そしてニワトラは家から少し離れた葉を生い茂る木の下に着地する。木の高さは普通だろうにニワトラが隣にいると小さく見えるのは、それほどニワトラが大きいということだろう。


「デカッ……」

「ってことは、あの土地が巨万のひと坪なのね」

〈プギャオー！〉


小松さんと私が感心する中、ニワトラの姿を見て家の前に居る男たちがニヤリと笑っていた。


「フンッ、あのじいさんなど、もうアテにしねぇ。ニワトラをとっ捕まえちまえば億万長者だ！」

「……トリコ」

「ああ」


剣や銃やマシンガンなどの武器を取り出し、少しずつニワトラに近づいて行く。さっきまで大空を飛んでいたニワトラは吠えるだけで土地を守るようにその場を動かない。

私と顔を見合わせて頷いたトリコはジュラルミンケースを置き、私たちはその場へと向かって行く。このくらいの相手なら薙刀に変形させるほどでもないな。


〈プギャオォォオオオ!!〉

｢｢｢｢｢ウウッ！｣｣｣｣｣


警告するように吠えるニワトラに男たちは怯んで止まったが、それもほんの少しだけだ。


「生け捕りにしてやるぜ！」

「フライングフォーク!!」

「雷光弾!!」


キンッ！　バチバチバチ！


トリコがフライングフォークで先頭の男の刀を落とし、私が雷光弾で男たちの前へ落とすと走る稲妻が境界線を作った。そして男たちは発信源である私たちに顔を向けた。


「四天王トリコ！」

「捕獲なんて考えねぇほうがいい」

「雌鶏のニワトラは外敵のストレスを受けると産卵に響くからね」


威嚇ほどとはいえ雷光弾を撃っても体の負担がなかった。これまでの旅も相まって実力が少しずつついたっていう証拠だろう。


ガラッ。


「巣に戻りなさい、ミーコや」

〈プギャー！〉


家から出て来たのは土地の主のよっちさんだろう。しかしニワトラがまるで返事をするように鳴くと、また大空へ飛び立って行った。


「中で休んでってもいいぞ」


よっちさんは確かに私たちを見てそう言った。交渉前に門前払いをされるってことだけは免れたみたいだね。


「お言葉に甘えようか」

「だな。行くぞ、小松」

「ああっ、はい！」


トリコが再びジュラルミンケースを肩に担ぎ、私と小松さんもあとを追う。家に入る前に私は男たちに睨みを利かせると、渋々ながらも去って行った。あの土地で待ち伏せされても困るしね。