じぶん嫌い
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それから葵は好葉を練習へ連れ戻そうと考えていない旨を伝え、二人はそばのベンチに並んで座る。緊張しているのか居心地が悪いのか、組んでいた両手の親指をいじっていると小さく声を出す。
「……あの」
「えっ?」
「っ、なんでもないです……」
「あっ……」
好葉から話しかけてくれたと思ったが中断されてしまった。葵はベンチから立ち上がって好葉と向かい合い、今度は自分から話しかける。
「猫が好きなの?」
「うん……」
「そっか。――好葉ちゃん!」
「は、はい……」
「悩みがあるなら聞かせてくれないかな? 私、これでもマネージャーだし……――あっ、好葉ちゃん? どうしたの?」
相談に乗ると葵が言うが、好葉は顔をうつむいたまま小さく震えていた。
「……聞いて、どうするんですか」
「えっ? どうするって……?」
「ウチのこと…笑い者にするつもりなんでしょ……」
「えっ!? そ、そんな……」
「あっ……! ご、ごめんなさい……」
「好葉ちゃん……」
好葉にとって無意識に言い放った言葉だが、それが失言だったと気づき葵に謝る。
その様子に葵は只事ではないと思って眉を下げると、この場にいることがいたたまれなくなったのか、好葉はベンチから降りると葵に深々と頭を下げて謝罪する。
「ごめんなさい!」
「あっ……好葉ちゃん……」
葵の返事も聞かず、好葉は即座に走って公園から出て行ってしまった。
――昼食を取ったあと、瑞貴は準決勝の手続きがあるため練習に参加できず、メニューを天馬たちに渡しておいた。
そしてヨットハーバーグラウンドで選手たちジャージ姿のまま屈伸する中、蒲田静音が大慌てでやって来た。好葉が宿舎を出て行ってしまったという報せに天馬たちは驚く。
「好葉が宿舎を出た!?」
「ハァ…ハァ……。あたしも…おどろいちゃったよ! 大丈夫かねぇ、あの子……」
「すみません、ちょっといいですか? 『このままイナズマジャパンに留まる自信がありません 好葉』……」
葵は静音から好葉の置き手紙を受け取って読み上げた。こんなに思い詰めていたのだとわかり、葵はあのとき追いかけるべきだったと溜息を吐く。
「公園で話したとき、一緒に連れてくればよかった……」
「葵さんの責任じゃないよ!」
「そうそう」
「――森村は悩んでるんだ」
瞬木とさくらがそう言って葵を励ますと、九坂が告げた言葉に全員自然と彼に注目する。
「自分がチームのお荷物になってるって思い込んでる……。このままじゃあいつ、辞めちまうかもしれない」
「っ!」
九坂の推測に天馬は目を見開く。だが午前の練習にも参加しなかったし、好葉の様子からしてあり得る話だ。
「……放っておいてあげるのがいいのかも。好葉ってスゴい内気でしょ? 大勢の観客の前でサッカーするのはキツそうだし……」
「確かに彼女には日本代表は重過ぎるかもしれません」
「彼女には闘争心というものがないからね。サッカーという競技には本質的に向いてないって僕は思う」
「…………」
「――みんな何もわかってないんだな」
「「「「「!」」」」」
さくらと真名部と皆帆が好葉のためこのままにしておくべきだと言い、瞬木もそれに同意するよう静かに促すと、九坂が否定の声を上げた。何故そう思うのかと皆帆は問いかける。
「それ、どういうこと?」
「あいつは大した奴だよ。俺が自分自身と向き合ってないってことを、ひと目で見抜いたんだから」
「「…………」」
皆帆と真名部は顔を見合わせた。確かに九坂は当初の凶暴な性格と周りの評判のことで誤解していたが、本当は自分の弱さを隠すために力を振りかざしていた。メンバーが先入観にとらわれる中、真っ先に気づいていたのは好葉である。
九坂は立ち上がり、好葉だって本当はチームにいたいのではと天馬たちに告げる。
「森村も本音は、サッカーがやりたいんじゃねぇか?」
「九坂……」
「俺にはわかるような気がする……。あいつの心を閉ざしているものって、俺に似てるんだよな……――自分自身に向き合えないっつーか」
どこか境遇が似ているからこそ、好葉は九坂の弱さに気づき、九坂もまた好葉に何か気づいたんだろう。
「俺、探して来る! 置き手紙なんかして戻るに戻れなくなったら可哀想だし」
「俺も行くよ! 試合が近いし、みんなは練習を続けてくれ!」
「いやいや、俺も行くぜ!」
「よし、行こう!」
「「「オウッ/ウッス!」」」
瞬木を始め天馬も鉄角も好葉を探しに行くことを決め、九坂も共に四人はグラウンドから出ていった。
「……あの」
「えっ?」
「っ、なんでもないです……」
「あっ……」
好葉から話しかけてくれたと思ったが中断されてしまった。葵はベンチから立ち上がって好葉と向かい合い、今度は自分から話しかける。
「猫が好きなの?」
「うん……」
「そっか。――好葉ちゃん!」
「は、はい……」
「悩みがあるなら聞かせてくれないかな? 私、これでもマネージャーだし……――あっ、好葉ちゃん? どうしたの?」
相談に乗ると葵が言うが、好葉は顔をうつむいたまま小さく震えていた。
「……聞いて、どうするんですか」
「えっ? どうするって……?」
「ウチのこと…笑い者にするつもりなんでしょ……」
「えっ!? そ、そんな……」
「あっ……! ご、ごめんなさい……」
「好葉ちゃん……」
好葉にとって無意識に言い放った言葉だが、それが失言だったと気づき葵に謝る。
その様子に葵は只事ではないと思って眉を下げると、この場にいることがいたたまれなくなったのか、好葉はベンチから降りると葵に深々と頭を下げて謝罪する。
「ごめんなさい!」
「あっ……好葉ちゃん……」
葵の返事も聞かず、好葉は即座に走って公園から出て行ってしまった。
――昼食を取ったあと、瑞貴は準決勝の手続きがあるため練習に参加できず、メニューを天馬たちに渡しておいた。
そしてヨットハーバーグラウンドで選手たちジャージ姿のまま屈伸する中、蒲田静音が大慌てでやって来た。好葉が宿舎を出て行ってしまったという報せに天馬たちは驚く。
「好葉が宿舎を出た!?」
「ハァ…ハァ……。あたしも…おどろいちゃったよ! 大丈夫かねぇ、あの子……」
「すみません、ちょっといいですか? 『このままイナズマジャパンに留まる自信がありません 好葉』……」
葵は静音から好葉の置き手紙を受け取って読み上げた。こんなに思い詰めていたのだとわかり、葵はあのとき追いかけるべきだったと溜息を吐く。
「公園で話したとき、一緒に連れてくればよかった……」
「葵さんの責任じゃないよ!」
「そうそう」
「――森村は悩んでるんだ」
瞬木とさくらがそう言って葵を励ますと、九坂が告げた言葉に全員自然と彼に注目する。
「自分がチームのお荷物になってるって思い込んでる……。このままじゃあいつ、辞めちまうかもしれない」
「っ!」
九坂の推測に天馬は目を見開く。だが午前の練習にも参加しなかったし、好葉の様子からしてあり得る話だ。
「……放っておいてあげるのがいいのかも。好葉ってスゴい内気でしょ? 大勢の観客の前でサッカーするのはキツそうだし……」
「確かに彼女には日本代表は重過ぎるかもしれません」
「彼女には闘争心というものがないからね。サッカーという競技には本質的に向いてないって僕は思う」
「…………」
「――みんな何もわかってないんだな」
「「「「「!」」」」」
さくらと真名部と皆帆が好葉のためこのままにしておくべきだと言い、瞬木もそれに同意するよう静かに促すと、九坂が否定の声を上げた。何故そう思うのかと皆帆は問いかける。
「それ、どういうこと?」
「あいつは大した奴だよ。俺が自分自身と向き合ってないってことを、ひと目で見抜いたんだから」
「「…………」」
皆帆と真名部は顔を見合わせた。確かに九坂は当初の凶暴な性格と周りの評判のことで誤解していたが、本当は自分の弱さを隠すために力を振りかざしていた。メンバーが先入観にとらわれる中、真っ先に気づいていたのは好葉である。
九坂は立ち上がり、好葉だって本当はチームにいたいのではと天馬たちに告げる。
「森村も本音は、サッカーがやりたいんじゃねぇか?」
「九坂……」
「俺にはわかるような気がする……。あいつの心を閉ざしているものって、俺に似てるんだよな……――自分自身に向き合えないっつーか」
どこか境遇が似ているからこそ、好葉は九坂の弱さに気づき、九坂もまた好葉に何か気づいたんだろう。
「俺、探して来る! 置き手紙なんかして戻るに戻れなくなったら可哀想だし」
「俺も行くよ! 試合が近いし、みんなは練習を続けてくれ!」
「いやいや、俺も行くぜ!」
「よし、行こう!」
「「「オウッ/ウッス!」」」
瞬木を始め天馬も鉄角も好葉を探しに行くことを決め、九坂も共に四人はグラウンドから出ていった。