イナズマジャパン脱退試験!
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「無人のゴールにPKで、外せば合格……」
誰もいないゴールの上にさらに外すという意味不明な試験。天馬は思い返してみても黒岩の意図が読めなかった。
「やっぱり辞めたい人は好きにしていいってことじゃない?」
「あまりにも非論理的試験です」
「面白い……あの監督、ホントに驚かせてくれるよ。もっとも、いつだって僕の予測の範囲内だけど」
さくらや真名部や皆帆を始め、各自の反応は様々だ。恐る恐るというように森村好葉が声を出す。
「あの~……。監督とコーチは、ウチたちに愛想をつかしてしまって……それで……」
「遠回しに『出て行け』って言ってるのね。そういうことでしょ? 瑞貴さんだって反対しなかったもんね」
「はい……」
「――ふざけるな!」
「ヒイッ!」
さくらが付け加えて好葉が頷いた途端、井吹が声を荒げて椅子から立ち上がった。それに好葉がびっくりすると井吹は肩で息を何度かすると続けて顔をしかめる。
「勝手に集めといて、勝手にお払い箱か? 俺は納得いかない!」
「待ってくれ! 監督には何か考えがあるんだ! だから――」
「いや」
「!」
井吹を落ち着かせようと天馬が止めようとした途端、それを制するように静かに且つ響くような声を出したのは神童だ。みんなから離れた椅子に座っている彼は両腕を組んで目を閉じている。
「これはチームにとって、むしろいい機会だ。君たちがここに来た目的はサッカーではない。そんなメンバーはイナズマジャパンにはいらない。遠慮なく試験を受け、ここを去ってくれ」
「クッ!」
淡々と冷徹に言った神童に、特に神童を敵視している井吹は歯を食いしばるが否定の声を上げない。井吹を含め雷門メンバー以外の者は全員それぞれの入団契約の元にここに集まっているのだから。
「……神童さん」
「…………」
「がんばって練習して、しっかりサッカーと向き合ってくれれば、きっとみんなにもサッカーの良さがわかるはずです!」
「――俺は試験を受けるぜ」
声をかけられて目を開いた神童に天馬が真っ直ぐな瞳でそう言う中、最初に試験を受けると告げたのは――鉄角真だ。
「鉄角……!」
「お払い箱で結構だ。おかげで今すぐ船が買える……夢みたいな話だ。あんたの言う通り、俺はサッカー……いや、スポーツなんかに興味はない。俺がいないほうがあんたも嬉しいだろ」
「…………」
自分の前にやって来て仁王立ちしてそう告げ立た鉄角。神童は肯定も否定もしなかったが、代わりに視線を逸らすだけだった。
「嵐で船を失った父親に漁船を買ってやるって聞いたけど、それを実現させることで、自分を慰めてるってこと?」
「っ……!」
人間観察が趣味の皆帆は鉄角の過去の出来事と入団契約の理由でそう判断したのだろう。ボクシングができなくなった今、反論の声を上げない鉄角の心情は皆帆の言う通り当たっているのだ。
だけど日本代表に選ばれたのにもったいないと、天馬はなんとか説得する。
「鉄角、せっかく代表に選ばれたんだ! 一緒に世界一を目指そうよ! 韓国戦だって勝てたじゃないか!」
「俺にはお前たちと一緒にボール遊びしてる暇なんかない! 俺の代わりはいくらでもいるんだろ? そいつらと世界でもなんでも目指せばいい!」
「でも……」
「――試験、僕も受けることにします。契約が履行されるならここに留まる理由はありませんから」
「真名部!?」
「確かにそういうことになるね。というわけでキャプテン、僕も試験受けるよ」
「俺も。っあ~……サッカーとか世界とか、悪いけどそういうガラじゃないんで」
「私も受けます。キャプテンのおかげでサッカーの面白さがわかりかけてきたんだけど……でも、ホントにごめんなさい。やっぱり私、新体操で羽ばたきたいの!」
「君まで……」
鉄角だけじゃなく真名部も皆帆も九坂も脱退試験を受けると告げた。しかも一緒に練習してきたさくらまでもだ。それは即ち『辞める』と告げているのと同じである。しかし……。
「俺は残る」
「っ、井吹!」
「サッカーはどうでもいいが、ナメた真似されたままじゃ、気持ちが治まらない」
残ると言ってくれた者がいたので天馬が嬉しそうに声を上げるが、井吹が向ける敵意を込めた視線の先には神童がいた。このまま引き下がるのは彼にとって癪なだけだろう。