立ち込める暗雲! 世界大会開幕‼︎

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「好きにしろ」


黒岩はそう告げると歩き出したので、みのりもベンチから立ち上がってついて行った。残ったのは天馬と神童と剣城と瑞貴だけだ。


「神童さん、三人でなんて――」

「監督はサッカーを冒涜している! 瑞貴さん、あなたも考えていることがおかしい!」

「…………」


神童がキッと付くくらい睨みつけるも、瑞貴は真顔のままで何も言わない。そんな瑞貴の変わらない態度に神童が拳を握り締めていると――。


「――ふざけるな!」

「「「!」」」


荒々しい声に神童と剣城と天馬は振り向くと、ボールを両手に持つ井吹が神童を睨みつけるように顔をしかめていた。


「お前が防ぐだと? ジャパンのキーパーは俺だ!」

「井吹……」

「思い上がるな。お前はズブの素人だ」

「だから練習に来た! コーチがここにいるって聞いて特訓相手になってもらおうとしたがちょうどいい。剣城、相手してくれ!」

「!」

「井吹!」


練習が終わっても自主練を進めてやろうとしている井吹に、剣城は目を見開き天馬は嬉しそうに顔を綻ばした。


「わかった」

「いや、俺が撃つ。俺のシュートを止められなければ、剣城のシュートは尚更ムリだ」

「いいだろう。必殺シュートとやらでやってもらおう」


神童もユニフォームに着替え、先ほどまで瑞貴がリフティングに使っていたボールを用意して、井吹のいるゴールへ向かって構える。


「フォルテシモ!」

「クッ!」


神童の撃った必殺シュートに井吹は跳ね返され、ゴールポストに背をぶつけて倒れた。


「望み通りのモノを撃ったぞ」

「クッ……いいねぇ、もっと来いよ!」


望むところだと井吹は再びシュートを要求する。剣城と瑞貴はベンチからその様子を見ていた。



――その一方で、天馬はスタジアムを出ると人のいない通路で陸上の走りをしている瞬木を見つける。彼もまた天馬に気づいて顔を向けた。

天馬も通路から降りて手摺に両腕を置いて景色を見ながら、隣に立つ瞬木に練習について感想を問いかける。


「どうだった? 今日の練習」

「陸上で鍛えたモノが、使えるような使えないような……ただ、このチームでの俺の役割がわかってきた」

「役割って?」

「俺の走りで相手を突破すること」

「そっか、そうだね!」

「陸上は、見なきゃいけないのはゴールだけ。でもサッカーは違う。見なきゃいけないモノがいっぱいある。そこがまだ慣れないな……」

「俺もさ、初めはドリブルしかできなかったんだ。そのとき見てたのは足元のボールだけ。雷門に入って、神童さんや剣城に出会って、いろんなモノが見えてきた! そしたら、もっとサッカーが好きになった!」

「…………」


そのとき瞬木がどこか呆れた表情をしたのだが、天馬は気づいていないのか熱くなっているのかそのまま言葉を続ける。


「好きになったら、今度はサッカーが応えてくれるよ! うまくなるコツは好きになることさ!」

「……そうか」

「ああ! 明日からも一緒にがんばろう!」

「う、うん」



☆☆☆☆☆


翌日。練習は昨日と違って屋外のヨットハーバーグラウンドで行われることになった。ラインに沿って横一列に並ぶ選手たちに、瑞貴はタブレットを持ちながら初戦の相手のことを説明する。


「アジア予選の第一戦は、韓国のファイアードラゴンが相手だよ。情報によればチームの要はFWのリ=チュンユン。とてつもない俊足の持ち主で、ボールが渡ったら最後一気にゴールまで運ばれてしまう」

(俊足か……)


瞬木は陸上で『超速』と呼ばれる俊足の持ち主だ。相手はサッカー選手とはいえ微かなライバル意識を持ち始める。


「いかにチュンユンにボールを渡さないようにするか……。ディフェンス、オフェンスにそれぞれ練習メニューを与えるよ。いいね?」

「「「「「はい!」」」」」


まずはウォーミングアップも兼ねてペアになって練習をする。相手にボールを渡さず突破できるかどうかだ。やはり昨日のようにままならないが、少しずつ変わっていくのもある。

瞬木が天馬をボールだけとはいえ抜いたのだ。もし天馬のうしろに瞬木の味方選手がいればパスを出しているのと同じだろう。


「やった! キャプテンをかわした!」

「いいね、今の感じだよ! 上達してるよ瞬木!」

「――いくぜ!」

「「!」」


鉄角の意気込む声に天馬と瞬木が振り向くと、鉄角がペアの相手である真名部を抜こうとしていた。
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