『ボー……』

『またボーッとしている……！　ナメんな……オッサン！』


ついにサニーは自身のグルメ細胞のヘアモンスターを発動させた。


『なんだこれ？』

『髪(ﾍｱ)パンチ!!』


ドゴンッ！


『なっ!?』


ちゃんと狙ったはずなのに、愚衛門は紙一重ほど後退しただけで、目を閉じて片手を立ててまるで祈るような体制だ。


『うおおぉぉおおお!!』


次々とサニーは髪(ﾍｱ)パンチを打っていくが、愚衛門はボーッとしたまま全て紙一重でよけている。


『このオッサン、本当に何も考えてねーのか!?　ただ、ボーッと俺を眺めているだけに見える！　クウッ！』


距離を縮めたサニーは地中から髪(ﾍｱ)パンチを出すも、それすらも愚衛門によけられてしまった。


『なっ!?』

『…………』


トンッ！


『ぐあっ！』


一瞬の隙を突かれたサニーは愚衛門の刀の柄が体に当たった。それも力強く両手と両膝を地に付けてしまうほどである。


『な…何故地中からの攻撃がわかった……!?』

『ん？』

『あんた今…明らかに攻撃が来る前によけたろ……!?　何故……何も考えずにそんなことができる!?』

『ん～……勘かな』

『勘!?』


あんなにスゴいことをしたのに、それを『勘』で片づける愚衛門が、サニーには納得がいかなかった。


『嘘付け！　ンなわけあるか！　勘ってなんだそれ!?』

『まっ、直観って奴だな』

『直観!?』

『ああ。俺の動きは全て直観によるものだ。相手と対峙したとき、瞬間的に最善の手が頭に浮かぶ』

『ハァ？』

『それ以外のことは全く考えない……――ムダだからな』

『な、なんだと!?』


戦いの間では、次の手や相手が来たらどう動くかと考えるのは普通のことだ……そう思った。しかしそれを愚衛門は『ムダ』と片付けている。