闘いの才能! 見せろ、テリー! 王者の素質!

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突然上がった声にココがテレビから並んでいる客へ顔を向けると、二人組の男が列を無視してやってきた。その二人は先日ココが女性ファンに囲まれているときに物陰から見ていた者たちだ。


「うちは大企業だし、その分、金は積みますからね」


一人の男がテーブルに名刺を投げた。それには『株式会社 グルだらけ』と書いてあり、言葉通り大企業の会社の名前だ。


「株式会社・グルだらけの者です」

「とにかく、うちで次に扱う儲かりそうな食材、すぐに占ってくれ」

「誰であろうと順番は変えない。文句があるなら、お引き取りいただいて結構」

「「っ……」」


ココは冷静に人差し指でテーブルに滑らすように名刺を突き返した。男たちはココに占ってもらえないと困るのか何も言い返さなかった。


《料理長が向かっている危険区域のウージャングルへは、グルメTVのレポーターが同行取材中です》

(ウージャングルだって!? なんて無謀な……!)


テレビのレポーターの言葉に、ココは今まで以上に動揺して目を見開いた。



☆☆☆☆☆


……IGOの第1ビオトープにある格納庫では、黒いヘリが多い中で青をベースにピンクや緑や水色や白のライン付きのヘリがあった。そのヘリの前には満足気なサニーがいる。


「空気力学的に美(ツク)しい効率の良さで揚力を得られるメイン・ローター……。そして、この美(ツク)しい色……何度見ても俺が乗るのにふさわしい俺様専用機。傷んだキューティクルを補修しに、いざ、癒しの国へ――」

「大変だしー!」


ヘリの見栄えを堪能したサニーが乗り込もうとすると、リンの慌てた声が聞こえたので立ち止まって振り向いた。


「なんだリン? 邪魔すんじゃねぇ」

「だって! 小松がウージャングルへ行ったんだし!」

「ウージャングルって、まさかあの危険地域にか!?」

「お兄ちゃん、ウチもういてもたってもいられないし~!」

「リン。松を思いやるその心、美(ツク)しいぞ――」

「小松ってば、ヨハネスと一緒にトリコと瑞貴を追いかけて行ったらしいし! ウチも行きたかったし~!」

「そっちかよ!」


目尻に涙を浮かべるリンにとっては小松より、追いかける対象のトリコと瑞貴がメインのようだ。思ったことと的外れだったのでサニーはガクッと肩を落とした。


「って、待て。瑞貴がトリコと一緒に!?」

「えっ? うん。そう聞いたし。ウチの気持ちを知っている瑞貴ならデートじゃないのはわかってるけど、それでもうらやましいし~!」

「トリコの野郎(ヤロ)……抜け駆けしやがって……!」

「うぅ~……!」

「にしても、ウール大陸か……」


悔しさで泣くリンを余所に、サニーは彼らの行き先であるウール大陸のことについて思い返しながら顔をしかめる。

ウール大陸は総面積10億2千万平方キロメートルで、人間界で三番目に広大な面積を誇る大陸だ。その北に位置するウージャングルといえば、別名・ヘルプラント――植物地獄とも呼ばれる危険な森なのだ。


(松と瑞貴がウージャングルへ……。危機一髪のシチュエーションで俺道場……)


小松を救うのもよし(彼の性格からして瑞貴に知らせてくれるから)、先に瑞貴を発見して救うのもよし、二人が合流しているときに救うのもよし――どれもサニーの活躍が瑞貴に知らされるに違いない。


「で、見事にどちらかを…もしくはどちらも救う俺……――美(ツク)しい! これぜって瑞貴が惚れてくれるパターンじゃね!?」

「うぅ~トリコと瑞貴に会いたい~! 会いたい~!」

「……なんだ? あの兄妹」


完璧なシチュエーションを思い浮かべてガッツポーズをするサニー、トリコと瑞貴に会いたいと連呼するリン……そんな二人の状況に一人の作業員は呆れていた。
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