帝王の涙!
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ダッ!
「九坂! お前の言う強さは、こんなことなのか!?」
そこへ天馬が二人の間に立って両手を広げ、九坂に呼びかける。ヘタに出れば九坂をさらに刺激しかねないので、イナズマジャパンのメンバーはその場をただ見守るしかできなかった。
「本当の強さは、こんなことじゃない! 自分が恐れているモノから逃げずに向き合えることだ! それが、本当に強い奴なんだ!」
「っ……!」
『九坂くんは怖がってるんです……。強くならなきゃ、みんなが離れていってしまうって……』
『強さって意味は一つじゃない。強さと弱さは表裏一体……だからこそ自分の強さも弱さも見つけたときに、人は本当の意味で強くなれる』
不意に九坂の脳裏に浮かんだのは、自分が強さにこだわっていた理由に気づいた好葉、強さと弱さの大切さを教えてくれた瑞貴の言葉。徐々に気持ちが落ち着く中、再び天馬が声を上げる。
「怖いモノがあっても、逃げずに向き合うんだ!」
「…………」
「――リュウちゃん!」
「!」
すると観客席から声が聞こえて顔を上げると、自分の席から離れて手擦りにまでやって来た里子がいた。
「サ、サトちゃん!?」
「!」
「……っ」
九坂が観客席を見たので天馬も里子に気づく。里子は今まで言えなかった言葉を伝えるために、勇気を振り絞って言葉を続ける。
「リュウちゃん、何故自分をそこまで追い込むの?」
「っ、それは……それはサトちゃんが弱い奴を嫌うから、だから俺は……」
「あのときのリュウちゃんは、弱くなんかなかった」
「えっ……」
「私のために勇気を出していじめっ子に立ち向かってくれたリュウちゃんは、決して弱虫なんかじゃない! そんなリュウちゃんが好きだった!」
「!」
「でも……あのときの私は、どうしていいかわからずに逃げ出してしまった……。だからずっと謝りたかったの!」
「サトちゃん……――うおおぉぉおおお!」
「九坂……」
里子の本当の気持ちを知って幼い頃からのわだかまりが解けたせいか、九坂は溜まっていた分の想いを出すように号泣し始める。それを見た天馬は九坂の心の苦しみが解放されたのだと思った。
しかし逆に涙を流す九坂を見て、出門たちは元の調子に戻ってしまう。
「へっ! 泣いてるぜ、この弱虫野郎!」
「「「「「へへへへっ!」」」」」
「…………!」
「ほら、どうした。かかって来いやぁ!」
「出て行け!」
「!」
涙は流したままだがオーラは先ほどとまるで変わっていない九坂。それに後向田が分が悪いのではと出門に声をかける。
「こ、こいつヤバくないっスか?」
「フンッ。つ、付き合いきれねぇ。行くぞ!」
そう言い捨てて出門は子分たちと共にフィールドを去って行った。それを見た九坂はオーラを抑えて前髪を掻き上げると、天馬から差し出されたバンダナを受け取った。
「強くなるってこういうことか……1ミリくらいわかった気がするぜ……」
力を示さなくても出門たちを追い返すことができたのは、自分の弱さに向き合えたからだろう。九坂はバンダナで目尻に残った涙を拭い、そのまま頭に付ける。
「キャプテン、迷惑かけてすんませんでした。――さあ、サッカーやりましょう!」
「ああ!」
迷いがなくなって晴れ晴れしく笑い親指を立ててそう言った九坂に、天馬は笑って深く頷いた。
「友情なんてくだらねぇな」
「あんな奴ら、さっさと片付けようぜ」
「だな」
今まで傍観していたサイードとカシムは、天馬と九坂を見てとんだ茶番だというように呆れていた。
トラブルが回避されて試合が再開された。ドリブルするラシードは、前方で立ちはだかる九坂を見てニヤリと笑う。
「また来たか、『弱虫』野郎!」
「見ろ、本当の俺を! うおおぉぉおおお!」
「えっ、また!?」
「同じじゃねぇか!」
「っ!」
「リュウちゃん……!」
再び怒髪天モードになった九坂にさくらと鉄角は状況が変わっていないと焦るが、天馬と里子はそれをただ見守る。すると溢れんばかりの怒りのオーラを抑えつけ、ついに自分のモノにできた。
「九坂!」
「あっ……!」
「ふっ!」
「何っ!?」
九坂に嬉しそうに笑う天馬と好葉。そして九坂は今までとは別人のような動きでボールを奪ったので、ラシードは驚きを隠せない。