炸裂! アルティメットサンダー!!
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黒木の宣言で動揺していた剣城がようやく落ち着きを取り戻して病室に戻ると、優一が顔をしかめて待っていた。
どうしたのかと剣城は思ったが、優一はテレビで放送される雷門中対帝国学園の試合を見ながら『チームメイトを放っておいて、お前はこんな所で何をしている?』と言った。
「お前にとってサッカーとはその程度のものだったのか? 答えろ、京介」
「……っ」
強く問いかける優一に剣城は軽く歯を食いしばるも答えない。いや、答えられないのだ。
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逸見は速水がマークに着く前に御門へパスを出した。
「どれほど足掻こうとムダだ! 勝つのは我々帝国! 黒き翼レイブン!」
「「「あっ!」」」
「こいつも化身使い!?」
御門が出したカラスのような鳥型の化身に霧野と神童と倉間は目を見開き、龍崎以外にも化身使いがいたのかと天馬は驚いた。
「でやっ!」
「バーニングキャッチ!」
化身のパワーをまとって御門がシュートを撃ち、三国は対抗するもゴールを許してしまった。
《ゴォ――ルッ!! 2点目!!》
新たな化身使いがいると知り、さらに追加点を取られてしまった。雷門中にとっては絶対絶命の危機である。
「瑞貴先輩……」
「攻撃の化身使いに、守りの化身使い、さらには強力なキーパーがいる。選手をここまで鍛えられるなんて、さすがとしか言えないね……」
音無春奈がハラハラしながら隣にいる瑞貴に声をかけると、瑞貴はデータを取りながら帝国学園のベンチにいる鬼道と佐久間に顔を向けた。
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剣城は結局問いに関して何も答えようとせず、優一は話を変える。
「お前が男と話しているのを聞いた」
「なっ!」
まさかあの場にいたとは思わず剣城は驚いた。初めて反応を見せた剣城に向けて優一は毛布を落とすと、動かなくなった足が露わになる。
「京介……俺はお前に頼んだか!? この足を元通りにしてくれと頼んだのか!? 一度でも! 俺が頼んだのはたった一つだけだ!」
「…………」
「サッカーの勝敗を管理する機関・フィフスセクター……お前がそんな奴らと関わっていたとは……」
優一は足が動かなくなってもサッカーへの情熱は衰えない。フィフスセクターが現れてから、どんな組織なのか自身で調べていたのだろう。
「そんなのが俺たちの好きだったサッカーか!? うまくいったら楽しい…失敗したら悔しい…ドリブルで抜きたい…シュートを決めたい……そんな一つ一つの想いが溢れて胸の奥が熱くなる――サッカーはそう言うモンだろ! 京介!」
ポタッ……。
「っ、兄さん……!」
握り締めた拳に落ちたのは優一の涙だった。その姿に剣城は目を見開く。
「お前はサッカーを裏切った…俺たちが好きだったサッカーを裏切ったんだ……! 井上さんと交わした、あの約束も……!」
「…………」
――剣城は昔を思い出した。優一の足が動かないと知って初めて病室に訪れたとき、自分は泣いていた。
『ごめんなさい! 兄ちゃん……俺のせいでサッカーができなくなって……!』
『泣くなよ、京介。お前のせいじゃない。事故だったんだ』
木から落ちた自分を助けるために優一は体を張って助けてくれた。その代償が大好きなサッカーをできなくなることを知って、一番悲しいのは優一のはずなのに優しく宥めてくれた。
『京介、頼みがあるんだ』
『グスッ…何……?』
『俺は瑞貴姉さんとの約束を守れない。だから、お前が代わりに守ってくれ。あの頃よりもっとうまくなった姿を見たら、きっと瑞貴姉さんも驚くさ』
――優一は確かにそう言った。そして剣城はあれから十年の月日を経てやっと叶えられる状況にいたのに……。
『あんたなんか知るかよ!』
そう言って突き放してしまった。それが同時に兄弟で交わした約束も、優一のたった一つの頼みも裏切ってしまったのだ。