隠された真実! 初代メルク現る!
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「いやいやいやいやいや、ちょっと! さっきは何一つ聞き取れなかったって! もっかい最初っから! したであろう自己紹介から頼む! てかそれなんだ!? 声デカくなる石!? あとこの猛獣はなんなんだ!? 訊きてーこと満載!」
目的の初代メルクであろう男に会えたと思いきや、トリコには不思議なことがあり過ぎだった。
☆☆☆☆☆
温泉の大騒ぎのあと、メルクさんから事情を聞き終えた頃にはもう朝日が昇っていた。
「ええっ!? メルクさん、そんな……!」
しかし私たちにとってこの話は衝撃的過ぎて、小松さんは驚いて声を上げる中、メルクさんは小松さんが夜食用に作ったスープをひと口飲んだ。
「ハァ……おいしい! さすが小松シェフだね、とても温まるよ」
「に、二代目じゃないって……?」
「どういうことなの……?」
「……正確には弟子にさせてもらっていたかどうかも、定かではないんだ」
「「ええっ!?」」
「俺は、人里離れた山奥で師匠に拾われたんだ……」
まだ赤ちゃんだったメルクさんが山奥で泣いていたとき、見つけてくれたのが初代メルクさんだったらしい。
「鬼のメルクと恐れられていた師匠が、赤ん坊を引き取り育てるなんて世間では誰も信じなかったらしいけど……でも、俺だけは感じていたんだ。世界でただ一人……鬼のメルクの愛情を」
「初代メルクさんが、親代わりってわけですか……」
「その内俺は、師匠の仕事に興味を持ち始めた。自然だよね? 子供が親の仕事に興味を持つのは。ただ師匠は、決して俺を作業場に入れてはくれなかった。だから、こっそり覗いてたよ。一度黙って作業場に入ったとき――事故は起きた」
……幼いメルクは興味本位で棚に並べてある包丁に手を伸ばしたとき、棚が動いたことで一番上に並べてあった包丁が二本も床に落ちてしまった。落ちた衝撃とはいえ世界一の研ぎ師が作った包丁だ。風圧でメルクの頬に今でも残る十字の傷ができてしまったのだ。
まさか入って来たと思ってなかった初代メルクは慌てて駆け寄り、泣く娘を抱きしめた。
「あの事故は、今思えばよかったと思っている。幼い頃に刃物の怖さと――美しさを知ることができて……」
……怖い思いをしたのにも関わらず、笑顔で包丁を眺める娘を見て初代メルクは何かを感じ取ったらしい。
「それからだ。師匠は少しずつ仕事を俺に見せてくれるようになった。力強くて凄まじい迫力の師匠の研ぎに……俺はどんどん引き込まれていったんだ」
「それで、メルクさんも研ぎ師の道に……」
「立派な師弟関係じゃないですか!」
「いや。師匠は無口だし、何一つ教えてくれなかった。仕事は見て盗むしかなかったんだ。師匠の元には毎年百人近い弟子入り志願者がやって来たけど……誰一人、三日と保(モ)たなかったよ」
「み、三日!?」
「材料の調達からすべて一人でこなす師匠の厳しさに、誰も付いていけなかったのさ」
「捕獲レベル55のワーナーシャークも捕獲するぐらいだからね……」
メルクさんは昔を思い出して遠くを眺めているような目が、両手を軽く組むと真剣な顔になる。
目的の初代メルクであろう男に会えたと思いきや、トリコには不思議なことがあり過ぎだった。
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温泉の大騒ぎのあと、メルクさんから事情を聞き終えた頃にはもう朝日が昇っていた。
「ええっ!? メルクさん、そんな……!」
しかし私たちにとってこの話は衝撃的過ぎて、小松さんは驚いて声を上げる中、メルクさんは小松さんが夜食用に作ったスープをひと口飲んだ。
「ハァ……おいしい! さすが小松シェフだね、とても温まるよ」
「に、二代目じゃないって……?」
「どういうことなの……?」
「……正確には弟子にさせてもらっていたかどうかも、定かではないんだ」
「「ええっ!?」」
「俺は、人里離れた山奥で師匠に拾われたんだ……」
まだ赤ちゃんだったメルクさんが山奥で泣いていたとき、見つけてくれたのが初代メルクさんだったらしい。
「鬼のメルクと恐れられていた師匠が、赤ん坊を引き取り育てるなんて世間では誰も信じなかったらしいけど……でも、俺だけは感じていたんだ。世界でただ一人……鬼のメルクの愛情を」
「初代メルクさんが、親代わりってわけですか……」
「その内俺は、師匠の仕事に興味を持ち始めた。自然だよね? 子供が親の仕事に興味を持つのは。ただ師匠は、決して俺を作業場に入れてはくれなかった。だから、こっそり覗いてたよ。一度黙って作業場に入ったとき――事故は起きた」
……幼いメルクは興味本位で棚に並べてある包丁に手を伸ばしたとき、棚が動いたことで一番上に並べてあった包丁が二本も床に落ちてしまった。落ちた衝撃とはいえ世界一の研ぎ師が作った包丁だ。風圧でメルクの頬に今でも残る十字の傷ができてしまったのだ。
まさか入って来たと思ってなかった初代メルクは慌てて駆け寄り、泣く娘を抱きしめた。
「あの事故は、今思えばよかったと思っている。幼い頃に刃物の怖さと――美しさを知ることができて……」
……怖い思いをしたのにも関わらず、笑顔で包丁を眺める娘を見て初代メルクは何かを感じ取ったらしい。
「それからだ。師匠は少しずつ仕事を俺に見せてくれるようになった。力強くて凄まじい迫力の師匠の研ぎに……俺はどんどん引き込まれていったんだ」
「それで、メルクさんも研ぎ師の道に……」
「立派な師弟関係じゃないですか!」
「いや。師匠は無口だし、何一つ教えてくれなかった。仕事は見て盗むしかなかったんだ。師匠の元には毎年百人近い弟子入り志願者がやって来たけど……誰一人、三日と保(モ)たなかったよ」
「み、三日!?」
「材料の調達からすべて一人でこなす師匠の厳しさに、誰も付いていけなかったのさ」
「捕獲レベル55のワーナーシャークも捕獲するぐらいだからね……」
メルクさんは昔を思い出して遠くを眺めているような目が、両手を軽く組むと真剣な顔になる。