《クロノストーム、一気に上がっていくぞ――っ!!》

「…………!?」


自分たちのようにアンプルも使っていないし、化身アームドもしていない。しかしさっきまでの動きとは全然違うクロノストームにSARUは驚きを隠せず瞳を揺らす。

しかしそこで終わらず、ボールが再び戻った天馬はボールにエネルギーを込める。


「いくぞ！　トーブ！」

「うおおおっ！」

「いくやんね！」

「錦先輩！」

「信助！」

「いっけー！」

「繋げ！」

「霧野さん！」

「ザナーク！」

「うおりゃあ！」

「天馬！」


天馬を始めとし、トーブ、黄名子、剣城、錦、信助、神童、雨宮、霧野、ザナーク、フェイはパワーを集めるかのように順にボールを繋いで、それがイナズママークを模すと再び天馬の元へボールを戻す。これが円堂から教えてもらった必殺タクティクス――。


｢｢｢｢｢必殺タクティクス、グランドラスター！｣｣｣｣｣

「魔神ペガサスアーク！　アームド！」


十一人のエネルギーがこもったボールを受け取った天馬は、ミキシトランスを解除して化身アームドをする。


「ゴッドウィンド！」

「リバースワールド！」


雷光と共に放たれた絶大な竜巻は、ホスの必殺技も打ち破った。


《ゴォ――ルッ!!　必殺タクティクスからシュートへの連携が見事に決まった――っ!!　クロノストーム、２点目は松風だ――っ!!》

｢｢｢｢｢やったー！｣｣｣｣｣


クロノストームだけでなく、客席の仲間たち、ベンチにいるマネージャー組とワンダバと円堂と瑞貴たち。全員が声を上げて喜んだ。


（円堂監督……！）


天馬は仲間とひとしきり喜び合ったあと円堂に顔を向けた。もし最初の場面で必殺タクティクスを使っていたら点を取るどころか阻止されていたかもしれない。円堂の判断は間違っていなかったのだと気づいた。


「あのとき使わなかったのが正解とはいえ、ちょっとヒヤヒヤしたよ」

「信じていたからな」

「えっ？」

「瑞貴とじいちゃん…鬼道と豪炎寺…そして培って時間が天馬たちを成長させ、そして必ず成功してくれるってな」

「守……！」


そう言って二カッと笑った円堂。封印されて離れ離れになったが、その間にも天馬たちは以前よりも強くなっていると円堂はずっと信じていた。そして期待以上のモノを見せてもらったのだ。

ザ・ラグーンのボールで試合再開。イムスからボールを受け取ったSARUはドリブルするが……。


「お前たちごときが、この僕らに敵うはずがない！」


その顔には今までと違い焦りの表情が見えていた。点差はまだ２点もあるし、体力だってまだあるので追加点を取ることも可能。しかし言い表せない不安がSARUの余裕をなくしていた。

するとその不安が如実に表れるように、クロノストームはザ・ラグーンと互角に渡り合っている。


「うおおおっ！　――っ!?」


ザナークからボールを奪ったSARUが駆け上がろうとするが、前からあっという間にボールをフェイが奪った。


「フェイ!?」

「ふんっ！　王者の牙改！」

「うおおおっ!?」


フリーのフェイはそのままシュート体勢に入り、進化した必殺技でホスに必殺技を使わせる隙も与えずゴールを奪った。


《ゴォ――ルッ!!　クロノストーム、１点差まで追いつめた――っ!!》

「この僕たちが……３点も……!?」


勢いづいたクロノストームの怒涛な攻撃が点差を縮めるという、続く予想外な現実にSARUは信じられなかった。

試合が再開されクロノストームによりボールが弾かれたので、SARUは焦りながらもそれを追う。


「僕らは、セカンドステージ・チルドレンなんだ！」

「ミキシトランス・アーサー！　神童先輩！」

「いけ！　天馬！」

「何っ!?」


ミキシマックスした天馬が神童とのワンツーパスでSARUをかわした。


「負けないやんね！」

「みんないけるぞ！」


黄名子や霧野たちも笑顔を浮かべるほど良いプレーをし始め、クロノストームのペースになっていた。次いでドリブルするザナークが爆走し始める。