「セレブ御用達のセレ豚……仕入れるの苦労したんだぞ～」

「ああ、最高だ！」

「ちゃんと味わってます！」

「はい～！　口の中でとろける柔らかさ～」

「さっきのマッサージ、その肉にもしっかり仕込んどいたからな」

「マッサージ……って、肉叩きじゃねぇか！」

「僕、肉叩きされていたんですね……」


でも、体も肉もほぐれるほどのツボと力加減をわかっているってことか。


「あむっ……確かにしっかりほぐれています！」

「ああ。パクパクいける！　旅の疲れがグッと回復した感じだぜ！」

「スタミナ満点だよね！　なんだか体の中から力が湧いてくる！」


ふと横を見れば、再び台に乗った店長がフォークとナイフを使ってトリコの髪をカットし始めた。その道具でカットすることもスゴいけど、店長の手際にまた小松さんと共にびっくりさせられる。


「スゴい……！　カットされた髪が料理にかからない……まさに神業だ！」

「それに仕事も早いし、正確……――って！　えっ!?」

「フ～ム……どうだ、トリコ？」

「ん……イッ!?　あっ!?」


なんといつの間にかトリコの髪が緑に染まった挙げ句にボリュームのあるアフロにされていた。食べるのに夢中になってて今まで全然気づかなかったようだ。


「おい！　何やってんだよ店長！」

「こんなカッコいいアフロ、やってもらったことねぇだろ！」

「ねぇよ！　てか、これじゃ外歩けねぇだろ！」

「フフッ、文字通りブロッコリー頭だね！」

「爆笑ですよ、トリコさん！」

「お前もカッコよくしてもらえ！」

「えっ!?　あっ…いや……」

「フッフ～ン」


トリコに言われたからか、小松さんもニヤリと笑ってサングラスが光る店長のターゲットにされた。

小松さんが悲鳴を上げても店長の髪業――じゃない、神業と言われるカットに手も足も出るわけがなく、桃色の髪を後頭部に一つにしてタマネギのようにまとめられた。


「ハァ～……」

「ハッハッハッハッハッ！　どっかで見た髪だと思ったらセツ婆じゃねぇか！　ハハハッ！」

「そういうトリコさんも」

「えっ？」


トリコはなんと白髪のリーゼント頭になっていた。いったいいつの間に店長はトリコの髪をいじったんだろう？　トリコも小松さんに指摘されるまで気づかなかったみたい。


「ああっ！　これじゃあ、セツ婆と次郎のコンビじゃねぇか！」

「アハハハッ！　よかったね、伝説のコンビとおそろいだよ」

｢｢よくねぇよ/よくありませんよ！｣｣

「もっとカッコいいのにしろってかい？　ンフッ」


それから店長は二人の髪をマッシュルームカットにしたり、文字通り頭に花が咲いた髪型にしたり、スミスさんとおそろいの髪型にしたり、太陽のような頭にしたり、挙げ句にはモヒカン頭になっていた。

髪型が変わる度に私は笑い声が噴き出すのを堪えているけど……ヤベ、腹筋が割れそうなくらい面白い。


「ハッハッハッハッ！　アッハッハッ！　もう最高～！」

「っく……っ……」

「瑞貴さん…顔は伏せても肩を震わせているから耐えてるのがバレバレですよ……」

「いっそ店長のように笑われたほうが清々しいわ！」

「じゃあご要望に応えて。――アッハッハッハッ！」

｢｢ホントに笑うな/笑わないでください！｣｣


私はトリコの許可が出たからリミッターが外れたように笑い出した。耐えてた分、目も少し涙目になっているよ！