革命(カゼ)を起こせ!
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部活も終わって夕方になった円堂家では、瑞貴が冷蔵庫を見て「あっちゃー」と言ったのを円堂の耳には聞こえた。
「どうした?」
「牛乳買い忘れちゃったの。今朝使ったフレンチトーストで全部だから買おうと思っていたのに……」
「なら、俺が買ってくるよ。いつものでいいんだろ?」
「そうだけど、いいの? 部活が終わったばかりだから疲れているでしょ?」
「こんくらい平気だって。んじゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい。お願いね」
「行ってらっしゃいのキスは――」
「しません!」
口では拒否しているも顔が真っ赤な妻に、円堂は面白そうに笑いながら家を出た。
円堂が帰って来るまで夕飯の支度をしておこうと、瑞貴はエプロンを身に付ける。
「さて、今日のメニューは――」
♪ピリリリ、ピリリリ♪
献立の確認をしようとしたら、瑞貴は自分の携帯が鳴ったのに気づいて手に取った。表示された着信を見ると目を見開いて慌てて出る。
「も、もしもし!?」
〈久しぶりね、瑞貴〉
それは瑞貴の親友であり、レジスタンスの一員である総一郎の娘――雷門夏未からだった。
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円堂が牛乳を買って河川敷を通りがかったとき、天馬が練習をしているのを見つけた。部活が終わったばかりだというのに特をする姿は懐かしさを覚える。
そう思った円堂は階段を降りて、ボールを手に取ろうとする天馬に声をかける。
「まだ帰らないのか?」
「監督!」
「必殺技の特訓でもしていたのか?」
「あっ……はい。『俺たち、もう絶対に負けられない』って思ったら、ジッとしてられなくて……」
「ハハッ、力入り過ぎじゃないか? でもまあ、気持ちはわかる。俺だってビックリしてるんだ。革命だぞ?」
「…………」
「俺も瑞貴も、ただ本当のサッカーを取り戻したくてやってきただけだ。それがこんな大きなことになってるとはな」
「はい……」
円堂も瑞貴もレジスタンスの存在は知らなかった。ただ本気のサッカーをしていれば変わっていくだろうと思っていたが、それがレジスタンスの革命につながっているとは思いもよらない。
顔をうつむける天馬を見て、円堂は彼が持つボールに手を置くと優しく撫でる。
「なんだか、懐かしかったよ」
「えっ?」
「俺も、普段の練習が終わったらよく一人で特訓続けてた。もっと強くなりたい、もっとスゴい技を身に付けたいってな」
「そうなんです!」
「ん!?」
昔の円堂もそうだと知った天馬は顔を輝かすと、円堂にどんどん詰め寄って行った。
「これから敵ももっと強くなってくるだろうし!」
「近い、近いから……」
「そよかぜステップの他にもディフェンス技があれば!」
「あのー……」
「いろんな場面で役に立つと思うんです!」
天馬の迫力と意気込みに片手でボールを持った円堂は一歩一歩とうしろに下がる。
「あー……シュート技のマッハウィンドを身に付けたじゃないか。あれだけじゃ足りないのか?」
「あっ……」
円堂がそう言うとやっと落ち着いたのか、天馬は体を離して理由を告げる。
「マッハウィンドのスピード、ディフェンスに応用できないかって思って……」
「なるほど。さらに上を目指すというわけだな」
「はい!」
「……なんだか、ますます瑞貴みたいだな」
「えっ?」
様々な種類の必殺技を身につけようとする天馬を見て、円堂は昔の瑞貴のことを思い出した。
「あいつもディフェンス…ドリブル…シュート……さらにはキーパー技まで身に付けてきたんだ」
「そういえば瑞貴さん、オールプレーヤーとして有名ですもんね」
「ああ。たくさん努力して俺たちを何度も驚かせたし、女子なのに手がボロボロになるのも躊躇しなかった。交代選手がいないときはスゴく助かったよ」
正式にGKとして瑞貴が出たのはフットボールフロンティア全国大会の一回戦だったが、相手の強力なシュートを止めるほど強かった。あの感動は今でも覚えている。