じぶん嫌い
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「俺が怖がってるって。でも、あんただって同じだ。思いっきり怖がってんじゃねぇか」
「……だからわかったの。九坂くんがウチと一緒だって」
「だったら向き合えよ。俺だってそうしたんだぜ!?」
「…………」
「なあ!」
「……ウチには、ムリだよ」
「ムリじゃないって! 森村のおかげで俺、なんにも怖くなくなったんだぜ!」
「ウチは……九坂くんとは違う……」
「クウッ……!」
最初はゆっくり説得して行くはずだったが、煮え切らない好葉の態度に九坂はだんだん声が大きくなっていき、ついに立ち上がると――。
「苛つくんだよな! そういうの!」
「九坂!」
「あっ!」
禁句ワードを言い放った九坂に天馬が咎めるように声を上げたが遅かった。予想していたことが起こったので好葉は泣きそうに瞳を揺らす。
「苛つく……やっぱりウチは……」
「あっ、好葉!」
天馬が止める間もなく、好葉はふれあいコーナーから出て走ってどこかへいってしまった。
「私、もう一度話してみる!」
葵が一度振り向いて天馬と九坂にそう言うと、天馬ももう一回話し合うために追いかけた。
「やっちまったな……」
その場に残った九坂は、言ってはいけないことを思わずとはいえ行ったことに後悔していた。
☆☆☆☆☆
ミーティングルームでは今も真名部と皆帆がマッハタイガーについて研究していた。そしてモニターにはマッハタイガーのとある試合が映し出されている。
《ゴォ――ルッ!! タムガン、素晴らしいゴールを決めた――っ!!》
「これが大会始まってからのプレー」
「それぐらい知ってるよ」
「ではこれを見てください。大会前のマッハタイガーの試合です」
真名部がタブレットを操作すると、モニターにはマッハタイガーの別の試合が映った。
《ガオラン、右サイドを抜いた! バークとワンツーからセンタリングだ――っ!! ゴォ――ルッ!!》
「敢えて似たような状況を選んでみたんですが、わかりませんか?」
「確かに、違和感を感じるけど……」
「マッハタイガーのFW・タムガンの大会前のデータです。これに、大会が始まってからのデータを重ねてみます」
モニターにタムガン=ジャーのデータを五画形にし、大会前と後のデータを重ねてみるが大幅に一致しなかった。
「…………!」
「スピード、パス成功率、シュート力、全てにおいてそれ以前を凌駕しています」
「まるで別人みたいだ……」
「他の選手のデータを出します」
次に真名部はタムガン以外の選手のデータも照らし合わせてみたが、タムガン同様に大幅に一致していない。
「あらゆる選手の全てのデータが、大会前の数値を大幅に上回っています」
「確かに……普通じゃないね」
「そしてこれがマッハタイガーだけではなく、他の全てのチームにおいてもそうだとしたら……――どう思います? これはビッグウェイブス、ファイアードラゴン」
なんとマッハタイガー同様、ビッグウェイブスもファイアードラゴンも選手のレベルがとてつもなく上がっていた。もしかしたら戦っていない他のチームもそうではないかと思い始める。
「僕たち……とんでもないことに、気づいちゃったのかな?」
「うん……」
この世界大会には裏がある、それはもしかしたら自分たちの予想を遙かに上回ったことだろう。皆帆と真名部は一瞬恐怖を覚えるのだった。
ミーティングルームの扉の小窓から、みのりが一連の様子を見ていたことに気づかずに。
☆☆☆☆☆
「いた!」
「好葉ちゃん!」
「森村!」
動物園を出た天馬と葵と九坂は、歩道橋の上から街をトボトボ歩く好葉を見つけた。少し距離があるとはいえ三人の声は届いていない。
「やっぱり……ウチは苛つくんだ……」
「――好葉ちゃん!」
「っ!」
自分の名を呼ぶ声にビクついて顔を上げて見れば、瑞貴が駆け寄って来た。怒られるかと思ったのか好葉はさらに震えるが、瑞貴は好葉の身長に合わせてしゃがむと優しく微笑む。
「……だからわかったの。九坂くんがウチと一緒だって」
「だったら向き合えよ。俺だってそうしたんだぜ!?」
「…………」
「なあ!」
「……ウチには、ムリだよ」
「ムリじゃないって! 森村のおかげで俺、なんにも怖くなくなったんだぜ!」
「ウチは……九坂くんとは違う……」
「クウッ……!」
最初はゆっくり説得して行くはずだったが、煮え切らない好葉の態度に九坂はだんだん声が大きくなっていき、ついに立ち上がると――。
「苛つくんだよな! そういうの!」
「九坂!」
「あっ!」
禁句ワードを言い放った九坂に天馬が咎めるように声を上げたが遅かった。予想していたことが起こったので好葉は泣きそうに瞳を揺らす。
「苛つく……やっぱりウチは……」
「あっ、好葉!」
天馬が止める間もなく、好葉はふれあいコーナーから出て走ってどこかへいってしまった。
「私、もう一度話してみる!」
葵が一度振り向いて天馬と九坂にそう言うと、天馬ももう一回話し合うために追いかけた。
「やっちまったな……」
その場に残った九坂は、言ってはいけないことを思わずとはいえ行ったことに後悔していた。
☆☆☆☆☆
ミーティングルームでは今も真名部と皆帆がマッハタイガーについて研究していた。そしてモニターにはマッハタイガーのとある試合が映し出されている。
《ゴォ――ルッ!! タムガン、素晴らしいゴールを決めた――っ!!》
「これが大会始まってからのプレー」
「それぐらい知ってるよ」
「ではこれを見てください。大会前のマッハタイガーの試合です」
真名部がタブレットを操作すると、モニターにはマッハタイガーの別の試合が映った。
《ガオラン、右サイドを抜いた! バークとワンツーからセンタリングだ――っ!! ゴォ――ルッ!!》
「敢えて似たような状況を選んでみたんですが、わかりませんか?」
「確かに、違和感を感じるけど……」
「マッハタイガーのFW・タムガンの大会前のデータです。これに、大会が始まってからのデータを重ねてみます」
モニターにタムガン=ジャーのデータを五画形にし、大会前と後のデータを重ねてみるが大幅に一致しなかった。
「…………!」
「スピード、パス成功率、シュート力、全てにおいてそれ以前を凌駕しています」
「まるで別人みたいだ……」
「他の選手のデータを出します」
次に真名部はタムガン以外の選手のデータも照らし合わせてみたが、タムガン同様に大幅に一致していない。
「あらゆる選手の全てのデータが、大会前の数値を大幅に上回っています」
「確かに……普通じゃないね」
「そしてこれがマッハタイガーだけではなく、他の全てのチームにおいてもそうだとしたら……――どう思います? これはビッグウェイブス、ファイアードラゴン」
なんとマッハタイガー同様、ビッグウェイブスもファイアードラゴンも選手のレベルがとてつもなく上がっていた。もしかしたら戦っていない他のチームもそうではないかと思い始める。
「僕たち……とんでもないことに、気づいちゃったのかな?」
「うん……」
この世界大会には裏がある、それはもしかしたら自分たちの予想を遙かに上回ったことだろう。皆帆と真名部は一瞬恐怖を覚えるのだった。
ミーティングルームの扉の小窓から、みのりが一連の様子を見ていたことに気づかずに。
☆☆☆☆☆
「いた!」
「好葉ちゃん!」
「森村!」
動物園を出た天馬と葵と九坂は、歩道橋の上から街をトボトボ歩く好葉を見つけた。少し距離があるとはいえ三人の声は届いていない。
「やっぱり……ウチは苛つくんだ……」
「――好葉ちゃん!」
「っ!」
自分の名を呼ぶ声にビクついて顔を上げて見れば、瑞貴が駆け寄って来た。怒られるかと思ったのか好葉はさらに震えるが、瑞貴は好葉の身長に合わせてしゃがむと優しく微笑む。