「ありがとう……！」


私は笑顔でお礼を言うと二人も笑い返してくれた。


「あっ。瑞貴さん、トリコさん、このオゾン草の葉！」

「どうしたの？」

「こうやって見るとハート型ですね～」

「だからなんだよ、気持ち悪いこと言うな！」


上から見たオゾン草に小松さんはそう言った。私は可愛いと思うんだけどな～。


「そういえばトリコ、一龍会長の言うようにフルコースのサラダに入れるの？」

「まあ、オゾン草は確かにうまかったが……俺のフルコースには入れらんねぇな。保留だ」

「えー!?　そうなんですか!?　入れましょうよー！　僕たちのコンビ結成記念食材なんですから！」

「ダメだ。確かに俺の細胞をも進化させたが、この食材はお前らを好いている」

｢｢えっ？｣｣


ちょっと待って、『お前を』なら小松さんだってわかるけど、『お前ら』ってことは私も入ってるってこと？


「捕獲しながら気づいたんだ。オゾン草はお前らに歩み寄ってきた食材だ」

「そっか……。だからオゾン草を発見したとき、僕らのときだけ葉が開いていたんだ」

「逆にトリコと一緒に来たときは固く閉ざされていて、こうして葉を剥くハメになったんだね」

「それに『二人同時食い』の食材なんて、フルコースにあっても困るだろ？」

｢｢確かに｣｣


逆に食べ辛いわ。カップルとか仲間とかならいいかもしれないけど、そうでもない相手と食べたっておいしさが半減する。


「まっ、とにかく。俺ら三人ならきっと世界のどこか他にある、最高の食材に出会えるはずさ」

「はい！　そうですね！」

「絶対に見つけよう！」

「僕はただ調理をするだけです。トリコさんが選んだ食材を、よりおいしく食べられるように！」

「よく言った、小松！」

「じゃあ、私は？」

「瑞貴は俺と食材を捕獲して」

「僕と一緒に調理するんです！」

「まさに二足の草鞋……まっ、どっちもやりがいがあるからいいけどね！」


ちょっと違うけどトリコは美食屋同士で、小松さんは料理人同士で、コンビを組んだ気分だね。


「ねぇ、私もオゾン草を食べたいんだけど……どっちか一緒に食べてくれない？」

｢｢！｣｣

「あれ？」


私は全く試食していなかったから頼んだんだけど、二人は突然固まった。どうした？　また私、変なこと言った？


「……小松、ここは俺が瑞貴と食べる」

「……嫌です。オゾン草は僕と瑞貴さんに好いている食材ですから」

「そこは譲れよ！　コンビとして！」

「嫌です！　トリコさんこそ、コンビとして譲ってください！」


何故か二人は言い争いを始めてしまった。そんなにもう一回オゾン草を食べたかったの？


((瑞貴/さんと顔を近づけて一緒に食べるなんて、こんな機会ない/です！))


……二人がこんなことを思っているなど、自分への恋愛に疎い瑞貴が気づくはずもなかった。


〈キシャー！〉


ドンッ!!


｢｢｢えっ？｣｣｣


突然何かが着地した音に私たちは振り向くと……黒の毛並みに赤いトサカをしたアリクイみたいな奴が現れた。


「ＧＴロボ……？　いや！」

「こいつは……！」


トリコも気づいたみたい。見た目はＧＴロボだけど、こいつからは違う感覚がするから……！