経験だし、トリコがココさんに協力を依頼したのもわかる気がする。