「遅いぞ」

「すみません……」

「どうした？」

「監督。俺、剣城を連れて来ることができませんでした……。あいつとサッカーやりたかったのに……」


天馬はマネージャーたちに剣城が向かった方向を教えてもらい、すぐさま向かうと病院に入る姿を見かけた。そこで剣城の兄・剣城優一が入院していることを知る。練習のことを訊いたり雰囲気で剣城がシードだということを優一に内緒にしているとわかった。

剣城は天馬に気づくと場所を移し、自分のあとを付けていたこと知る。天馬は謝罪すると帝国学園との戦いに参加してほしいと申し出たが、当然ながら剣城は断った。そして『世の中にはどうにもならないことがあるんだ！』と強い口調で言われた。


「しょげてる暇があったら練習だ。みんな気合い入ってるぞ！」

「…………？」


円堂がピッチに顔を向けると、天馬も同じ方向を見る。そこに映っていたのは――。


「速水！」

「霧野くん！」

「天城さん！」

「神童！」

「アルティメットサンダー！」


神童がキッカーとしてトライしているが、またしても昨日と同じように弾き飛ばされてしまった。


「ぐうっ！」

「キャプテン――……あっ」


すぐさま天馬は駆け寄ろうとしたが、神童がゆっくりながらも立ち上がる姿を見て足を止める。


「よし！　もう一度！」

｢｢｢｢｢オウッ!!｣｣｣｣｣


確かに神童も剣城に期待したが彼は立場上ムリだろう。それがわかっているからこそ自分がやろうと練習し、他の四人も協力する。


「キャプテン……」

「できないことをできるようにするのが練習だ。見ろ、信助もがんばってる」

「ぶっとびジャンプ！」


反対のエリアで信助と三国が練習をしている。すっかり必殺技をモノにすることができたが、まだパワーやスピードを上げるなど課題は山積みだ。現に三国に止められてしまった。


「なかなかいいシュートだ！　だが、相手は帝国学園だ。もっと精度を上げる必要がある」

「はい！」

「信助。空中では身動きが取れないから、迷いが生じればプレーに影響が出る。まずは確実にゴールを決めることを考えて」

「はい！」

「信助……！」


三国と瑞貴のアドバイスで信助は俄然やる気になった。その熱意とやる気が伝わって天馬も自然と笑顔になる。


「天馬、お前も行くんだ」

「はい！　俺もそよ風ステップ、がんばります！」

「いや、シュートの練習をしろ」

「えっ？　俺がシュートですか？」

「お前の熱さならなんだってできる！」

「なんだって……」


確かに天馬のポジションはＭＦ。シュートを撃つことだってある。現に神童も何度も点に貢献していた。


「オフェンス、ディフェンスに縛られず、お前にはいろいろなことをやらせてみたいんだ」

「ポジションに縛られない……」

「それに、アルティメットサンダーはストライカーが後方に下がってしまうのが弱点だ。前方に決定力がのる奴が一人でも多くいたほうがいい」

「わかりました！　やってみます！」

「シュートを決めて、帝国学園のド肝を抜いてやれ！」

「はい！」


天馬の新たなチャレンジが始まった。今までシュート技はやったことがないため、どんな必殺技にするかワクワクしている。


「信助ー！」

「あっ」

「一緒に練習しよー！」

「オウッ！」


信助も三国も、自分たちの練習中なのに快く天馬を受け入れた。しかしそう簡単にはいかない。