「気に入ったぞ、兄ちゃん！　そうだ！　そのくだらんルールを打ち破れ！　そうしなきゃ見えない未来がある！　その未来の足跡(ｿｸｾｷ)が新しいルールだ!!　薬は持ってけ、金はいらん！　お前のその心意気で充分だ!!」

「あ……ありがとう…ございます……！」


普通ならあり得ないと思う推測を信じてくれて、さらにタダで譲ってくれると告げた与作に、滝丸は涙を流して体を震わせた。


「ハハッ！　よかったな、滝丸！」

「――ううっ……」

「ん？」


第三者の泣き声にトリコたちが顔を向けると、ドアの前でリンが涙ぐんでいた。


「泣ける話だし……。おじさん…メッチャいい人だし……！」

｢｢リン！｣｣


彼女を見てトリコとサニーが声を上げると、リンはさっそくトリコに駆け寄った。


「トリコ！　大丈夫!?　うわっ、スッゴい痛そうだし……！」

「お、おい！」

「お前(ﾏ)、なんでここに!?」

「ココから話を聞いて、もういてもたってもいられなかったし！　ヨハネスにヘリ飛ばしてもらったし！」


あのあとヨハネスを連行したリンはすぐさまライフへ行くよう指示を出したらしい。おかげで超特急で到着した。


「リンさん、人使い荒過ぎだし～……」


――その間、リンを送ってＩＧＯへ帰還して行くヨハネスが嘆いていたとかいなかったとか。


「瑞貴は!?　瑞貴はどこだし!?　怪我してないし!?」

「大丈夫、瑞貴は無事だ」

「ホント!?」

「ああ、小松と戻ったんだ」

「よ、よかったし～……あっ、でも、トリコがよくないし！」


ホッとしたリンだがすぐに緊迫するように表情を変える。だが彼女は友人である瑞貴の心配もしていたと知り、トリコとサニーもどこか嬉しそうに笑っていた、


「二人共、今頃センチュリースープ作りの最中か」

「そんなことより、この怪我治んの!?」

「ああ。これから再生してもらうとこだ。あの男――与作にな！」

「あ？」

「えー！　おお、おじさんにー!?」

「なんだぁ？」


治療するのが与作と知って、リンは慌てて彼の前に駆け寄ってお願いする。


「マジ頼むし！　トリコの腕、完璧に治してほしいし！　さもないと――物スゴーく臭いデビルドリアンフレグランス、浴びせるし！」

「セツ婆の次にヤベェな……」


リンの迫力に与作は少し圧されていた。これも好きな人を思うが故なのだろう。


「それにしてもトリコ。初めて会ったが、なるほど……どこまでも生える命よ！　お前のその腕、元に戻してやろう！」

「ええっ!?　この腕、ホントに治るのか!?」

「ああ。運が良けりゃあな」

「どれくらいで治るんだし？」



☆☆☆☆☆



……リムジンクラゲに乗って上空からの景色を楽しむ節乃は、景色とは別のことを楽しみにしていた。


「フッフッフッ。そうじゃな～順調にいったとして、センチュリースープの完成は……二十年後かのぅ？」


ホテルグルメの厨房で集めた大量の食材を分ける瑞貴と小松のスープ作りに、節乃はとんでもない年数を予想していた。



☆☆☆☆☆


……そして与作が出した、トリコの腕が完治する予想も同じで全員が驚いていた。


｢｢｢｢｢ええっ!?｣｣｣｣｣

「嘘だし!?」

「ホントだ。その腕を治すには――二十年はかかる」

「に、二十年――っ!?」


トリコの悲痛な叫びは、ライフ中に響き渡っていたとか。