「てか、誰？　お前(ﾏ)」

「えっ!?」

「嘘だよ、知ってるよ。てっぺは有名だかんな」

「『てっぺ』……!?」


先ほどの緊迫したムードはどこに行ったのやら、サニーが付けたアダ名に鉄平は目が点になってしまった。


「俺はある食材の情報を求めてここに来た……。俺のフルコースの最後の一つ・『デザート』になる食材のヒントを得るためにな」

「おっ、デザートにする食材決まったのか！　ついにフルコースがそろうな！」

「てか、お前(ﾏ)は何しにライフに来たんだ？　――ん？　あれ？　なっ、なんだお前(ﾏ)！　お前(ﾏ)、その傷！　大怪我!?　大怪我してるし！」

「てか、気づくのおせーよ！」


今頃サニーはトリコの大怪我を認識したらしい。数分とはいえ一緒にいて会話しているのに全然気づかなかったようだ。


「ハハ～ン。その大怪我を治しに来たってわけか。でもいくら癒しの国でもその腕、元に戻すのムリくね？」

「師匠？　誰？」

「再生屋・与作だ」

「さっ!?　なっ!?」


鉄平が自分の師匠の名前を出した途端、サニーは驚きを露わにした。それに気に留めることなく、マッチは事情を話す。


「実はトリコ以外にも重傷者がいて、その治療もお願いしたくてな」

「そうだ、滝丸。お前の欲しがっていた薬もその人んとこにあるんじゃねぇのか？　ほら、全ての病を癒す薬！」

「あっ……。でももしあったとしても、僕にはそれを買うお金がありませんから……」

「ンなモン、もらえばいいじゃねぇか」

「いや、もらうなんてそんな……」

「なんとかなるよ。なっ、鉄平！」

「いや、俺に言われても！」

「――どうやら、お前らが用のある人物ってーのは、俺の知りたい情報を知っている男と同一人物らしい」

｢｢｢｢何っ/えっ!?｣｣｣｣｣


まさか鉄平の師匠がサニーの探している人物と思っていなかったらしく、トリコたちは驚いた。


「美食神・アカシアのフルコースのデザートと言われている……『アース』の情報を知っている男だ！」

｢｢｢｢！｣｣｣｣

「『赤い再生屋』……通称・『血まみれの与作』！　まさか、てっぺの師匠だったとはな」

「――お客様、困ります！」

｢｢｢｢｢？｣｣｣｣｣


離れた場所から店員の困った声が聞こえて全員が振り向くと、一つのテーブルに所々が赤い白衣を着た男が店員に注意されていた。


「当店ではそのような食べ方は……」

「禁止されてんのかぁ？」

「あらー……もしかして噂をすれば……」


鉄平はその姿と声を確認して嫌な予感がした。


「パッションポークってのは、ガブッと一気に食ってこそうめぇんだよ！」

「でも当店では、ナイフとフォークで召し上がっていただく決まりが……」

「フハハハハッ！　ならばそのルール破ろう！　世界には！　そうせねば見えない景色がある……！」

「師匠!?」

「ん～？　その声は……」


一気に肉を食べた男は鉄平の声に反応すると、一本の葉巻樹をくわえて、火が点いた二本の別の葉巻樹を当てて火を分け、さらにその二本もくわえて一気に吸うと鼻と口から煙を吐きながら振り向いた。


「うおおぉぉおおお!!　鉄平！　帰って来たのかー！　ハッハッハッハッ！」


そう、彼こそが鉄平の師匠でありサニーの捜し求めていた人物……再生屋・与作だった。彼はトリコたちと同じテーブルに移動してアイスヘルの事情を知る。


「やっぱりか、アハハハッ！　やっぱりグルメショーウィンドーはもうダメだったか！　こら爆笑！　ダハハハッ！」

「爆笑って……」