「センチュリースープも舞獣姫と二人で作ったってニュースで言ってたけど、俺はこまっちゃん一人でもできたと思う。ホテルグルメどころかＩＧＯにも雇われていない、いつ現れるかわからない奴を神聖な厨房に入れるなんて迂闊だよ」

「…………」

「その後も入り浸っているようだけど、あの女に依存する奴が出る前に追い出したほうがいい。他の奴らにあの女が来るのを期待させられたら、一番迷惑がかかるのはこまっちゃんなんだから」

「っ！」

『あっ、料理長。今度はぜひ舞獣姫さんも呼んでくださいね。また会えるのを楽しみにしているんです！』


確かに今日も他のシェフに瑞貴に対することを言われた。今までも何度かあったとはいえ、小松は複雑に思えても迷惑など考えたことはなかったし、何より大竹がそんなことを言うなんて信じられなかった。


（竹ちゃん、瑞貴さんといったい何が……？）

「オーナー、取材の方がお見えです」

「わかった、今行く」


オトギの城の従業員に呼ばれ、大竹は椅子から立ち上がった。


「悪いな、これから雑誌の取材があるんだ。ランキングに入ると忙しくてねぇ」

「あっ、うん……」

「あっ、そうだ。こまっちゃん、せっかくだからうちの料理食べていきなよ。何か参考になるかもよ」

「えっ」


オトギの城を目指して、美食會のＧＴロボが動いているなど――このとき誰も知る由はなかった。



☆☆☆☆☆


「おっ！　見えてきたぜ！」


……夜通しトリコを乗せたテリーが駆け抜けて行く先にあるのは、懐かしのＩＧＯ第８ビオトープだ。事前に連絡を入れているので、門番の一人・マッハーが双眼鏡でトリコとテリーの姿を確認した。


「見えたぞ、トリコ様だ！」

「トリコ様がいらっしゃった！」

「速いぞ！」

「ゲートを開けろ！　また壊されたらたまらん！」


以前、虹の実の捕獲のためにトリコは門が開くのを待つのが面倒で、釘パンチを使って壁をぶち壊したのだ。もう一人の番人が通信部に連絡を入れるが……。


「そのままで構わねぇよ！」


トリコがそう叫ぶとテリーはスピードを緩めず、門の前で高く飛ぶ。そして扉の中間あたりに一度足を付け、さらに扉と壁の段差を利用して交互に飛んで行くとついに壁を越えて中に入った。


《５キロ圏内に猛獣ナシ！　これよりゲートを開きます！》

「い、いや……もういい」

《えっ？》


通信部より連絡が入ったが、もうトリコもテリーもビオトープの中に入っている。