『っつ……オッサン！』

『ボー……』

『ハアッ!?』


またしても愚衛門はボーッとした表情になってしまった。サニーはまるでさっきまでの感動を返せというように叫ぶ。


『おいおい！　いいこと言ったと思ったら――……ん!?』

『さっそく来たか』


三途の道に広がる白い霧に紛れて、グルメ界から新たな猛獣がやって来たのだった。



☆☆☆☆☆


私たちはサニーから三途の道で起こったこと、そしてどうやって直観を鍛えて来たのかを教えてもらっている。


「愚衛門は言ってた。『肝心なのは信じること』……」

「信じる？」

「ああ。俺たちはすでに持ってる小さな直観をまずは信じる。直観が正しいという積み重ねが体からムダな力みと思考を削ぎ落としていく……。それが、より高いパフォーマンスを生む肉体と精神を作り上げるってわけだ」


そう言えば私も修業や技を発動させるとき、常に考えてばっかりで力が入っていることが多い。無意識ということがそこまでの意味を持っているなんて思わなかった……。


「いつしか俺は、触覚をなんのストレスも感じずに動かせるようになったし、ムダな考えが消え、リラックスした途端に技のクオリティも上がった。今では30万本全てを50メートル近くまで操れるぞ」

「滝の水ですら、その力の流れを直観が教えてくれるってわけか」

「フッ」

「滝の流れまでわかるって……？」

「さっきトリコが言ったように滝は一定ではないし、縦横無尽に飛んだり威力も違っている。それを直観が教えてくれるってわけだよ」

「そんなことできるんですか!?」

「できるから、こうしてサニーのおかげで私たちは滝の中にいるんだよ」

「さすがだぜ、サニー」

「フッ、まあな」


私たちと再会するまで直観を身に付けたのは、サニーがグルメ界の猛獣と何度も戦ってきたという経験だろう。こんなに強くなっている姿を見ると惚れ惚れしてしまう。


「んじゃその直観、俺も信じよう」

「ハァ？」


するとトリコは目を閉じてリラックスした状態になると、体の力が集まるかのように筋肉が増幅し始めた。


「ハアアァァアアア……！　18…プラス18……！」

「お前！」

「まさか、トリコ！」


トリコが釘パンチやアイスピック釘パンチを撃つのはいつも片腕……それを両腕に溜めている!?


「くらえ！　36連…ツイン釘パンチ!!」