帝王の涙!
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「強さってなんだろうね」
「えっ?」
「ほらだって『力が強い』、『精神が強い』、『心が強い』……いっぱい言うでしょ? 強さって意味は一つじゃない。強さと弱さは表裏一体……だからこそ自分の強さも弱さも見つけたときに、人は本当の意味で強くなれる」
「強さも弱さも……?」
顔を上げた九坂が瑞貴を見ると、彼女は優しく微笑んだあと時計に目をやる。
「ハーフタイムがもうすぐ終わる。行くよ、九坂くん」
「はい……」
瑞貴が促すと立ち上がった九坂。最初に彼がロッカールームから出て行ったあと、瑞貴は室内にあるホワイトボードを見る。そこには『絶対! 勝つぞ! イナズマジャパン!!』と決意表明を込めて書かれていた。
そして二人は共にフィールドへ続く廊下へと出て歩いて行くが、九坂の表情は晴れない。それを見た瑞貴はもう一つだけ告げる。
「九坂くんってヘディングが上手そうだよね」
「えっ?」
「体格がいいし力もあるから、ヘディングシュートもできるんじゃないかって私は思うよ」
初戦前の全体練習から、昨日までの練習を見て瑞貴はイナズマジャパンの得手不得手を見て、サッカーで活かせるのではいくつものパターンを考えていた。そしてそれで九坂にできそうだと見つけたのが……――ヘディングなのだ。
☆☆☆☆☆
瑞貴と九坂も戻り、ハーフタイムが終了した。両チームはポジションに着く。
《さあ1点を追いかける展開になったイナズマジャパン! 後半の戦いに期待です!!》
「奴ら、とんでもない爆弾を抱え込んだもんだな」
「ああ。いるんだよな、ああいう奴」
カシム=バドルとサイードは九坂を見て笑みを浮かべている。ハーフタイムでチームメイトと何か打ち合わせたようだ。
「がんばれー!」
「一気に逆転だー!」
「…………」
兄たちイナズマジャパンを応援する瞬木瞬と瞬木雄太に対し、九坂の幼馴染の里子はただ黙ってフィールドを見ているだけだった。
ホイッスルが鳴りシャムシールボールで試合開始。カシムからボールを受け取ったサイードはラシード=ハキムにパスを出す。
「ラシード!」
「うおおおっ!」
「フッ」
ドリブルするラシードに九坂は勢いよく前に出るが、華麗な動きでかわされてしまった。そこへ神童がすかさずカバーに入る。
「アインザッツ!」
「何っ!?」
《神童、素早い動きでボールを奪ったー!》
「野咲!」
パスを受け取ったさくらはドリブルすると、前方からシャーキル=ザハルが駆け込んで来るのが見えて、逆サイドにパスを回す。
そこへ走っていた九坂は自分へのパスだと思っていたが……それを間に入って取ったのは天馬だった。
「剣城!」
「へっ!」
「なっ!?」
剣城が受け取る前にバタル=マジドがパスカットし、すぐさま前線へと送った。天馬は上がっていたメンバーに声をかけながら走る。
「みんなー! 下がれー!」
「っ……」
ただそこへ立ち止まっている九坂は、さっきのパスに違和感を覚えていた。
それからも九坂には一切ボールが回らない。たとえ遠くても九坂を越えた先にいる味方へボールを回す光景を見て、ハーフタイムの間に何が起こったのか瑞貴は察する。
「九坂くんをプレーから外す作戦?」
「は、はい……。ラフプレーを起こさないようにって……」
瑞貴はただ質問をしただけなのに、責められるかと思った葵は少々ビクつきながら答えた。特に気にすることはなく、瑞貴は再びフィールドにいる天馬たちを見る。
(現実としての判断は間違いでもないけど、そこに九坂くんの意思はない……)
次に瑞貴が九坂を見れば、九坂も同様に察しているのがわかった。
(そうか……俺を暴れさせないためにわざと……。すまない…キャプテン……――けど! 俺だって!)
これは最優先すべきプレーであると同時に、自分への思いやりでもあると察した九坂。だが頭では納得しても心がそうはいかないのか拳をギュッと握った。
「うおりゃあっ!」
「決まれー!」
瞬木隼人が渾身のシュートを撃つと、九坂は祈るように叫んだ。しかしシャムシールのGK・スルタン=カラムは片手で止めた。
《キーパー・スルタン、なんなくキャッチ!》
「フンッ」
「「「「「!」」」」」
「キャプテン!」
イナズマジャパンたちが驚く中、スルタンはサイードに向かってボールを投げると受け取ったサイードはニヤリと笑った。
「実力の差を思い知らせてやる……いくぞ! 必殺タクティクス、大砂漠砂嵐だ!」
「「「「オウッ!」」」」」
シャムシールの言葉を合図に、カシムとラシードとタミル=ナスルとハリール=ウトバが共に動き出す。
「えっ?」
「ほらだって『力が強い』、『精神が強い』、『心が強い』……いっぱい言うでしょ? 強さって意味は一つじゃない。強さと弱さは表裏一体……だからこそ自分の強さも弱さも見つけたときに、人は本当の意味で強くなれる」
「強さも弱さも……?」
顔を上げた九坂が瑞貴を見ると、彼女は優しく微笑んだあと時計に目をやる。
「ハーフタイムがもうすぐ終わる。行くよ、九坂くん」
「はい……」
瑞貴が促すと立ち上がった九坂。最初に彼がロッカールームから出て行ったあと、瑞貴は室内にあるホワイトボードを見る。そこには『絶対! 勝つぞ! イナズマジャパン!!』と決意表明を込めて書かれていた。
そして二人は共にフィールドへ続く廊下へと出て歩いて行くが、九坂の表情は晴れない。それを見た瑞貴はもう一つだけ告げる。
「九坂くんってヘディングが上手そうだよね」
「えっ?」
「体格がいいし力もあるから、ヘディングシュートもできるんじゃないかって私は思うよ」
初戦前の全体練習から、昨日までの練習を見て瑞貴はイナズマジャパンの得手不得手を見て、サッカーで活かせるのではいくつものパターンを考えていた。そしてそれで九坂にできそうだと見つけたのが……――ヘディングなのだ。
☆☆☆☆☆
瑞貴と九坂も戻り、ハーフタイムが終了した。両チームはポジションに着く。
《さあ1点を追いかける展開になったイナズマジャパン! 後半の戦いに期待です!!》
「奴ら、とんでもない爆弾を抱え込んだもんだな」
「ああ。いるんだよな、ああいう奴」
カシム=バドルとサイードは九坂を見て笑みを浮かべている。ハーフタイムでチームメイトと何か打ち合わせたようだ。
「がんばれー!」
「一気に逆転だー!」
「…………」
兄たちイナズマジャパンを応援する瞬木瞬と瞬木雄太に対し、九坂の幼馴染の里子はただ黙ってフィールドを見ているだけだった。
ホイッスルが鳴りシャムシールボールで試合開始。カシムからボールを受け取ったサイードはラシード=ハキムにパスを出す。
「ラシード!」
「うおおおっ!」
「フッ」
ドリブルするラシードに九坂は勢いよく前に出るが、華麗な動きでかわされてしまった。そこへ神童がすかさずカバーに入る。
「アインザッツ!」
「何っ!?」
《神童、素早い動きでボールを奪ったー!》
「野咲!」
パスを受け取ったさくらはドリブルすると、前方からシャーキル=ザハルが駆け込んで来るのが見えて、逆サイドにパスを回す。
そこへ走っていた九坂は自分へのパスだと思っていたが……それを間に入って取ったのは天馬だった。
「剣城!」
「へっ!」
「なっ!?」
剣城が受け取る前にバタル=マジドがパスカットし、すぐさま前線へと送った。天馬は上がっていたメンバーに声をかけながら走る。
「みんなー! 下がれー!」
「っ……」
ただそこへ立ち止まっている九坂は、さっきのパスに違和感を覚えていた。
それからも九坂には一切ボールが回らない。たとえ遠くても九坂を越えた先にいる味方へボールを回す光景を見て、ハーフタイムの間に何が起こったのか瑞貴は察する。
「九坂くんをプレーから外す作戦?」
「は、はい……。ラフプレーを起こさないようにって……」
瑞貴はただ質問をしただけなのに、責められるかと思った葵は少々ビクつきながら答えた。特に気にすることはなく、瑞貴は再びフィールドにいる天馬たちを見る。
(現実としての判断は間違いでもないけど、そこに九坂くんの意思はない……)
次に瑞貴が九坂を見れば、九坂も同様に察しているのがわかった。
(そうか……俺を暴れさせないためにわざと……。すまない…キャプテン……――けど! 俺だって!)
これは最優先すべきプレーであると同時に、自分への思いやりでもあると察した九坂。だが頭では納得しても心がそうはいかないのか拳をギュッと握った。
「うおりゃあっ!」
「決まれー!」
瞬木隼人が渾身のシュートを撃つと、九坂は祈るように叫んだ。しかしシャムシールのGK・スルタン=カラムは片手で止めた。
《キーパー・スルタン、なんなくキャッチ!》
「フンッ」
「「「「「!」」」」」
「キャプテン!」
イナズマジャパンたちが驚く中、スルタンはサイードに向かってボールを投げると受け取ったサイードはニヤリと笑った。
「実力の差を思い知らせてやる……いくぞ! 必殺タクティクス、大砂漠砂嵐だ!」
「「「「オウッ!」」」」」
シャムシールの言葉を合図に、カシムとラシードとタミル=ナスルとハリール=ウトバが共に動き出す。