超重力! ヘビーホールを攻略せよ!
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……ヘビーホールの段階層をトリコは飛び回りながら降りていた。グルメ界に比べればまだ重力の抵抗はないが、それでも地上とは違うと感じる。
「フゥ……だいぶ降りたな。だが、初代メルクのいる最下層……まだまだ先か。にしても、小松も瑞貴も……」
――何故トリコは二人と別行動している理由は数時間前にさかのぼる。出発する前、トリコは当然二人を連れて行こうとしたのだが……。
『え~……トリコさん一人で行ってくださいよ~。そんな危険な場所』
『私も今回はパスしていいかな?』
『なんでだよ!? なんのために三人で来たと思ってるんだ!?』
『でも~……』
『重力の修業なら、トリコが一番必要でしょ?』
『言っただろ、お前らの力が必要だって! 三人で攻略しねぇと意味ねぇだろうが』
『どう思います? メルクさん』
『ん~……いくらなんでも瑞貴シェフはともかく、小松シェフには危険が大き過ぎるかと……』
『でしょ! ですよね!?』
メルクも賛同してくれたことにより小松は声を上げると、トリコは瑞貴にターゲットを絞った。
『じゃあ瑞貴、お前だけでも来い』
『わ、私はほら、重力なんて環境適応能力があるから平気だもん。トリコになんのヒントも与えられないよ』
『……お前らまさか、メルクの仕事っぷりが見たいから残りてぇってだけじゃ?』
『そ、そそ、そんなこと…そんなこと……ハハッ』
『さ~て、どうだろうね~』
半目のトリコの視線を受けて、小松は青ざめながらあとずさりし、瑞貴は顔を思いっきり逸らした。これはテコでも動かないだろうとトリコは悟って目を閉じる。
『なるほど……わかった。じゃ、お前の包丁一本俺に貸しな。瑞貴も薙刀か包丁な』
『えっ? 包丁を?』
『私は薙刀か、包丁……?』
『そうだ。さっきの小さい奴があるだろ? 瑞貴も使っていたし、お前らの命とも言える包丁を一緒に連れて行く』
『ど、どうして? トリコ一人で行くのに使わないでしょ?』
『担保だな。俺に何かあったときのために、命並に大切なモノを預からせてもらうぜ』
『えー!? なんですかーそれ!』
『そんな殺生な!』
『嘘だよ。へへっ、コンビに仲間じゃねぇか。どこへ行くにも心はいつも一緒ってことだ』
物には持ち主の意思が宿ることもあるし、命と同等なら分身も同然。だからトリコは小松にもう一本の包丁を、瑞貴には料理とハントのそれぞれの相棒である包丁か薙刀のどちらかを持って行くのだ。
『わかった。でも、私が貸すのは包丁ね。この薙刀は四神の力が宿っているから、私のそばを遠く離れると四神に食われる恐れがあるし。でも包丁とはいえ、私の相棒なので……――返しに来なかったら、転生するまで呪うからね』
『サラリと恐ろしいことを言うな……。まっ、四神(アイツラ)に会っちまったらやりかねると素直に思える。それに――今回は分業がいい。そのことが今わかった。瑞貴、小松、お前らにはもっと重要な仕事がある』
『重要な……?』
『仕事……?』
トリコの意図がわからなくて瑞貴と小松はポカンとしていた。
――そうやってトリコは包丁を二本持ってヘビーホールにやって来たのだ。トリコは布で巻かれた瑞貴と小松の包丁を見て呟く。
「しっかし……いつもなら珍しい食材をぜひ現地で見たいって飛び着いて来んのに、二人共よほどメルクの仕事に興味があるんだな。まっ、メルクにとってもそれがいいだろう。今回俺の相棒はこの包丁たちだな。――それに瑞貴も、『返しに来い』って言っても、本当の意味は『絶対帰って来い』だもんな。可愛い奴」
トリコはまだ続く段階層を見る。この先は強い猛獣がいることはメルクから聞いているのだ。
「さーて、このヘビーホール……観察力のある小松ならどこに注意し、環境適応能力があっても危険を察知する瑞貴がどう進むか。食材の声を聞くあいつらの見る景色は当然俺とは違うはず。弱い立場の者が注意深く進むのは当然だ。瑞貴は強いが警戒を怠らないんだ。常に小松と瑞貴がいるつもりで進むか」
包丁しまった胸ポケットに手をポンッと当て、トリコは再び一気に降りたが……。
「ぐっ!?」
いつも通り着地したはずなのに、フラついてしまったのだ。重力の影響がついに現れてきた。