「仕方ねぇさ、食材にも寿命がある……こりゃ運命(ｻﾀﾞﾒ)だ。この世のルールと言ってもいい。ただし、俺ならそのルール……破っていたかもしれんな！」

「師匠！　師匠が自ら行かなかったから、セツ婆カンカンに怒ってましたよ！」

「なぬっ!?　セツ婆来てたのか!?」


鉄平が告げた節乃の存在に与作は身震いをしていた。ここに来る直前も節乃は『お灸を据える』と言ったので、恐ろしさが身に染みているのだろう。


「そらぁルール違反だろうが！　ダメだろ、ルール違反は！」

「なんのルールっスか……」

「お客様！　大声を出すのはルール違反です！」

「ならばそのルール破ろう！」


今までの一連を見ていたサニーやマッチやトリコや滝丸は、ルール違反と言ったり破ったりする与作に唖然としていた。


「これが与作……」

「なんか……」

「ルール無用な奴……」



☆☆☆☆☆


……ＩＧＯの第１ビオトープに戻ったココは、マンサムと茂松にアイスヘルの出来事を報告していた。


「美食會め……！　センチュリースープを奪っていきおったか！」

「最後の二滴を、瑞貴ちゃんと小松くんが飲めたのが幸いで……」

「奴らがスープを飲めばグルメ細胞のレベルは確実に向上する。グルメ時代の支配に一歩近づいたということか……。だが、美食會の最終目標はセンチュリースープではない。奴らが本当に狙っている食材は――」

「ＧＯＤ……！」


ココの言う食材の名は、全ての食材を超越した存在であり名のある美食屋たちも狙っている。そしてトリコがフルコースに狙っている食材でもある。


「お前たち四天王の力がこれまで以上に必要になるぞ」

「トリコは今どこにいる？」

「癒しの国・ライフに」

「そんなに重傷なのか!?」


マンサムもライフのことは知っているが、うまい食材を食べれば大抵の怪我は回復するトリコが癒しの国に向かうほどだ。どれほどの事態が察したのだろう。


「回復するとよいのですが……」


バンッ！


「ええっ!?　トリコが大怪我ー!?」


勢いよく扉が開いて涙目で入ってきたのは、サニーの妹で猛獣使いのリンだった。


「リン！　今……――ハンサムって言った!?」

「あー最悪だし！　もしかして瑞貴も大怪我を!?　こうしちゃいられないし！」

「いや、リンちゃん。瑞貴ちゃんは――」

「あっ、ヨハネス～！」

「は、はい!?」

「…………」


慌てて部屋を出て行ってヨハネスに声をかけたリン。嵐が去ったような光景にココは唖然としていた。



☆☆☆☆☆


もうすぐホテルグルメが近いとき、着替えた私は小松さんたちの元へ来た。ティナさんもいつものスーツになっている。


「お待たせ」

「わあ～！　それが瑞貴さんの舞獣姫としての姿なんですね！」

「初めて見たわ！」

〈ユーン！〉


センチュリースープはなんとしても完成したいし、これまで通り普通の生活も送りたいため、私は舞獣姫としてスープ作りに参加することにした。それにこの姿が世間に知らされているしね。


「やはり、お主は舞獣姫じゃったか」

「ていうか、節乃さんは気づいていたんじゃないですか？　お店に訪れた日に意味あり気なことを結構言ってましたよね？」

「さ～て、どうかのぅ」


本当にこの人は食えない人だ。でも誰にも言っていないことに関してはありがたいかも。