『何ー!?　こいつはグルメ界の猛獣！　おい、オッサン！　来やがったぞ！　グルメ界からドッスンだ！』

『…………』

『マジか、こいつ!?　ボーッとしてやがる！』

『ボー……』

『おーい！　オッサン！　どこ見てんだー!?』


サニーが手を顔の前に振っても愚衛門は反応せず、むしろボーッとし続けていた。その間にもヘラクレスドラゴンは近づいている。


『お前、コラッ！』

『ボー……』

『クッ…あー……！　オッサンよぉ……！』


ここまで呼びかけても愚衛門は動かない。こうなったら自分が何とかするしかないと思ったのか、サニーはヘラクレスドラゴンと対峙する。


『髪(ﾍｱ)ロック!!』


お得意の髪(ﾍｱ)ロックで巻きつき、ヘラクレスドラゴンの動きを止めた。


『やったか……？』


ブチッ！


『あっ！　止まらねぇ！』

〈クアアアッ!!〉

『やはり、グルメ界の奴はケタ違いだ！』


全ての触覚をぶち切られ、ヘラクレスドラゴンが襲い掛かってくる。どう対処するかとサニーが思考を巡らせていると――。


キンッ！


『なっ!?』


いつの間にか背後にいた愚衛門がサニーとヘラクレスドラゴンの間に現れ、これまたいつの間にか抜いた剣を鞘に納めると、ヘラクレスドラゴンは真っ二つになった。


（なんだ!?　ボーッとしたままじゃねーか！　何も考えずにどうやって!?）


ずっとボーッとしたままなのに、確実にヘラクレスドラゴンを仕留めた愚衛門。サニーはいろんな意味で驚いていた。



☆☆☆☆☆


ずっと押し返していた激流乱舞の竜巻が、とうとう上から来る滝に押し負けてしまって粉砕される。


「ヤバッ！　ついに激流乱舞が負けた！」

「ヒィー！」

「おい、サニー！　何笑ってんだよ、こんなときに！」

「ん？　いやな、破壊力試すのが楽しみでな」

「楽しみ？」

「俺のフライ返し……もともと相手の攻撃を同じ力で返す技だが、進化したフライ返しは相手の力を何倍にもして返す」

｢｢｢？｣｣｣

「さらに返す力は触覚に比例する。さっきの奴にはたった二本で充分だったが、さすがにこの滝には５万本用意しよう」

「お前が最初から余裕ぶってた理由はそれか」

「別に。余裕なんかこいてねーし？　ただなーんも考えてねーだけさ」

｢｢ハッ？｣｣


サニーがずっと笑っていたのは余裕だからと私とトリコは思っていたけど、実際のサニーはなんにも考えてないという。いったいどういうこと？