「キッカケは？」

「ああ、いや……」

「シェフからお願いしたんですか？」

「あの……」

「二人の夢は？」


答える間もなく次々と来る質問に小松は戸惑いながら、少しカメラから視線を外してしまう。


「えっ…ああ…いや…そんな……。インタビューだなんて……。でも、当面の目標は力を付けて――いつか、トリコさんと瑞貴さんとグルメ界へ行くんです！」

「グ、グルメ界!?」

〈ク、クルポポッ!?〉


真っ直ぐな目で小松が答えると、予想もしていない答えにティナは驚いて思わず椅子から立ち上がった。


「はい……！」

「グルメ界ってマジで!?　ちょーてんこ盛りヤバい所じゃない！　知ってるでしょ!?　昔の有名な記者会見！」


――真実のグルメ界記者会見。遥か昔、食の楽園と呼ばれたグルメ界。でも、あるジャーナリストがその定説を覆した、その人物の名はハッチ。彼は全身を包帯で巻かれながらも真実を述べた。


『グルメ界はユートピアなどではない……ただの地獄だ！』


ハッキリと述べた第一声から、集まった記者たちを驚かせることになった。


『グルメ界の荒れる海、そして荒れる空！　そのデタラメな天候は気象予報士の資格と航海技術の知識を持つ私でも、到底理解できぬものだった……。何より――そこに住む凶暴な猛獣たち！　恐らく、我々がどんな兵器を用いたとしても、全く歯が立たんだろう……』

『ど、どうやって帰還を？』

『本当に運がよかった。偶然……いや、奇跡的に一命を取り留めることができた』


――その証言にの信憑性を裏付けたのは、彼自身がもともと一龍の美食屋だったこと、それまでにグルメ界から帰還した人が彼以外に一人もいなかったことだ。


「天国みたいにてんこ盛り魅力的な所だから住み着いたと思われていたけど、みんな死んだから帰って来られなかった……。その記者会見以降、グルメ界の概念が一変したわよね……」


すぐにＩＧＯは各地に関所を設けて、人間界とグルメ界を隔離した。そしてグルメ界全域を危険区域とした。グルメ界は今や新たな食材の宝庫であると同時に、二度と戻って来られない――地獄の入口。


「正直、瑞貴がグルメ界から来たって言う話を聞いたときは驚いたわ。でも異世界から来て、環境適応能力とグルメ細胞があるなら攻略できてもおかしくないと思って。だけどトリコも小松くんも、そんな能力はないでしょ？」

「でも、トリコさんと瑞貴さんと一緒なら大丈夫ですよ！　きっと……！」