特訓! ブラックルーム‼︎
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「剣城!」
天馬からパスを受け取った剣城京介に、皆帆が止めようと前に出るが……。
「皆帆!」
「なっ!?」
「撃たせろ! 止める……さあ撃って来い!」
なんと井吹宗正は敢えて撃たせるようにと声を上げた。彼の気迫により皆帆はその場から退き剣城はシュートを放つ。
「でやあっ!」
「ふんっ! うっ…くっ……ぐわあっ!」
「井吹くん!」
「クソッ……! クッ……!」
両手で押さえたシュートに押し負けてしまった井吹は自身ごとゴールに入ったので、皆帆は心配するように声を上げる。幸い特に負傷がなかった井吹は体を起こすことができたが、うしろにあるボールを見て悔しそうに拳を握り歯を食いしばった。
(何故止められない……!?)
準々決勝では必殺技を出す間もなく失点を許してしまったので、さらに井吹のプライドに響いたのだろう。しかも現在剣城のノーマルシュートすら止められないので、悔しさばかりが募る一方だ。
「クソッ!」
「…………」
拳を地に打ち付ける井吹を、神童は何かを思うようにただ見つめているだけだった。
ピ――ッ!!
「はい! 今日の練習はここまで!」
「みんなー! ドリンクがあるから、しっかり水分補給してねー!」
ホイッスルを鳴らして練習終了を告げる瑞貴。葵もベンチに置いたドリンクとタオルを示しながら声を上げた。
「隆二くん、だいぶパスが取れるようになったね。その調子で今度は次への行動の切り返しの判断がよくなればもっと速く動けるよ」
「ウッス!」
サウジアラビア戦のあと九坂がチームへより馴染めるようになり、瑞貴にも名前で構わないと言ったのだ。それに瑞貴も自分が認められたような感覚がして嬉しくなったのを今でも覚えている。
「なかなか、いい感じになって来たんじゃないかな」
「運動量も27パーセントは増えてます」
「フムフム、もうちょっと二人の練習量を増やしてもよさそうだね」
「「っ!」」
以前と比べて力が付いたことに嬉しそうに話す真名部と皆帆の横で、頷きながらボードにメモをする瑞貴の声が聞こえ、二人はビクッと肩を跳ねた。
(まっ、全員に言えることなんだけど。一人を除いて)
最初の頃と違うのは皆帆や真名部だけじゃなく他のみんなもそうだが、瑞貴はチラッと好葉に目をやった。……彼女だけがまだサッカーに対しての積極性があまりない。
「ゴクッ、ゴクッ……やっぱりいいぜ! 体を動かすのはよ!」
「――鉄角」
「!」
「「「「「!」」」」」
気持ちよさそうにドリンクを飲む鉄角に声をかける神童。雷門メンバー以外に自分から声をかけることは初めてなので、鉄角だけでなく自然と他のみんなも顔を向けた。
「だいぶ動きにキレが出てきたな。けど、まだまだ甘い。スピードが落ちてるぞ。もっと前へ出ろ」
「あ、ああ」
虚を突かれた思わぬ言葉に鉄角は驚きつつ返事をすると、神童はベンチから去って行った。
「神童先輩がアドバイスした……! 天馬!」
「うん! 神童さん……!」
試合をしていくにつれて心情が変化したのは新メンバーだけじゃないようだ。葵と天馬は嬉しそうに顔を見合わせる。
神童の様子に他のみんなもどこか嬉しそうな顔をするが、相変わらず好葉だけは顔をうつむいている。少し離れた場所にいる九坂は彼女の元へ行こうとするが…。
「はい、ドリンク」
「九坂くんも飲まないとダメですよ。今の練習で、かなり水分が失われていますから」
「あ、ああ。サンキュ」
ドリンクを差し出す皆帆とアドバイスする真名部により、意図されたわけじゃないが、九坂はすっかり声をかけるタイミングを失ってしまった。
☆☆☆☆☆
夕方、夕飯ができるまで各々自由行動しているイナズマジャパン。その中でグラウンドにやって来た皆帆はある音が聞こえた。
トンッ、トンッ、トンッ――……。
「ボールの音? 誰か練習しているのかな?」
だいぶ馴染み深くなってきた音に反応した皆帆は駆け足でグラウンドに向かうと、そこにいたのはリフティングをする瑞貴だった。
「瑞貴さん!?」
「おや、和人くん」
声を上げたことで皆帆に気づいた瑞貴は、軽くヘディングして上げたボールを地に落とすと次いで足で押さえる。その間もかけ足を止めていなかった皆帆はちょうど瑞貴のそばに着いた。