衝撃! 折れた包丁と研ぎ師メルク!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
☆☆☆☆☆
翌日。さっそく私たちはメルクマウンテンに向かって、山道を歩いているんだけど……。
「うわ~! どうしよ~! あ~~!」
「うるせぇぞ! ワクワクし過ぎだ!」
「まあまあ、今回ばかしは許してやって。私だって会えるのが楽しみなんだもん」
「お前のように落ち着いてたら、そこまで言わねぇよ」
「だって~だって~だって~~っ!! 世界最高の研ぎ師に会えるんですよ!? 僕ら料理人にとってはカリスマ中のカリスマですから! どんな繊細な技が見られるのか、今からワクワクですよー!」
キラキラと目を輝かせる小松さん。節乃さんのときもそうだったけど、彼流に言えば『テンションギガギガ』ってとこだね。
「俺も初めて会うが、なかなか豪快な男らしいぜ」
「えっ?」
「うん。確かメルクさんは――作った包丁の切れ味を試すため大型の猛獣をぶった切るって」
「しかも天然の砥石を採掘するために超危険区域に出入りしたりして、本人の体は自分の包丁で切り傷だらけ」
「えっ……!?」
「「という、噂だ」」
「えー! 噂ですか、今の!?」
調べてみたけどそれだけしか出てこなかった。それにチラッと原作の記憶があるけど……そういう人だったっけ? 違う感じも覚えているんだけど……。
「メルク包丁は有名だが、メルク本人は全く人前に出ねぇから奴に関してのいろんな噂が独り歩きしてるんだろう」
「正体不明のカリスマ研ぎ師、ってところですね……」
「仕事を受けるのもほとんど手紙だし、人嫌いって噂もあるよ。もしかして人里離れたこんな山奥に住んでるのも、そのせいかもしれないね」
「し、仕事一筋で、きっと絵に描いたような職人カタギなんですよ……」
なんか小松さん、だんだん顔が青ざめてるけど大丈夫? 思った人と違い過ぎたのかな?
「とにかく、そのメルク本人に会わねぇとなんにも始まらねぇ。メルクの星屑のことも、新しい包丁を作ってもらうこともな」
「そのためには、まずはここを登らないとね」
「えっ? え――っ!! なんですか――っ!? この果てしない階段は――っ!!」
私たちの前にあるのは山道が加工された階段だ。段差は小松さんの身長より高く、しかも蛇のように左右に曲がってるし頂上もここからじゃ見えない。
「これがメルクマウンテンだ。この階段を作ったのがメルク本人だということで、その名が付いたらしい」
「どんだけ高い山なんだ!? 頂上が全く見えない! てか、何段あるんだ!? この階段!」
「標高4千メートル、頂上までは二万段くらいあるんじゃない?」
「二万段!? そんな階段登ったことないですよー!」
「ベジタブルスカイに比べりゃ楽勝だろ。さっ、行くぞ!」
「何かない限り私も力を使わないから、小松さんも自力で登ろうね」
「えっ!? あ~~」
ツッコミまくる気持ちはわかるけど、目の前の現実は変わらないので登るしかない。それに小松さんもグルメ界に行くなら体力も付けておかないとね。
――あれから数十分経ってそれぞれの登るペースがわかり、トリコ、私、小松さんの順番になった。と言っても小松さんは私たちよりだいぶ離れている。
「ハァ…ハァ……トリコさ~ん! 瑞貴さ~ん! ちょっと休憩しましょうよ~!」
「おい! まだ登り始めて一時間も経ってねぇぞ!?」
「なんか一段一段がデカ過ぎません!? この階段!」
「ハハッ。ひょっとしたらメルクさんにピッタリなサイズかもな。メルクってスゲー大男なんじゃね?」
「階段を作った本人なら、確かに自分に合わせて作るだろうね」
「こんなサイズの人間、ノッキングマスター次郎さん以外見たことありませんよ!」
「とにかく行くぞ、瑞貴! 小松! 先はまだまだ長い!」
「はーい。よっと」
「あっ、はい……」
ヒョイヒョイと片足をそれぞれ一段ずつ登って行くトリコに言われてもなぁ。もともと身長があるからかもしれないけど。私は一段飛んでまた一段と何度もジャンプしないと登れない。