超重力! ヘビーホールを攻略せよ!
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……段階層が終わって、壁と壁の間に石の端が何本もある石柱層に着いたトリコ。しかし下に行くほど重力が強くなってきた。
「ぐっ…っつ……そう、これだ! まだグルメ界ほどじゃねぇが、体が重くなってきた! かれこれ1万メートルくらいは降りてきたか…思った以上に下りは骨が折れる。実際同じ距離を登るより大変かもしれねぇ……」
トリコが顔を向けたのは自分が乗っている石柱の端の壁にある穴。この穴は層にいくつもあった。
「それに、明らかに獣の匂が漂う、この無数の穴。何か……来る! おもしれぇ……グルメ界で訳もわからずパニックになってたが、今は違うぜ! 鬼だろうが蛇だろうが、どっからでもかかってきやがれ!」
トリコが指を鳴らしながらそう宣言したとき、穴の奥から反響する低い声と赤い目が二つ現れた。だんだん近づくほど目は回ったり交互になったりと不思議な動きをしたが、ハッキリ姿を現したときに正体がわかった。
一つの体に二つの首を持つ、捕獲レベル44の哺乳獣類・バルバモスだ。
〈〈シャアァァアアアア!!〉〉
「!」
すると目の前のバルバモスだけでなく、多数の穴からもバルバモスが現れて群れとなってきた。
「本気で俺を食いに来てるな? ――っ!」
全てのバルバモスの狙いが自分だとわかったが、壁を張って来たバルバモスが二つの口を左右から同時に襲い掛かる。トリコはジャンプしてよけた……と思ったが、左肩の服の先端が一部だけ千切られた。
「クッ! かわしたつもりだったが……!」
トリコは空中でバランスを取って着地すると、いつもより衝撃が強いことで改めて気づいた。
「そうか。重力が強い分、体の反応がいつもより遅れているのか!」
〈〈シャアァァアアア!〉〉
トリコをめがけて上から落ちて来たバルバモス。落ちた衝撃で砂煙が舞ったがトリコは攻撃を受けずよけたのだ。
「一瞬早く動かねぇと! いつもより前倒しに体に命令する!」
よけた先で乗った石柱には、バルバモスが強い重力があると思えないスピードで走って来た。
〈〈キシャア!〉〉
「単純なスピードは、ここで生活するこの猛獣のほうが十数倍俺を上回る。相手の動きを目視してからじゃ遅い。ある程度、軌道を予測して先に動く! 相手の形…筋肉の伸縮…関節の動き…呼吸……あらゆる情報から次の動きを予測する! 右か左か、上か下か!」
全神経を集中させてトリコは迫りくるバルバモスの動きを予測していた。そしてあと一歩で来るとき――。
「右だ!」
なんとトリコは完璧によけて次の石柱に乗ったのだ。それかれも次々とバルバモスは襲いかかるが、トリコは相手の動きを予測して空中で体の動きを回転させてよけた。
「いいぞ、だいぶ慣れてきた! 体感的に今俺の体重は約二倍! 460キロってとこか! グルメ界に比べれば、まだここは大したこと――……ん?」
笑みを浮かべるトリコだが、なんとバルバモスは群れで一斉に襲い掛かって来たのだ。バラバラがだめなら一度にというだろう。一匹の動きを見極めるだけで精一杯のため、一斉だと今のトリコにはよけられない。
「こりゃ回避できねぇ……数で隙を埋めてきたか! ……フッ、おもしれぇ! グルメ界でコテンパンにやられるまでは、あまり意識していなかった……――『守る』ということを!」
トリコの脳裏に浮かぶのはメルクの家の前で、瑞貴が自分と小松の前に出した守護壁――防御の技術だ。それを思い出したトリコは左手を見て指を曲げる。
「強敵と戦うときの防御の重要性……試してみるか! 攻撃に使っていたフォークを、守りに使う!」
左手に力を貯めたトリコはリストバンドに亀裂が入るほど筋肉を膨らませた。片膝を地に着くと、左手を下から半円を描くように自分を包み、さらに左から右へ横の攻撃も防げるようにした。
「フォークシールド!!」
ドカンッ! ドカンッ!
ぶつかる音が聞こえて再び砂煙が上がるが、フォークシールドのおかげでトリコは無事だ。バルバモスはフォークを噛むだけで中に入れない。
「フゥ……よーし、なんとか防げたぞ。ただ、こんだけデカくて頑強なフォークを繰り出すのは、相当パワーを要するな。そう連発はできねぇし、当然まだ近くしか守れねぇか。――釘パンチ!!」
なんとトリコは自分が乗っている石柱を足元から壊したのだ。その衝撃でバルバモスは吹っ飛び、トリコ自身も一気に最下層に向けて落下する。
「待ってろ、初代メルク! 今行くぜ!」