天空の野菜畑・ベジタブルスカイ!
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カリッ、パリッ。
「「!」」
「なんですか!? この音は……! もぎたてのリンゴをかじったような食感ですよ……!?」
「サンチュの爽やかな甘みが肉のうまみをより引き立てる! っていうより肉の脂がサンチュのサッパリ感を引き立てている……!」
「焼肉ヘルスィ~の主役は肉じゃねぇ。このヘルシーな野菜たちなのさ」
だから『ヘルスィ~』って名前なんだね。このおいしさだと肉より有名だって納得いくよ!
「ベーコンの葉、おいしそ~!」
「生でもいいが、焼けばさらにうまみが増すんだ! あむっ」
トリコの真似をするように、私たちもベーコンの葉を焼いてみた。鉄板はもう熱いし少しでも焼き過ぎると焦げるから、裏表と引っくり返してちょうどいい焼き加減になるとひと口食べる。
「新鮮でジューシー……!」
「ベーコンの肉と野菜の葉を同時に味わえるなんて、贅沢だね~」
それからはタマネギ、カボチャイモ、マツタケノコ、甘キャベツ、ニンジントマト、レンダイコン……もう肉より野菜ばかりどんどん食べていく。甘くてシャキシャキしてて、もう最高!
――頼んだ物を全て食べ終わると、小松さんのお腹は満腹を表すように膨らんでいる。トリコはまだ足りないって感じだけど。私もしっかり食べたよ。
「フゥ~……お腹いっぱいです~。まさか焼肉に来て野菜で満腹になるなんて~……」
「フフッ」
「野菜恐るべしだろ?」
「料理人として、もっともっと野菜の味を追求しなきゃって思い知らされました」
「なら、『野菜の王様』はどうだ?」
「野菜の王様?」
「…………」
いつの間にか頼んだのか、グラスに入ったウィスキーを飲んだトリコが放った言葉に小松さんは反応したけど、さっきまで小松さんの幸せそうな顔を見て微笑んでいた私は、今は逆に真顔になる。
トリコが小松さんを連れて行くのにこの店を選択したのは、本題の前菜みたいなものだろう。
「ああ。実は会長(オヤジ)から仕事の依頼を受けてな。これからそいつを採りに行くとこなんだ」
「え~!? いったい、どこに!?」
「標高数万メートル……雲の上にあるという天空の野菜畑。その名も――『ベジタブルスカイ』! 独自の野菜が育つ、まさに野菜天国だ!」
「野菜天国!?」
「会長(オヤジ)によると辿り着いたのはまだ数人らしいが、一度行った者は野菜大好きになって帰って来るらしいぞ。瑞貴はまだ行ったことがなかったんだよな」
「うん」
「へぇ~。そんなに新鮮でおいしい野菜が……!」
想像してみた小松さんの目はキラキラと輝いている。私も一龍会長から詳細を聞いたときはドキドキしたもんね。
「中でも最も絶品なのが野菜の王様――オゾン草だ」
「オゾン草?」
「なんでも、ひと口食べれば地上の採れたてのどんな野菜よりもおいしいと感じる、天からの恵みを直に受けた瑞々しさと新鮮のうまみを味わえるんだって」
「まさに野菜の頂点! このグルメタワーですら、オゾン草を食べられる店はない」
「僕も初めて聞きましたよ……そんなスゴい野菜があるなんて……!」
「――味わってみるか? 野菜がメインになる、瞬間を!」
「味わいたいです! オゾン草!」
「早っ! 決めるの早っ!」
小松さんは即答と言わんばかりに両手を組んで顔を輝かせている。今までこういう話になると確実に危険と隣り合わせの旅を続けてきたせいか、どこか麻痺しちゃってるよ、小松さん。
「あっ、瑞貴さんももちろん行くんですよね!」
「もう疑問形じゃないし……。まあね、私も行くよ。興味ないと言われたら嘘だしね」
――あのときトリコと行くか行かないかのケンカを一龍会長の前で延々と続くとき、退屈だったのか一龍会長が鶴のひと声を放った。
『瑞貴ちゃんも行けばいいじゃろ。ここまでトリコが言うなら一緒にいるだけで励みにもなるじゃろうし』
『ほら! 会長(オヤジ)もこう言ってるぜ!』
『一龍会長まで……。確かに行ったことはありませんが……』
『ただし、条件が一つある』
『『えっ?』』
――でも一緒に行く代わりに一龍会長が出した条件……あれは私が行っても行かなくても変わらないと思うんだけどな。
「よし、明日出発する!」
「うん!」
「はい! トリコさん!」
あれ? ベジタブルスカイがある場所って確か……。